■マクセルの業績動向
3. 2027年3月期の業績見通し
2027年3月期の業績については、売上高143,000百万円(前期比10.5%増)、営業利益10,000百万円(同26.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益6,700百万円(同18.9%減)と、2ケタの増収・営業増益を見込んでいる。親会社株主に帰属する当期純利益は減益予想だが、前期の特別利益に計上した子会社売却益がなくなることが要因であり、通常ベースに戻る。為替の前提は対米ドルの平均円レート150円を想定している。なお、前期末に村田製作所及びその完全子会社である東北村田製作所から譲受したマイクロ一次電池事業をベースにした子会社(マクセルサクラ(株))の設立、ベンチャーキャピタル日本大手のジャフコ グループ(以下、JAFCO)が運用する新ファンドへの出資決定、EF2(Electro Fine Forming:精密電気鋳造)事業のソノコムへの譲渡契約の締結など、2027年3月期以降に効果の生じる可能性のある重要な意思決定を行った(中期経営計画において詳述)。
グローバルの経済環境は、米国の関税措置や地政学リスクなど国際情勢に不透明感が残り、引き続き景気への影響が懸念される状況にある。特に、中東情勢において現状が続いた場合には、原材料費、電動力費、輸送費などの高騰によるコスト増、原材料や生産財、副資材の供給不足による生産面への影響、顧客の生産調整や市場の停滞による受注減といったリスクが見込まれる。このような環境下、同社は主要市場の環境や顧客動向を注視しつつ変化に迅速に対応する一方、ポートフォリオ改革の効果による収益向上、及び成長事業の強化と全固体電池など新事業の早期業績貢献を図る。
売上高は、既存事業の成長やマクセルサクラ設立、価格反映などにより2ケタ増収を予想している。利益面では、価格反映や数量増加、原価低減などにより、大幅増益を見込んでいる。銀価格については、原材料の市場価格に連動する販売価格スキームを導入しており、そのスパンを極力短くしていくことから価格反映が一定程度進捗しそうである。したがって、足元の銀価格高騰が続いたとしても、一定期間後には回収してプラスへの転換を見込める状況になりつつある。
2027年3月期も緊迫化が続く中東情勢については、原油・ナフサなどの原材料費高騰リスクを第1四半期に営業利益で数億円と想定する一方、コスト増をポリシーどおり価格反映で対応し通期でカバーする考えである。世界的な問題でもあるため、価格反映は通りやすいと思われる。入手困難な原材料については、グループ間の融通や代替材料の使用などでカバーする予定。なお、セグメントとしては、機能性部材料がコスト増と生産制約による影響が大きく、光学・システムは比較的影響が小さいと思われる。足元の材料費高騰や部材の入手困難など一部に影響が生じているものもあるようだが、第1四半期業績への影響はさほど大きくないと見込まれることから、第2四半期以降の影響抑止に注力している。
全セグメントで増益を予想
4. セグメント別の業績見通し
セグメント別の業績予想について、同社はエネルギーが売上高53,000百万円(前期比24.8%増)、営業利益3,100百万円(同50.1%増)、機能性部材料が売上高34,700百万円(同6.4%増)、営業利益1,900百万円(同29.5%増)、光学・システムが35,700百万円(同2.0%減)、営業利益3,900百万円(同10.2%増)、価値共創事業が売上高19,600百万円(同9.2%増)、営業利益1,100百万円(同34.3%増)と見込んでいる。営業利益は全セグメントで2ケタ増加する予想である。
エネルギーでは、一次電池は増収増益を見込んでいる。原材料(銀価格)の高騰分は価格反映を実施するため、タイムラグは発生するものの収益性は段階的に改善する見込みである。医療機器用で、生産拡大に向けて下期に新製造ラインの稼働を開始する予定である。これに追加されるマクセルサクラの売上高は約120億円、営業利益は統合初期費用やのれん償却を含めて数億円程度が見込まれている。なお、譲受後の一次電池のシェアは、タイヤ空気圧監視システム(TPMS)向けでは合計で80%弱のシェアになるイメージである。
二次電池は減収増益の見込みである。角形LIBは、生産終了に伴って前期は在庫の販売を行っていたが、2027年3月期は大幅に減少するため、これまで発生していた損失の解消による増益が見込まれる。二次電池は今後全固体電池を成長ドライバーとすべく、FA向け汎用モジュールの開発を2026年6月に完了する計画など、本格的な販売を加速させるが、現時点では売上規模が数億円程度と小さいため業績への影響はまだ限定的のようだ。このためエネルギー全体で、二次電池事業の損失解消、需要が旺盛な一次電池事業の成長、マクセルサクラ設立により大幅な増収増益が見込まれる。なお、銀価格の高騰が唯一の懸念材料だが、既述のとおり価格反映などで影響を最小化する方針だ。
機能性部材料では、粘着テープは新規案件を獲得した建築・建材用テープの受注増加、AI向けを中心に好調な半導体製造工程用テープでの売上拡大を想定し、増収を見込んでいる。産業用部材は、塗布型セパレータがハイブリッド車の販売好調を受け、増収を見込んでいる。セグメント全体では、増収効果により増益を予想している。
光学・システムでは、車載光学部品は次世代レンズの販売拡大などにより増収増益を見込んでおり、非車載など新規用途の開拓も推進する。半導体関連は2026年7月にEF2事業をソノコムに譲渡する一方、顧客の在庫消化と受注増加により半導体DMSの需要が徐々に回復するとの見通しを立てている。2026年3月期第4四半期から受注が回復してきているため、2027年3月期以降もそうした傾向が続くと見込まれている。セグメント全体では、第2四半期からEF2事業を譲渡するため減収予想となるが、車載光学部品の好調と半導体DMSの回復により増益を予想している。なお、ライセンスについては、前期の一過性収入がなくなるため減益見込みとなった。また、EF2事業譲渡の利益への影響は軽微である。
価値共創事業では、電設工具は順調、健康・理美容製品は2026年3月期の上期の米国の関税影響から脱して収益が改善し、セグメント全体で増収及び2ケタ増益を見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)