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タイミー株価25%急落…なぜ利益上方修正でも投資家失望?スポットワーク市場の将来性とリスクを解説=佐々木悠

先日、決算発表後に株価がストップ安となる衝撃的な動きを見せたタイミー<215A>。一体なぜ、このような事態に陥ったのでしょうか?今回は、その理由と、今後のタイミーの展望について、最新の情報をもとに深掘りしていきます。個人投資家の方々も大きな影響を受けた今回の株価下落。その背景には何があるのか、詳細を見ていきましょう。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

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プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

タイミー株価急落の衝撃とその背景

2025年9月11日の決算発表後、タイミーの株価は約25%下落し、ストップ安となりました。

出典:株探

9月17日現在も厳しい株価の動きが続いており、上場後右肩上がりで推移してきた中で、この大きな下げは多くの投資家に懸念を与えています。実は約1年前の同時期にも同様の大きな下落があり、決算発表がトリガーとなった形です。

この株価下落の主な原因は、売上高が当初の予想レンジを下回ったことにあります。

最新決算の概要:利益上方修正も売上予想下方修正

タイミーの2024年3Q決算は以下の通りでした。

出典:タイミー 決算説明資料

【売上高】
当初見通し:84億円~85億円

実績:83億円(予想レンジに届かず)
要因:飲食業界を中心としたコスト抑制、および不正利用対策の継続が影響。特に「闇バイト」などの不正案件削除が、売上減少の一因となった可能性も指摘されています。

【営業利益】
当初見通し:17.3億円~17.7億円
実績:18.3億円(予想をクリア)
要因:売上高は予想を下回ったものの、コストコントロールによって営業利益は予想を上回りました。

この結果、通期見通しでは売上を下方修正しつつ、営業利益は上方修正するという流れになりました

一見すると「利益が改善した」というポジティブな側面もありますが、なぜ市場はこれを「失望」と捉えたのでしょうか?

詳細分析:業種別売上

<飲食業界の苦戦と他業種の躍進>

四半期ごとの業種別売上を見ると、特に飲食業界の伸び悩みが顕著です。

出典:タイミー 決算説明資料

<「コストコントロール」は吉と出るか?>

営業利益を押し上げた要因は、コストコントロールでした。

しかし、このような「コストコントロール」は、急成長を目指すスタートアップ企業や若い企業にとっては必ずしもポジティブに捉えられません。一般的に、成長フェーズにある企業は、利益よりも売上拡大を優先し、積極的にコストを投じて事業を伸ばそうとするものだからです。マーケティング費用や人件費の削減は、「今アクセルを踏まずにいつ踏むのか?」という疑問を投資家に抱かせ、「成長の鈍化」を示すシグナルと受け取られる可能性があります。

Next: 成長は止まった?タイミーのビジネスモデル・強みを見ると…



タイミーのビジネスモデルと「ネットワーク効果」の強み

タイミーのビジネスモデルは、労働者とクライアントが相互に増える「ネットワーク効果」が特徴です。

これらの強みが、スポットワーク市場におけるタイミーの確固たる地位を築いてきました。

タイミーが直面する課題と競争環境の激化

<新規労働者獲得の壁とコワーカーへの依存>

タイミーの懸念点として、新規労働者の割合低下が挙げられます。

<利用者の高齢化:40代以上が半数以上を占める変化>

タイミーの利用者層にも大きな変化が見られます。

この利用者層の変化は、タイミーが当初想定していた「若い世代向けのサービス」というイメージから、「幅広い年齢層に支持されるサービス」へと転換していることを示唆しています。

<激化するスポットワーク市場の競争>

スポットワーク市場は、異業種からの参入により競争が激化しています。

このような競争激化の中で売上が鈍化していることは、他社との顧客の食い合いが発生している可能性も示唆しており、飲食業界のコスト抑制だけでなく、競合サービスの台頭も影響していると考えられます。

Next: タイミー株は買いか?リクルートは撤退、スポットワーク市場の未来は…



<リクルートの撤退が示唆するもの>

かつてタイミーに投資を検討していたリクルートがスポットワーク市場から撤退したことも注目すべき点です。その理由として、リクルートがAIを活用した採用プロセス効率化(Indeedなど)により多くのリソースを割きたいという判断があったようです。これは、日本国内のスポットワーク市場よりも、世界規模での採用プラットフォームに投資する方が合理的という判断が働いた結果とも言えます。

しかし、現在のメイン利用サービスに関するアンケートでは、タイミーが他社を圧倒的に抑えて1位となっており、使いやすさから一定の優位性を保っていることも事実です。

タイミーの未来を担う成長戦略:既存と新規の両面から

タイミーは今後、大きく2つの戦略で事業拡大を目指しています。

<既存顧客内のシェア拡大:「受け入れ負担軽減プロジェクト」>

既存のクライアントに対し、タイミーの利用をさらに深めてもらう戦略です。

<新規クライアントの獲得:市場と業種の拡大>

既存の都市部・物流・小売・飲食以外の市場や業種にも広げていく戦略です。

投資家がタイミーに求める「夢」と今後の見通し

タイミーは売上高が予想を下回ったものの、営業利益は予想を上回っており、利益を出しているという点では優良な企業と評価できます。しかし、投資家からは「若い企業らしさの元気がない」「無鉄砲に拡大する姿勢が見えない」という声も上がっています。

まとめ:タイミーの今後の動向に注目

タイミーの株価急落は、売上高の予想未達と、成長企業としては異例とも言えるコストコントロールが主な要因でした。飲食業界の苦戦、新規ワーカーの伸び悩み、40代以上の利用者増加、そしてメルカリハロやLINEスキマニなどの強力な競合の台頭といった課題に直面しています。

しかし、タイミーは依然としてスポットワーク市場で圧倒的なシェアを誇り、既存顧客内のシェア拡大や新規市場・業種への展開といった明確な成長戦略を持っています。これらの戦略が、投資家が期待する「成長」を実現できるか、今後のタイミーの動向に注目が集まります。


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image by: jazz3311 / Shutterstock.com

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年9月20日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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