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【QAあり】アドソル日進、売上高、利益、利益率のいずれも過去最高を更新 持続的な成長に向けた戦略投資を継続

登壇者紹介

篠﨑俊明氏(以下、篠﨑):代表取締役社長兼COOの篠﨑です。アドソル日進はIT企業で、ITシステムを開発しています。私は1989年にエンジニアとして入社し、そこから35年が経ちました。社長に就任したのは2021年のことです。

私が入社した当時から、アドソル日進はみなさまの生活、環境、安全を守るために、ITで社会インフラに貢献してきました。当時と変わらず現在でも、みなさまの暮らしを安全に、そして楽しく支える会社でありたいと考えており、これから10年、20年、30年とこの思いを大切に取組んでいきます。

現在のIT業界というのは、単にITシステムを作るだけでなく、デザインやアピールの仕方など、さまざまな取組みが必要です。当社も、エンジニアがより幅広く活躍できる組織にしていきたいと考えています。

幅広さ、というところから、ここで個人的な話をしますが、社会人としての日常以外に、私にはいろいろな趣味があります。その1つが、子どもの時から生活の一部になっている野球です。学生時代は毎日が勉強と野球の繰り返しでした。働き始めてからもクラブチームで野球を続けていましたし、その傍ら、小学生と中学生にも教えていました。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):ちなみにポジションはどこでしたか?

篠﨑:キャッチャーです。

坂本:全体を見渡せるポジションですね。

篠﨑:そうですね。それだけにキャッチャーは難しいポジションだと思います。

平日は会社で仕事をして、土日は朝から晩まで野球を教えていました。特に中学生になると「甲子園に行きたい」と本気で取組んでいる子どももいます。監督、コーチとしては、やはり子どもたちが大きな夢を持ち、伸び伸びと野球を楽しんでほしいと考えていました。

野球から離れた現在は野菜作りに励んでいます。種から育てるため、失敗することもありますが、次の新しい種を植えるとまた芽が出てきます。その気候や土地を踏まえ、どうしたらよいのかを考える必要があります。

キャッチャーで培った視野、野菜作りで学んだチャレンジ精神、これらが仕事に生きていることも多々あります。「チャレンジしてみよう」「新しいことに取組んでいこう」という感覚が自然と身に付いたように感じます。一つひとつのすべてのことが、いろいろなものに紐づいていると考えると、思い切って新しいことにチャレンジできます。

スマホも、自動車も、すべてが「電力」で動く時代⋯

篠﨑:当社についてご紹介します。アドソル日進は、社会インフラに貢献する会社です。そもそも社会インフラとは何かというと、みなさまの生活を支える基盤となる設備・サービスです。例えば、電力ですね。みなさまが日常的に使っているスマートフォンなどはすべて、電力がないと動きません。また、近年はEV(電気自動車)も出てきていますが、自動車も電力がないと動かない時代になってきているといえますね。

私たちは社会インフラの中でも特に電力をビジネスの中心に置いています。電化・デジタル化された未来、そしてみなさまの安全を、ITでしっかり支えていこうというところから出発し、50年が経ちました。

会社概要

篠﨑:当社は1976年に創業し、来年には創業50周年を迎えます。私たちは東証プライムに上場している独立系のIT企業ですが、独立系とは、どのグループにも属さず、親会社を持たない企業体のことです。全国のIT企業にはメーカーをはじめとする大手企業の子会社やグループ会社も多くあります。

私たちは創業以来、親会社を持たず、自分たちだけで活動してきました。どの企業グループにも属していないため、幅広いお客さまとビジネスができる体制となっています。

坂本:社名の由来について教えてください。「アドソル」と「日進」に由来する2社の合併による社名だと思っている方もいると思います。

篠﨑:アドソル日進と聞いて「どこかと一緒になったのですか?」「吸収されたのですか?」と言われることはあります。実はアドソルは造語で、Advanced Solution(アドバンスドソリューション)を略したものです。創業時の社名は日進ソフトウエアでした。

