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なぜ住友ファーマ株が急騰?iPS細胞でパーキンソン病改善…長期投資の好機か=佐々木悠

最近、住友ファーマ<4506>の株価が大きく伸びています。この株価急騰の背景には、IPS細胞を使ったパーキンソン病の治療に進展があったらしいという話があります。今回は、この話題の治療法が今後どのように期待できるのか、そして住友ファーマが投資対象としてどのような可能性があるのかについて、会社の全体像と合わせてくわしく解説します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

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プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

住友ファーマ株価急騰の背景

住友ファーマの株価は、パーキンソン病に対する有効な薬(より正確には、開発中の薬の有効性がより証明されたというニュース)が入ってきたことを受けて急騰しました。このニュースにより、2連続でストップ高となり、その後一時調整があったものの、そこから大きく株価が伸びてきています。

話題となっている治療法は、住友ファーマによる試験結果で示された「パーキンソン病のIPS細胞の細胞療法」です。この治療法が、承認申請へ進む見通しというニュースが流れたことが、株価急騰の直接的な要因と考えられます。
※参考:住友ファーマ、京大病院による医師主導治験結果でパーキンソン病のiPS細胞由来細胞療法を承認申請へ:日経バイオテクONLINE(2025年4月18日配信)

IPS細胞は、京都大学の山中教授がノーベル賞を受賞した画期的な細胞です。このプロジェクトは、住友ファーマ、京都大学、そしてアメリカの大学の3者が中心となって研究を進めています。住友ファーマは、この研究の実用化を目指しており、もし臨床で使われるようになれば、IPS細胞など必要なものを作って提供し、収益を得る役割を担うと考えられています。

住友ファーマ<4506> 週足(SBI証券提供)

住友ファーマ<4506> 週足(SBI証券提供)

画期的な治療法への期待:進行抑制から「回復」へ

今回のIPS細胞を用いた治療法が画期的なのは、既存のパーキンソン病治療法が基本的に病気の進行を遅らせるものであるのに対し、今回のものは症状が回復に向かうことが期待されている点です。これまでの治療では病気の進行を遅くすることはできても病気を治すことはできませんでした。この新しい治療法が成功すれば、患者さんが本当に元気な状態に戻れる可能性があります。パーキンソン病で苦しむ方々にとっては、まさに画期的な希望となるでしょう。

<実用化への道のり:承認プロセスと「条件付き承認」の可能性>

医薬品(この場合は細胞療法)が実際に患者さんに届けられるまでには、研究、治験(フェーズ1・2・3)、承認申請、承認、販売という段階があります。

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出典:住友ファーマ決算説明資料

会社の資料では、今回の話題となっている神経幹細胞に関する開発は現在フェーズ1の段階にあるとされています。

しかし、一部の記事では既に承認申請をする見通しだと報じられているため、事実上はフェーズ2からフェーズ3に進み、承認申請が十分に視野に入っている段階と見られます。

さらに重要な点として、記事などには「条件付き承認」という言葉が書かれています。これは、フェーズ3を飛ばしてフェーズ1や2の段階で承認申請を行える制度です。もしこの制度が適用されれば、通常医薬品開発における高いハードルの一つであるフェーズ2からフェーズ3への確率(約32%)がなくなり、より早い段階で承認申請に進める可能性が期待されます。条件付き承認の場合でも、申請後に並行して治験を進めていくことになります。

確率論的に考えると、もしフェーズ3に近い段階だと仮定するならば、フェーズ3から承認申請への確率が55%、承認申請から販売までが85%であり、約45%の確率で上市される可能性があると考えられます。

承認申請から承認までには、通常1年から2年かかるとされています。住友ファーマは2025年度中の承認を目指しているとしており、これは最も早いケースではありますが、まったく現実離れした話ではないものです。

Next: 潜在需要は巨大。住友ファーマの前途は明るい?

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