<巨大な潜在需要:日米の患者数>
この新しい治療法には、非常に大きな潜在需要が見込まれます。
日本のパーキンソン病患者数は約15万人と言われており、高齢化が進む日本では今後さらに増加する可能性があります。ビジネス的な観点からも、現状で有効な根治療法がないため、今回の治療法の重要性は非常に高いと言えます。
さらに、アメリカのパーキンソン病患者数は約150万人と、日本の10倍もの患者数がいます。もしこの治療法がアメリカでも承認され、現時点で住友ファーマしか提供できないような状況になれば、相当巨大なマーケットになる可能性があります。これは、住友ファーマを支える「お宝」のような非常に強力な製品となる可能性を秘めています。
住友ファーマの強み:再生・細胞医療事業
住友ファーマは、今回話題となっている再生・細胞医療事業の領域に強い会社だと言われています。この分野に古くから研究開発に取り組んでおり、競合他者が少ない参入障壁の高い領域で、技術力や研究力、ノウハウなどの強みを持っています。
パーキンソン病治療で実際にこの治療法が一般に使えるようになれば、この分野のトップランナーとして世界でも注目される存在になる可能性があります。アメリカの大学との共同研究も、アメリカでの販売実現につながる重要な要素と考えられます。
<治療法の具体的な内容と実用化における課題>
このIPS細胞を用いた治療法は、一般的な飲み薬とは異なり、IPS細胞を使ってパーキンソン病に有効な細胞を作り、それを脳の中に移植するイメージであり、手術に近いものになると考えられています。
脳の病気に対する治療のため、恐らく手術が必要となり、すぐに手術を行える医師の数が限られると思われます。また、単に製品を販売するだけでなく、治療を行うための設備などを整えていく必要もあり、実用化に時間がかかる可能性もあります。
<特許とジェネリックリスクの低さ>
今回のパーキンソン病に関する治療法は「薬」ではなく「治療法」であるため、一般的な医薬品と比べて特許切れ(パテントクリフ)のリスクが少ないかもしれないと言われています。
特許はもちろん存在しますが、特許期間が切れた後に簡単に真似できるかという点が異なります。一般的な薬は成分表が分かればジェネリック医薬品が登場することがありますが、IPS細胞を用いた治療法は、細胞の管理方法や培養方法といった住友ファーマ独自のノウハウや技術力が重要となるため、これらの技術が外部に容易に流出しなければ、特許切れが起きても売上が大きく落ち込まない可能性があります。
長期的に見ると、ジェネリック医薬品のように簡単に真似できない点が強みとなるでしょう。
<住友ファーマの現状と財務状況>
現在の住友ファーマは、主力製品であったラツーダの特許切れにより、売上が大きく落ち込んでしまった状況にあります。特に最大の市場であったアメリカでのラツーダの売上が激減し、全体の売上の半分近くが失われました。

さらに、営業利益も大きくマイナスとなっています。

これは、ラツーダの特許切れに備えて買収した会社の費用計上、特にのれんや無形資産の減損が主な原因です。買収した新薬(オルゴビクス、ジェムテサ、マイフェンブリーなど)の販売が想定を下回った結果、減損損失が発生しました。ラツーダの独占販売終了と、これに代わる新薬の販売不振、そして費用計上が重なり、大幅な赤字となりました。
業績だけ見ると厳しい状況ですが、こうした経緯を踏まえると、ある程度仕方のなかった部分もあります。ただし、これらの新薬が全く貢献しなかったわけではなく、2021年以降売上は伸びており、これらの新薬がなければさらに厳しい状況だった可能性もあります。
直近では2025年3月期に黒字予想に修正されており、全体として非常に苦しい状況だったが、なんとか生き延びたという見方がされています。