社名変更については、ジャスダックへの上場を前に、ソフトウェアから、新しいソリューション、新しいサービスをイメージさせる社名にしたいと考えました。そこでAdvanced Solutionを検討したのですが、これだと長いため、結局はそれぞれの単語からアドソル(Ad-Sol)にしました。また、お客さまからは親しみを込めて「日進さん」と呼ばれていたこともあり、日進の2文字は残すこととし、最終的にアドソル日進という社名になりました。

グローバル・ネットワークで高品質なITシステムを提供

篠﨑:私たちの活動拠点についてお話しします。本社は、品川の港南エリアにあります。また、大阪、福岡、名古屋、仙台に支店・オフィスがあり、国内5拠点で活動しています。

2023年には名古屋に拠点を設け、昨年秋には九州支社を新築ビルに移転してリニューアルしました。新しい九州支社はオープンオフィスを採用し、これまでのアドソル日進とは雰囲気の異なるオフィスとなっています。社員のエンゲージメント向上や多様な働き方の推進なども含めて、オフィス戦略を進めているところです。

それ以外では、アメリカのシリコンバレー(サンノゼ)に、100パーセント子会社のSan Jose R&D Center(サンノゼアールアンドディーセンター)があります。こちらではアメリカ国内のいろいろな最新技術や動向をリサーチし、日本でのビジネスに活用しています。

また、力を入れているのがベトナムのホーチミン、ダナン、ハノイの3拠点です。特にダナンには当社のグループ会社Techzen(テックゼン)が中核となるダナン開発センターがあります。日本企業向けのシステム開発に加えて、ベトナム国内でもサービスを展開しており、日本とベトナムのハイブリッドでビジネスを展開しています。

売上高・営業利益の推移

篠﨑:スライドのグラフで、2010年以降の業績を紹介しています。安定的な成長がお分かりいただけるかと思います。コロナ禍では一時、非常に厳しい状況となりましたが、その後は再度成長フェーズに移っています。

2024年3月期は売上高、営業利益、営業利益率ともに過去最高を更新しました。今期も残すところわずかですが、2025年3月期も過去最高業績を更新する見込みです。

坂本:コロナ禍を除いて右肩上がりに成長してきたとのことですが、創業時はどのようなビジネスを展開していたのですか?

篠﨑:創業時は、東京と大阪で同時に拠点を立ち上げました。祖業は、現在私たちが注力している電力系のビジネスです。

坂本:電力系のビジネスは一貫して行っているのですか?

篠﨑:おっしゃるとおりです。創業時は、電力の系統制御システムからスタートしました。発電所で作った電気を各家庭まで送電する設備の監視やコントロールを行うITシステムを作っていました。現在でもそれがビジネスの中心となっています。

IT企業 アドソル日進の対応領域

篠﨑: 今、ITは分野が非常に幅広くなっています。創業時にITという言葉があったかどうかわかりませんが、かつてはソフトウェアを作っている会社がIT企業と言われていました。現在はインターネットが普及し、ゲームの制作会社やネットショッピングの会社なども含めてIT企業と言われています。

こうした中、当社はスマートフォンのゲームやアプリを作っているわけでも、経理・人事などの社内システムを手掛けているわけでもありません。当社は企業のビジネスを支えるシステム開発を担っています。また、ビジネス系のシステムと言うと、IT業界の7割から8割の企業は金融・保険系のシステムを開発していると言われますが、当社が注力するのは社会インフラの領域です。

いろいろな方とお話しすると、当社のように社会インフラに特化している会社は少ないことに気づかされます。この点において、私たちは創業以来ユニークで、尖った特徴を持ったビジネスを展開している会社だと感じます。

坂本:例えば金融の場合、債券が絡むと業界の知識がないと難しいのではないかと思います。一方の社会インフラに関しては、専門的な知識は求められますか?

