一般的には、トランプ大統領の誕生で対日要求が強まり、円高になるとみられています。ですが私は、中期的にはドル高になるのではないかと思っています。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)
アメリカの反グローバル化が日本のデフレに歯止めをかける
景気サイクルでは、調整は2017年
これまで何度かご紹介している「景気サイクル」では、アメリカの新・大統領誕生の1年目に、マーケットが調整することが多いです。おそらく、調整は来年(2017年)の秋になるのではないかと思います。逆にみますと、まだ1年、上昇相場は続くことになります。
いま、中国の不動産市場が暴騰状態にあり、1ヶ月に何割上昇など猛烈なバブルです。こうした点も踏まえて、調整はまだ先なのでしょう。
トランプ大統領で、米国景気は上昇見通し
さて、トランプ大統領ですが、財政出動や自国民の雇用増加を主張していることから、米国景気は上昇すると思っています。
アメリカがグローバル化によって多くの雇用を失ってきたのは事実ですから、トランプ大統領の主張が米国民に期待を持って受け止められたのも頷けます。
グローバル化は、日本の場合も同じですが、巨大なグローバル企業に大きな利益をもたらす一方、先進国の中・低所得層には雇用の喪失を招きます。
これは、先進国の中・低所得層は、先進国の中では中・低所得ですが、途上国と比べると「高所得」になるためです。つまり、賃金が数分の一というレベルの、途上国の労働者との賃金競争に巻き込まれてしまうためです。
ですからグローバル化は、「巨大なグローバル企業」と「途上国の労働者」には良いのですが、「先進国の中・低所得層」にはマイナスに作用します。
グローバル化の効果
◎:グローバル企業の経営者
◎:途上国の労働者
×:先進国の中・低所得者
×:先進国の中小企業
つまり、野球で例えますと、これまで、小学生は小学生、中学生は中学生の大会、プロはプロ野球、大リーグは、また大リーグと分かれて戦っていたのが、グローバル化によって、小学生と大リーガーが戦うとか、中学生とプロ野球が戦うとか、そういうことが起きてくるわけです。
つまり、大リーガーは、小学生や中学生相手に、勝ちまくるものの、小学生や中学生は、これまで似たレベルで勝ったり負けたりしていたのが、負けばっかり、となってしまうわけです。
こうした社会現象はアメリカでも顕著で、米国民は現職のオバマ大統領が変革してくれるのではないかと期待したのですが、大きな変化は起きませんでした。なので、今回のトランプ大統領の誕生には、オバマ大統領への失望が大きく影響しています。
オバマ大統領がテレビで演説を始めると、「テレビを切る」というケースが日常的に起きていたということ。オバマ大統領は演説だけで、何も変えていないではないか、という気持ちからです。
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