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「何を買っても儲かる相場」が終わったあとに生き残る投資家の条件=栫井駿介

株式投資をしていると、アベノミクスのように市場全体が盛り上がった時に儲ける経験をしたことがある人も多いでしょう。アベノミクスであれ何であれ、投資で儲けるのは素晴らしいことです。しかし、それで投資の才能があると考えるのは早計です。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

アベノミクス相場で儲かった人こそ知るべきバリュー投資の大原則

何を買っても儲かるタイミングはある

2008年のリーマンショック以降、東日本大震災などもあり、日本の株式市場は長らく低迷を続けていました。しかし、2012年末に安倍政権が発足すると、金融緩和をはじめとするアベノミクスが実行され、株価は急激に上昇しました。安倍政権発足前から比較すると、日経平均・TOPIXともに最大で2倍以上にまで上昇しました。

この間の個別銘柄の動きを見ても、ほとんど例外なく大きく上昇していることが分かります。特に、値動きの軽い中小型株ほど大きく上昇しているケースが目立ちます。

市場では、このように何を買っても儲かるタイミングが存在します。それもそのはずで、株価の動きというのは、市場全体に合わせた「ベータ(β)」と呼ばれる要因と、個別銘柄の成長性に左右される「アルファ(α)」と呼ばれる要因があります。アベノミクスのような市場全体が上昇しているケースでは、前者のベータが作用し、銘柄を選ばず株価が上昇したのです。

市場全体が下がる時こそ本当の選球眼が必要

それでは今はどうでしょうか。アベノミクス後の最高値からは値を下げていますが、それでも市場全体に割安な指標は見られません。一方で、アメリカの金融緩和政策終了によるマネーの停滞や、中国の経済成長減速のリスクにさらされています。何かのきっかけに、市場全体が大きく下がる可能性は否定できません

市場全体が大きく下がると、アベノミクスで起きたこと逆のことが起こります。大半の銘柄の株価は下がり、特に動きの軽い中小型株は大きく下がることになります。もちろん全ての中小型株がそうだというわけではありませんが、大型優良株と比較してその可能性は高くなります。

このような場合にこそ、銘柄の選球眼が求められるのです。ダメな株を高い価格で買っていたらもちろん大損してしまいますし、いい株であっても高い価格で買っていては、やはり損をしてしまう可能性は高くなります。

投資の原則は「いい株を安く買う」ことです。大型の優良株に目をつけていれば、いい株というのはある程度見つかります。しかし、それが本質的な価値を大きく下回る場合はそう多くありません。何らかの要因により、いい株が大きく値を下げた時こそが、バリュー投資家が勝負に出るときなのです。

Next: 価値を知って、時機をうかがえ。三菱UFJとソフトバンクの場合



虎視眈々とチャンスを伺う

そこで、つばめ投資顧問では、ある程度割安で優良と見られる株に目をつけておき、時間をかけて分析します。最終的にいい株だと判断できれば、適正株価を見積もり、価格が下がるタイミングを待ちます。ただし、現時点で適正価格を大きく上回る銘柄にチャンスが回ってくることは稀なので、そのような銘柄は注目対象から一旦外します。

株価が下がる要因は、事前に予測できません。その銘柄個別事情で下がることもあるでしょうし、市場全体が下げて適正価格を下回ることもあるでしょう。その時に、下がった要因を分析し、企業の本質的な価値に大きな影響を与えないのであれば、その時が絶好の買い時です。

この方法で私が見ていたのが三菱UFJ<8306>ソフトバンク<9984>です。

三菱UFJ<8306> 日足(SBI証券提供)

ソフトバンク<9984> 日足(SBI証券提供)

三菱UFJは、もともとマイナス金利の影響で割安な水準になっていましたが、ブレグジットの混乱によりさらに値を下げました。ブレグジット直後の株価が470円で、現在は575.5円です(+22.4%)。また、ソフトバンクはARMの買収が懸念され、直後に一時5,387円まで株価を下げましたが、現在は6,869円で推移しています(+27.5%)。※株価は2016年9月2日時点

つばめ投資顧問は相場変動に左右されない「バリュー株投資」を提唱しています。バリュー株投資についてはこちらのページをご覧ください。記事に関する質問も受け付けています。

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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2016年9月7日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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