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安倍首相は解決を望んでいない!? 北朝鮮による日本人拉致問題の「闇」=不破利晴

北朝鮮による日本人拉致問題の被害者である蓮池薫氏の実兄、蓮池透氏の著した『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)は歯に衣着せぬ快著である。この“冷血な面々”について、蓮池氏によれば、蓮池氏自身もそれに含まれているようだが、ともかくこの“面々”については、一度整理しておく必要があるだろう。(『インターネット政党が日本を変える!』不破利晴)

※本記事は、『インターネット政党が日本を変える!』2016年6月21日号の一部抜粋です。興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。月初の購読は特にお得です

「薄ら笑い」を浮かべた安倍首相が蓮池氏に言い放った言葉とは

致命的だった各県警の捜査ミス

北朝鮮による拉致被害者たちを見殺しにした“冷血な面々”としては、まず第一に新潟、石川、福井などの各県警が挙げられる。

蓮池透氏の弟、蓮池薫氏が北朝鮮によって拉致された1978年から80年にかけては、日本海沿岸部を中心に若いカップルが失踪するという事件が相次いだ。

当時は今ほど北朝鮮に対し意識的な時期ではなかったものの、沖合から発信される謎の電波、すなわち北朝鮮工作船による電波は当時から警察にマークされていたというのだ。

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そして、1977年9月に石川県宇出津海岸付近で拉致されたとされる久米裕(くめ ゆたか)氏の失踪が明らかになった際、実は久米氏を工作船に乗せたという在日朝鮮人が、石川県警によって身柄を拘束されていたのだ。

しかし、久米氏が自分の意志で船に乗り込んだのか、あるいは無理やりに乗せられたのか不明であるとして、石川県警はこの在日朝鮮人を釈放してしまった。

この件で石川県警は世間のやり玉に挙げられるどころか、「警察庁長官賞」を授与されているというから驚きだ。その後になっても、謎の電波の詳細について県警は全く明らかにしようとしないことから、蓮池氏は一体どちらを向いて仕事をしているのだと県警を評している。

つまり、県警が初動捜査をきちんと行っていれば、久米裕さんの拉致の後に起こった横田めぐみさんの拉致について、あるいは防げたのではないかと蓮池氏は指摘しているのである。

拉致被害者は政治家の「集票マスコット」

さらに政治家に至っては始末に負えない。政治家と握手をしようものなら必ず写真を撮られ、翌日のHPにはアップされてしまう。「私は拉致問題に取り組んでますよ」といった政治家のPRに利用されてしまうのだ。

また、講演会をやろうものなら、どこで聞き及んだのか地元の政治家が挨拶をさせてくれと押しかけ、それで握手をしたと思ったら講演も聞かずに帰ってしまう。

同様に、政治家に講演に来てくれと呼ばれれば、その政治家の政策報告会とセットになっている。蓮池透氏はまるで政治家の“集票マスコット”のようだったと告白している。

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安倍首相は日本人拉致問題の解決を望んでいない

内閣総理大臣を本部長とする「拉致問題対策本部」は、実際の実務は各省庁からの出向者が担当している。もちろん、拉致問題にきちんと向き合おうとする者もいないわけではないが、3年程度の任期ではインセンティブが働きようもなく、柔軟な考え方も上層部に上げられるにしたがい、否定されてしまうようなのだ。

そして、その上層部の長たる拉致問題担当大臣も、組織の発足当初から何人交代したのか、正確な数字を言える者は皆無だろう。実質的にこの大臣というポストは、政権を担う政治家のアクセサリーのようでもある。

そしてこのことは、拉致問題の最上層に位置する総理大臣、安倍晋三氏の拉致問題に対する「本気度」を象徴して余りある。

蓮池氏に言わせれば、安倍首相が本気で拉致問題を解決したいと思っているのか、甚だ疑問であるというのだ。というのも、安倍首相こそが拉致問題を利用してのし上がってきたと、蓮池氏はそう見ているからだ。

いままで、拉致問題は、これでもかというほど政治的に利用されてきた。その典型例は、実は安倍首相によるものなのである。まず、北朝鮮を悪として偏狭なナショナリズムを盛り上げた。そして右翼的な思考を持つ人々から支持を得てきた。アジアの「加害国」であり続けた日本の歴史の中で、唯一「被害国」と主張できるのが拉致問題。ほかの多くの政治家たちも、その立場を利用してきた。しかし、そうした「愛国者」は、果たして本当に拉致問題が解決したほうがいいと考えているのだろうか? これも疑問である。

出典:『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々

北朝鮮による日本人拉致問題に対する安倍首相の世間のイメージは、それが稚拙なものであったとしても、当初からこの問題に対しては強弁な姿勢で臨んできた、といったものではなかろうか。

あくまでも拉致被害者奪還にこだわり、平壌でも日本人奪還を主張したとされている。ところが、この本を読めば事実は全くそうではないことに気づかされる。

安倍首相は拉致被害者の帰国後も、一貫して彼らを北朝鮮に帰らせることを既定路線にしていたのだ。

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安倍首相「蓮池さん、国の不作為を立証するのは大変だよ」薄ら笑いも

ところが、蓮池透氏の、薫氏に対する説得が功を奏し、薫氏らが北朝鮮には戻らないという強い意志を見せたことで安倍氏は渋々方針を転換。そして、その流れに乗ることでむしろ政治的パワーを増幅させ、今日に至るというのが事の真相のようなのだ。

安倍首相にとっては、常に北朝鮮を仮想敵国として据え置いておく方が、むしろ自身の政治的浮揚へ追い風となる、ということであろう。

「拉致被害者支援法(北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律)」は、弟が帰国した二〇〇二年一一月、安倍晋三衆議院議員らが中心となり国会に提出され成立した、議員立法である。この法律により、帰国した拉致被害者は国によって衣食住が手厚く補償されているという噂が流布している。しかし実態は、まったく異なる。

出典:『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々

本書には、帰国した拉致被害者の「」に関する生々しい記述がある。国からは被害者一人あたり月額13万円ほど支給されているが、これは他に収入が発生すると減額されてしまうものである。生活保護程度の額でしかないのだが、これでも国会審議では13万円は高すぎるとの声が上がった。

拉致被害は国の不作為が多分にして指摘されており、蓮池氏は「国の不作為を問い国家賠償請求訴訟を起こしますよ」と安倍首相を追求したことがあった。

その時の安倍氏の反応はと言えば、薄ら笑いを浮かべながら、こう答えたという。

蓮池さん、国の不作為を立証するのは大変だよ

『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』は見事なタイトルだと、そう感じた瞬間であった。

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インターネット政党が日本を変える!』(2016年6月21日号)より
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「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」驚かせてすみません。私は不破利晴と申します。私は、元駐レバノン特命全権大使・天木直人氏と共に、「インターネット政党」の成功に向けて活動しています。インターネット政党『新党憲法9条』のWebサイトをつくり、日々の運用管理をしています。想像して欲しいことがあります。→「毎日働き詰めで辛くありませんか?」→「生きることに目的を見失って辛くありませんか?」→「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」インターネット政党の主役は「あなた」です。

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