篠﨑:社会インフラも、現在は分野が幅広くなっているため、いろいろな業務知識が必要になります。特にシステムの品質に関わるところは非常に重要だと言えます。

例えば、電力、鉄道、航空を支える品質は別々です。電力の品質、鉄道の品質、航空の品質がそれぞれ求められますし、それが業務ノウハウにもなりますので、品質に対しては力を入れています。

幅広い領域における事業展開

篠﨑:こちらのスライドでは、今お話ししたことを絵で紹介しています。日々の生活で、これらが1つでも欠けると不安になるくらい、重要なものばかりです。エネルギーだけではないですが、私たちは生活に関係するところに特化して取組んでいます。

エネルギー(電力・ガス)を中心に安定成長

篠﨑:私たちのビジネスは社会インフラ事業と先進インダストリー事業の2つから成り立っています。

売上高の構成は、社会インフラ事業が6割、先進インダストリー事業が4割です。社会インフラ事業ではエネルギー、交通運輸、公共、通信ネットワークなどを手掛けていますが、エネルギーが売上高の50パーセント近くを占めています。

坂本:システムを開発している会社について、個人投資家が注目することでもありますが、1次請けの割合はどれくらいですか?

篠﨑:全体では約半分ですが、エネルギー関係では7割近くあります。

坂本:専門性がかなり評価されているということだと思います。

篠﨑:以前は、規模の大きな社会インフラのシステム開発は、大手のメーカーやベンダーに発注されることが多く、私たちはそのアンダーで仕事をしていました。50年近く続けているといろいろな知識が蓄積しますし、私たちの独自技術を必要としてくださるお客さまも増え、直接ご依頼いただけるようになっている状況です。

中期事業戦略 フレームワーク(ビジネス領域の進化・拡大、DXソリューションの拡充・強化)

篠﨑:こちらのスライドでは、エネルギーに関する将来的なフレームワークの内容を示しています。大きくは3つです。

2つの成長事業である次世代エネルギーとスマートインフラ/ライフ、そしてベースロードにエンタープライズDX/モダナイゼーションを掲げ、この3つで成長していこうと考えています。将来的にはスマートシティに向かっていくというのが大枠の事業戦略です。

アドソルの対応領域(電力)

篠﨑:次世代エネルギーについてお話しする前に、電力ビジネスについて少しおさらいをします。電力には「つくる」「おくる」「つかう」の3つがあります。「つくる」は発電所、「おくる」は送電網、「つかう」は家庭や会社で電源を入れると電気がつくということです。

当社は「つくる」「おくる」「つかう」の中でいろいろなシステムを作っています。創業時は「おくる」だけでしたが、現在では「つくる」「つかう」も含めた一連の流れの中でビジネスを展開しています。

電力の安定供給を支えるアドソルの監視・制御技術

篠﨑:余談ですが、電力は、非常にデリケートなものです。例えば、ここ最近、北陸や東北では大雪が続いていますが、寒くなると電力消費が増え、電力が逼迫します。

実は、発電量と消費量は常に一定になっている必要があります。発電量よりも消費量のほうが多かったり、反対に消費量が少ないのに電力量を増やしてしまったりすると、バランスが崩れ、その結果として停電やブラックアウトにつながります。

坂本:それは一番良くないことです。

篠﨑:おっしゃるとおりです。以前は、停電やブラックアウトが起きやすい状況にありましたが、現在は電力の安定供給ができるようになりました。その状態に貢献しているのがITによるコントロールです。

特に今注目されているAIやデータセンターなどの需要家は、非常に多くの電力を消費しますので、ITによる効率化、コントロールがより重要視されています。そうした現状を踏まえると、ITの使い方が変わってきているようにも思います。

坂本:きっかけとして大きかったのが、東日本大震災ではないかと思います。当時は原子力をベースとしながら、そこに火力があるというかたちでしたが、それがなくなってしまってからの制御はものすごく難しかったはずです。それについて御社が貢献した部分があれば教えてください。

