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いま「日本製鉄」株は買い?売り?長期投資家が“景気敏感株”に投資するときの考え方=栫井駿介

日本製鉄はここのところ非常に調子が良く、配当利回りも6%超ということで人気がありました。しかし、直近の決算で、47%の減益、40円の減配を発表しました。日本製鉄の株を持っている方も多いかと思われますが、果たしてこのまま持っていてもよいのでしょうか。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

業績は「鉄鋼価格」次第

日本製鉄の株価はこの1年好調に推移してきました。

日本製鉄<5401> 日足(SBI証券提供)

日本製鉄<5401> 日足(SBI証券提供)

株価も上がっていて配当利回りも高い、良い銘柄に見えますが、これを額面通りに受け取ってはいけないと思います。

日本製鉄の株価が上がってきた背景には業績が好調だったことがあります。

日本製鉄<5401> 業績(SBI証券提供)

日本製鉄<5401> 業績(SBI証券提供)

「製鉄」というと、さえない業界というイメージもありますが、このように業績が伸びていると、いよいよ成長しているのかとも思えます。

実際、日本製鉄はここ最近かなり改革を行ってきました。

国内の製鉄所を休止するなどコスト削減に努めてきました。

コスト削減が必要だった理由は業績が苦しかったからです。

赤字を出した年も度々ありました。

中国が鉄鋼の生産量をものすごく増やしたために、世界の鉄鋼価格が値崩れしてしまい、いくら売っても利益が出ない状況がありました。

この状況を改善するために、製鉄所の休止や、価値あるものはきちんと高く売ろうという動きをしてきました。

その成果が出て、直近の右肩上がりの業績となっています。

ただし、自助努力の成果も確かにあるのですが、それだけではありません。

鉄鋼で利益を出すために重要なのは鉄鋼の価格です。

簡単に言うと、鉄鋼の価格が上がるほど利益を出しやすくなります。

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鋼材価格の推移を見ると、2007年から2009年にかけて大きく上がり、その後は低迷していました。

しかし、直近で大きく上がっています。

上昇した要因としては、原材料高があります。

様々なものの価格が上がっていて、鉄鋼においても価格に転嫁しやすい状況でした。

さらに、中国も生産しすぎて儲からなくなり、減産の方向に動きました。

その結果、鉄鋼の価格が上昇して利益が出たということになります。

鉄鋼価格と日本製鉄の業績は重なるように推移していて、つまり、日本製鉄の業績は鉄鋼価格に依存しているということになります。

資源価格などの外部要因によって業績が大きく動かされてしまう『シクリカル銘柄』ということです。

日本製鉄が今好調なのは、コスト削減や海外進出などの自助努力が功を奏している部分もありますが、大部分は鉄鋼価格が上がっているからということになります。

直近で減益になっているのは、鋼材市況もピークを迎えて右肩下がりになりつつあるからだと考えられます。

鋼材価格が今後も上昇し続ける可能性も無いわけではありませんが、経済の一般原則的に、価格が上がって利益が出るようになれば、供給が増えて価格が下がる、ということが繰り返されるはずです。

これが『シクリカル(サイクル)銘柄』の名の所以となっています。

Next: シクリカル銘柄の買い時・売り時は?日本製鉄の場合は…

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