2025年、世界はどこへ向かうのか? ユーラシア・グループが毎年発表する「ことしの10大リスク」は、深刻化する地政学的課題やリーダーシップ不在の「Gゼロ世界」を強調しています。本記事では、特に注目すべきリスクや過去との関連性を紐解き、これからの世界情勢を考察します。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2025年1月13日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
「ことしの10大リスク」
毎年この時期に発表される「ことしの10大リスク」。発表しているのはユーラシア・グループです。
ホームページの「概要」をそのままご紹介しますと「ユーラシア・グループは、地政学リスクを専門に扱うコンサルティングファームの先駆けとして1998年に設立されました」とあります。提供するのは「各国の政治情勢がビジネスに与える影響について、客観的で定量化された分析」とあります。
まずは「ことしの10大リスク」を羅列してみます。日本語で表記します。
1位:深まるGゼロ世界の混迷
2位:トランプの支配
3位:米中決裂
4位:トランプノミクス
5位:ならず者国家のままのロシア
6位:追い詰められたイラン
7位:世界経済への負の押し付け
8位:制御不能なAI
9位:統治なき領域の拡大
10位:米国とメキシコの対立
同じような文言を、かつて見ています。やはり米国でトランプ大統領が登場した2017年の10大リスクの中に、以下がありました。
1位:わが道を行くアメリカ
2位:中国の過剰反応
今年と同じで、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」思想と「米国を再び偉大にしよう」というその誓約は、米国の最も核心的な価値である「独立」に立脚していると解説していました。
当時はトランプ次期米大統領のもと、米国が世界の諸問題の解決などでリーダーシップをとらなくなる可能性を指摘していました。
さらに2017年のときには、「制度的枠組の広範な弱体化…」「中国の台頭と米国との 直接紛争の可能性の高まり…」と指摘していました。
今年は3位に「米中決裂」がランクインしています。
米中関係を、今年ユーラシア・グループは「世界で最も重要な地政学的な関係において管理されないデカップリングが生じ、経済の混乱と危機のリスクが高まることになる。」と指摘しています。
前回のトランプ政権発足の翌年2018年の「10大リスク」には今年同様「メキシコ」もラインナップされていました。
あの頃から、トランプ氏とメキシコはある意味“セット”なのでしょうね。
第1位「深まるGゼロ世界の混迷」とは?
それぞれの解説はホームページに載っていますが「1位:深まるGゼロ世界の混迷」には、少し触れておきます。
世界的な課題への対応を主導し国際秩序を維持する国家は存在しない状態で、地政学的な不安定が常態化するとあります。
要は、自国中心の考えにより世界を牽引する(意思のある)国がなくなるということで、国際秩序が乱れるということなのでしょうか。「新たな世界大戦すら起きるリスクは、かつてないほど高まっている…」と指摘しています。
ユーラシア・グループは10年以上、Gゼロの世界の危険性について警告してきました。
Next: 「Gゼロ」の世界で何が起きる?私たちの生活への影響は…
Gゼロとは、グローバルな課題への対応を主導し、国際秩序を維持する意思・能力を持つ国家や国家の集まりが存在しない状態と説明しています。
AIに「Gゼロとはなにか」を聞いてみました。「国際政治における権力の空白」という答えが帰ってきました。
空白…。欧米の影響力の低下や発展途上国政府の国内重視によって生じたとあります。
米国では自国ファーストの政権が生まれ、欧州では「右傾化」が進んで極右政権が誕生しつつあります。
自国の利益優先。自国民の経済状況改善が優先課題。そのためには、他者を排除することはいとわないよいうことでしょうか。
(仕事を奪う)移民の排斥のような、社会が寛容さを失い、それこそ、欧州各国で極右政権が誕生したらEU離脱ドミノによるEU崩壊が現実味を帯びてくるのではないでしょうか。
全世界が自分たちのことで精一杯に…
ユーラシア・グループは世界的なリーダーシップの欠如は危機的なレベルまで深刻化していると指摘しています。
このため2025年には地政学的不安定が常態化し、世界的な安全保障体制と経済体制が弱体化し、力の空白が新たに生まれて拡大し、ならず者国家が勢いづき、事故・誤算・紛争の可能性が高まるだろう…としています。
世代を超えるような世界的危機、さらには新たな世界大戦が発生するリスクは、私たちが生きてきた中で見たことがないほど高まっている…と恐ろしいことを言っています。
世界秩序が直面する中心的な問題は、国連安全保障理事会、国際通貨基金(IMF)、世界銀行といった主要な国際機関が、もはや世界のパワーバランスを反映していないことにあると指摘しています。
・地政学的な後退
・国際関係における「下降サイクル」
“ならず者国家”であるロシアの存在が世界大戦を引き起こすともしています。
世界大戦は起こるのか?