篠﨑:需給バランスについて、特に大きく変わってきたのは、電力の自由化により新電力会社や太陽光発電などが出てきた頃からです。求められるものが高度になってきて、現在はさらにデジタル化が進み、AIの台頭で、さらに大きく変化しています。

需要家向け「エネルギーマネジメントシステム」

篠﨑:成長事業における次世代エネルギーのひとつに、エネルギーマネジメントシステムがあります。これがまさに、電力のコントロール、最適化の仕組みだと思ってください。つまり、電力が逼迫しないようにするものです。

地球温暖化の原因となるCO2の排出問題もあります。脱炭素社会の実現に向けては、ただ電気を作って使えばよいというわけではありません。

電気代も高くなってきています。コストの観点も踏まえて、いかに電力をコントロールし、効率的に使うかというエネルギーマネジメントシステムの考え方が重要なのです。

実際に、欧米ではこの考え方がかなり進んでいます。日本はまだまだこれからです。次世代エネルギーは、まさに私たちのエネルギーマネジメントシステムで成り立つと言えます。

仏・シュナイダーエレクトリック社との共創

篠﨑:ヨーロッパには、エネルギーマネジメントシステムで有名なシュナイダーエレクトリックという会社があります。私たちは日本で初めてパートナー契約を結びました。

シュナイダーエレクトリック社といえば、エネルギーマネジメントシステムにおいて世界でトップクラスの会社です。半導体工場や製造業など、電力を多く使うところでエネルギーのコントロールや見える化などを行っています。

シュナイダーエレクトリック社と提携し、日本の工場やデータセンターなどに対して、当社のIT技術と同社が持っている製品を組み合わせて提供しています。すでに実績も上がってきています。

グローバル開発の拡大:IT人材大国 ベトナムでの取組み

篠﨑:当社のビジネスの成長の源泉は、人材です。IT業界も、人材不足が非常に深刻な状況です。そのため、私たちもさまざまな取組みをしています。

日本に加え、先ほどお話ししたベトナムのTechzen(テックゼン)でも、人材教育を含めた取組みを進めています。今後、ダナンの開発センターを1,000名体制にしようと考えており、アドソル日進よりも大きな会社になっていくかもしれません。

グローバル開発の拡大:IT人材大国 ベトナムでの取組み

篠﨑:ベトナムでも、IT人材の確保は競争が激しいです。そのため、国立のダナン大学と提携し、学生に対して、ITトレーニングを実施しています。

ダナン大学とは共同でITトレーニングセンターをオープンしました。ダナン大学の学生にIT教育を通じてITに興味を持ってもらい、できればTechzen(テックゼン)やアドソル日進、あるいは日本のIT企業への就職に結びつけたいと取組んでいます。

私たちがこれから成長していくためには、やはり人材が必要です。日本でもベトナムでも人材教育に注力していきます。

坂本:他社でもベトナムに進出しているところが多いですが、御社がベトナムに出て行った理由は何ですか? 人手不足なのは当然として、他にもさまざまな国がある中で、人件費だけの理由ではないだろうと思います。勤勉性や理系が強いからなど、ベトナムでは何か整っているものがあるのでしょうか?

篠﨑:ベトナムの方は本当に勤勉で勉強熱心です。日本との交流が多かったこともあるのか、相性が良いと思います。これはおそらく他社も同じように考えていると思います。

私たちは約10年前から、日本の大学を卒業したベトナム人留学生の新卒採用を毎年続けています。彼らがベトナムに戻り起業することもあります。当社には起業支援制度があり、Techzen(テックゼン)は当社OBがこの制度を利用して設立した企業です。

ベトナムへの進出は、このような長年の取組みに基づいています。ダナン市や、国立ダナン大学との提携なども含め、非常に良い関係を築けています。

坂本:人事交流も行っているということですね?

篠﨑:おっしゃるとおりです。私も定期的に訪問していますし、当社の役職者は毎月何人か現地を視察しています。

2025年3月期 第3四半期 業績ポイント(売上高)

篠﨑:直近の数字を少しだけお話しします。2月6日に発表した第3四半期の業績は、スライドに記載したとおり、最高売上高を更新しました。

前年同期比で11.3パーセント増です。

坂本:売上高の増加については、案件の増加と単価の上昇などが関係していると思います。要因は何でしょうか。

篠﨑:既存ビジネスにおける単価アップは当然あります。また、収益性の高いビジネスが増えてきたということもあります。この両輪で、好調に成長しています。

坂本:案件の大型化も寄与していますか?

篠﨑:案件の大型化とは逆で、以前よりも規模としては小さい案件が増えています。ただし、案件が小さいと言っても、デジタル化により、非常に高い技術力を求められることが多くなっているため、それが単価アップにも影響しています。

2025年3月期 第3四半期 業績ポイント(営業利益)

篠﨑:営業利益は前年同期比19.4パーセント増で、第3四半期として過去最高となりました。営業利益率は11.9パーセントで、こちらも前年同期比で0.8ポイント向上しています。

特に人材に対しては、先ほどお話ししたベトナムでの高度IT人材育成など、さまざまな投資も行いながら、最高利益を更新しており、非常に良い状況です。

坂本:好業績の直接的な主因は何でしょうか? 今まで投資してきた分野で仕事が増えたなど、いろいろな要因が考えられると思いますが、このあたりをお聞かせください。

篠﨑:既存ビジネスも当然引き合いは強いですが、お客さまと一緒にビジネスを創出していく、いわゆるコンサルティングにも力を入れていることも要因です。

坂本:業界では上流と言われているものですね。

篠﨑:ここ数年はコンサル教育も強化したことで、上流から携わる案件が増えてきており、単価向上にもつながっています。

坂本:それができる人材を社内で教育しているのですね?

篠﨑:おっしゃるとおりです。今後「全社員がコンサルタント」、そのくらいの気概で教育をしていきます。コンサルティングへのシフトを進め将来的には営業利益率10パーセント台後半を目指せるようにしたいです。

坂本:上流工程からすべてを手掛けられるわけですから、1次請けの割合が多いことが効いてきますね。

2025年3月期の成長ポイント

篠﨑:2030年以降も成長を続けていくためのポイントとして、スライドに5つ記載しています。本日ご説明した次世代エネルギーを含む、成長事業へのシフトに加えて、収益力の強化やコンサルティングシフトを掲げています。

また、グローバル開発や人材育成、そしてAIなど、新しいITの世界に広がるいろいろなものに挑戦し、確実に成長を果たしたいと考えています。

2025年3月期 業績予想

篠﨑:今期の業績予想をスライドに掲載しています。もともとの計画に対して、最高売上、最高利益、最高利益率の連続更新を打ち出しています。

今期は2度の上方修正を行い、通期予想は売上高を153億円、営業利益を17億円としています。今期は、中期計画の2年目ですが、計画で掲げた業績目標を1年前倒しで達成する見込みです。

持続的成長と中長期的な企業価値向上に向けて

篠﨑: 2月6日には、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針を開示しました。

事業成長と資本効率性をポイントに、ROEの目標を22パーセントに設定しました。また、株式分割や株主還元強化についても発表しています。今後もこうしたアクションを機動的に検討していきます。

株式分割

篠﨑:2025年4月1日付で、1株につき2株の株式分割を実施します。株数が倍、株価が半分になって、実際の総額は変わりません。投資しやすい株価になり、流動性も高まると考えています。

株主還元強化

篠﨑:配当方針も変更しました。配当性向を「50パーセント以上」に引き上げたほか、「DOE6パーセント以上」という目標を新設、さらに「毎年2回の配当」を掲げています。「毎期1円以上の増配を行う、累進かつ連続増配」を行っていく考えです。