ロシアは国際舞台で混乱を生もうとする他の主体、とりわけ北朝鮮やイランと軍事的・戦略的パートナーシップを積極的に構築しています。
これは世界安全を守るうえでは由々しき事態です。
また、中国を西側の枠組みに取り込もうとしたのですが、具体的には2000年代初頭に世界貿易機関(WTO)加盟国として国際秩序に組み入れられたのですが、欧米との貿易により中国は目覚ましい経済成長を遂げたが、民主化や法の支配を支持するようにはならなかった…と指摘しています。
その結果、中国と欧米の間の緊張は深まり、対立を深化させたとしています。
Next: 世界はどうなる?「人々の多くは政府や民主主義に不信感を抱く」
今回の米大統領選挙からも見えるように、先進工業民主主義国の市民たちは、指導者やエリートが推進してきたグローバリズムの価値観が、自分たちの利益にはならないと結論づけているということです。
格差の拡大は、行き過ぎた資本主義が生み出しているという風潮があるようです。
ユーラシア・グループは、人々の多くは政府や民主主義そのものに対して根本的な不信感を抱くようになり、各国が国際社会を主導する能力と意欲が低下していると指摘しています。
世界的秩序を牽引するリーダーがいない…。
今年の「リスクNo.1」は、リーダーシップの空白というGゼロの状態により、世界秩序が崩壊しつつあるとしています。2025年は、なんか恐ろしいことが起こりそうですね。
ユーラシア・グループは「Gゼロ世界」に関してこう締めくくっています。「私たちは、1930年代や冷戦初期に匹敵する、世界史上でも独特の危険な時代に突入しつつある。この地政学的現実こそが、今年の10大リスクの背後にある要因だ。そして、真に壊滅的な事態が発生するリスクは日々増大している」。
<初月無料購読ですぐ読める! 1月配信済みバックナンバー>
※2025年1月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
- らぽ~るマガジン第666「ユーラシア・グループ 2025年10大リスク発表!!」(1/13)
- らぽ~るマガジン第6645「2025年、あけましておめでとうございます…。」(1/6)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2025年1月13日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>
※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込330円)。
- らぽ~るマガジン第664号「2024年、ありがとうございます…。」(12/30)
- らぽ~るマガジン第663号「救急車が有料化される…。」(12/23)
- らぽ~るマガジン第662号「GIGAスクール構想に欠かせないタブレットを保護者が負担するって?」(12/16)
- らぽ~るマガジン第661号「世界初、オーストラリアで16歳未満のSNS利用を禁止する法案が可決」(12/9)
- らぽ~るマガジン第660号「インバウンド需要と英語力 現在の日本人の英語力は世界92位」(12/2)
『
らぽーる・マガジン
らぽーる・マガジン
』(2025年1月13日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中
らぽーる・マガジン
[月額330円(税込) 毎週月曜日]
絶対に知るべき重要な情報なのに、テレビなどが取り上げないことで広く知らされていないニュースを掘り起こし、また、報道されてはいるけどその本質がきちんと伝わっていない情報も検証していきます。情報誌は二部構成、一部はマーケット情報、マーケットの裏側で何が動いているのかを検証。二部では、政治や時事問題、いま足元で何が起こっているのかを掘り下げていきます。“脱”情報弱者を求める人、今よりさらに情報リテラシーを高めたい人はぜひお読みください。CFP®資格の投資ジャーナリストが、毎週月曜日にお届けします。