坂本:DOE6パーセント以上という数値目標は、安定した配当を期待する投資家にとって非常にプラスな話だと思います。この数値に決めた背景を教えてください。

篠﨑:市場からのさまざまな期待や、当社の今の立ち位置、これからの成長など、多岐にわたり幅広く検討しました。いろいろな見方があると思いますが、DOE6パーセントは1つの通過点でしかないと思っています。

坂本:もともと配当性向は高めですし、将来的には10パーセント台後半の営業利益率を見込めるとのことでしたので、ここは期待できそうですね。

1株あたり配当金の推移

篠﨑:来期は、16期連続増配を達成する見込みです。先ほどお話ししたとおり、事業環境は非常にポジティブです。このチャンスを逃さず、さらに成長を続けていきたいと思っています。ぜひみなさまご期待ください。

坂本:来年は創立50周年を迎えますが、ちなみに40周年の際の記念配当はありましたか?

篠﨑:過去に記念配当を実施したのは、2014年に東証一部に上場した際です。1株あたり4円の記念配当を実施しました。

来年に迎える50周年の記念配当については、私からはお話しできません。ただし、株主還元の強化は引き続き検討していきたいと思っています。

質疑応答:収益モデルについて

井上綾夏氏:「基本的には、ストック売上が積み上がっていく収益モデルという認識でよいでしょうか?」というご質問です。

篠﨑:私たちは、いわゆるアプリの月額課金のようなストック型のビジネスモデルではありません。

坂本:開発のビジネスをしていますよね。保守の案件を受けることはありますか?

篠﨑:はい、あります。

坂本:その部分については、ストック売上ということになるでしょうか?

篠﨑:システム開発は、コンサルティングに始まり、構想・設計し、実際に作って納め、サービスとして稼働するまでをサポートします。作ったシステムの保守や運用・維持も、もちろん行います。

むしろお伝えしたいのは、当社はこのシステム開発の一連の流れすべてを、ワンストップサービスとして提供しているということです。

一つの案件を長期間にわたって支援するので、フェーズや期間ごとに見ると多少のでこぼこはありますが、毎月必ず売上が上がります。ストックに近い、高い安定性を持つビジネスだと考えています。

質疑応答:AIの登場による影響や取組みについて

坂本:最近、開発系の会社からは「AIが出てきたことによって、開発工数の削減やスピード化がマッチするようになってきた」という話を聞きます。御社もそうでしょうか? 何か取組みなどがあれば教えてください。

篠﨑:当社には、AI研究所という組織があります。これほどAIが話題になる前、2021年に設立しました。AI自体を作るというよりも、産総研と「AI品質評価」に取組んだり、東大とは「宇宙衛星データ×AI」に関する共同研究などを行っています。

生成AIに関しては、約2年前に社内でワーキンググループを作ったところ、約50名の社員が主体的に参加してくれました。社員自ら、さまざまな生成AIのテーマに対して関心を持って取組んでいます。

実は、その中から独自の生成AIサービス「アドソルチャット」が生まれ、社員みんなで使っています。この知見を活かして、生成AIのシステム構築サービスを提供しようと思っています。

また、AIから得られる情報はその正確性が担保されていません。そのため、AI研究所のAI品質に関する研究を活かしたAIコンサルティングサービスも検討しています。ぜひご期待ください。

質疑応答:電力事業への参入について

坂本:「IT会社だけに電力の重要性は認識していると思います。電力事業への参入はお考えですか?」というご質問です。

最近は、電気を仕入れて売るにしても価格が非常に不安定ですので、大きく損をする会社も出てきています。リスクが高いと思いますが、どのようにお考えでしょうか?

篠﨑:電力を中心に事業をしていると「電力会社になるつもりはありますか?」「電力会社の業績が厳しく、投資意欲が低い時期には、アドソル日進の業績も下がるのではないですか?」とよく言われます。

私たちは、電力会社になるつもりはありません。電力会社および新電力会社という電力を供給する側の安定供給をITで支えていく会社として、その取組みを継続して行っていきます。また、みなさまが使う電力をどのように効率よく使っていただけるかという点にも貢献していきたいと考えています。

冒頭でお話ししましたが、「人に優しい暮らし」というテーマの中で会社を経営してきました。これからもそのような会社でありたいと考えています。

坂本:ここ数年で新電力会社がたくさん生まれたことによって、御社の仕事にプラスの影響はありましたか?

篠﨑:新電力会社で電力を作るのはなかなか難しく、仕入れて、売ることがビジネスのメインになっています。新電力会社向けには、いかに効率よく、コストを抑えられるかという仕組み作りの部分を提供しています。電力会社が新しくできれば、新しいビジネスが生まれてきますので、私たちには非常に追い風になると思います。

質疑応答:交通運輸の事業内容について

坂本:「社会インフラ事業における交通運輸カテゴリでは、どのような仕事をしていますか?」というご質問です。

篠﨑:交通運輸と一口に表現していますが、主には鉄道や道路関係のシステム開発です。例えば鉄道会社向けには、電車が安全に走行するための監視や制御を行うシステムを作っています。線路の周りにはさまざまなセンサーが入っているため、それらのセンサーから、電車の走行状況を監視したり、線路上の障害物を検知するシステム開発を担っています。

道路では、特に高速道路関係のシステムを開発しています。電車も車も安全に走行するためにITで支えている部分のほうが多いです。

質疑応答:有利子負債ゼロに対する自己評価について

坂本:「業績は非常に堅調かつ好調に推移していると思っています。自己資本比率も高く、有利子負債もゼロで、財務も健全だと思います。有利子負債ゼロで経営できていることに対する自己評価をお聞かせください」というご質問です。

おそらく、この財務の健全性が配当の高さにつながっていると思います。実際に何があるかわからないのが経営です。外部的なショックがあるかもしれません。そのため、配当性向については、高くしすぎることに懐疑的な経営者も案外いると思います。しかし、御社は財務が健全だからこそ、「配当性向50パーセントを出せます」と思い切って言えるのだと考えています。今後の資本政策や、M&Aの可能性なども含めて教えてください。

篠﨑:会社を成長させていく時には、相応の財源確保が必要になってきます。一方で、資本政策や資本コストなどの話もあります。先ほどROE目標についてお話ししましたが、中長期的にさまざまな成長戦略を実行する中で、人材の採用や教育などの投資を継続的に強化することは必要不可欠です。私たちは、何かモノを持ってビジネスを行っているわけではありませんので、人材は特に重要です。ここに注力しながら進めていきたいと考えています。

今はエネルギーを中心にビジネスを行っています。これが成長軌道にあり、業績を支えている状況です。その裏で、新しいビジネスを創出すべく、独自のソリューションの開発、提供や、中長期的な成長に向けた取組みを進めています。その1つがコンサルティングへの移行です。エネルギー領域のビジネスが業績成長を支えている間に、新しいビジネスへの転換の準備を進める時期にあると考えています。

今後も、引き続き会社を成長させるための戦略投資を実行しながら、株主還元の強化を続けていきたいと考えています。その中で、資本効率の向上も考えていきたいと思っています。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:法人の大株主が多いだけにやりづらい部分はあるのでしょうか。それとも、さまざまな面でバックアップしていただいているのでしょうか。

回答:一般的に言われているような、意思決定の複雑化や株主総会での影響力の増大などはまったくありません。逆に、業務資本提携を結んでいる企業もあり、これらの企業とは、中長期的な事業戦略上のシナジーの発揮等による持続的な成長を目指して協業を行っています。

<質問2>

質問:円安は御社にどんな影響がありますでしょうか?

回答:直接的な影響はありません。例えば、円安に起因する業績向上に伴い、顧客企業のICT投資意欲が高まることで当社業績にポジティブな影響が考えられます。

また、円安によりコストが相対的に安いことも一因となり、国内で工場やデータセンターの建設が進んでいます。さきほどお話したエネルギーマネジメントシステムを導入いただけるビジネスチャンスがあると考え、提案活動を進めています。

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