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地味だけど凄い!コマツの「KOMTRAX」で世界経済を先読みする方法=山田健彦

「KOMTRAX」という経済指標があります。建設機械で有名な小松製作所<6301>が自社製品の稼働状況を把握するためのデータで、これを見れば世の中の動きがわかります。(『資産1億円への道』山田健彦)

お役所発表じゃ遅すぎる。民間企業のデータで読み解く景気動向

コマツ製品の稼働状況を指数化した「KOMTRAX」とは?

KOMTRAX(コムトラックス)」という経済指標があります。ブルドーザーや建設機械で有名な小松製作所<6301>が、自社製品の稼働状況を確認するために備え付けたシステムから得たデータを指数化したものです。メディアでもほとんど報道されないので、初耳という方も多いかもしれません。

この指数の生まれるきっかけは、1998年頃、盗まれたコマツ製の油圧ショベルでATMを壊して現金を強奪する事件が日本で多発していて、その盗難対策として「GPSをつけたらどうか」というところからスタートしたそうです。

また、日本の領土である某諸島の領有権を主張しているある国の企業が、コマツの機器を購入した後で「オタクの機械は故障していて使っていないから、代金は払わないよ」というイチャモンを大量に付けてきたところからこのシステムの開発が始まったという説もあります(会社側は否定していますが…)。

車両には、GPS、通信システムが装備され、その稼働状況がコマツに集積されます。その実際のデータを元に「確かに機械は稼働している」ことを証明して、購入代金を不当に踏み倒そうとした相手方をギャフンと言わせたというシロモノです。

このシステムには機械の遠隔操作機能も備わっており、データを元にした事実を突きつけられてもまだ、購入代金を支払わない相手先に対しては、機械を遠隔操作でロックして、相手の望み通り「使えない」状況にして差し上げる、というちょっと痛快なこともできるのだそうです。さすがにこれには先方も脱帽で、以降はきちんと支払いがなされるようになったそうです。

現在では、個々の機器の使用状況から、部品の取り替え時期の連絡などのフォローアップもしているそうです。

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「KOMTRAX」で世の中の動きが分かるワケ

コマツの機械は、建設工事、公共工事、資源の採掘などによく使われます。そして、KOMTRAXのデータを見ることで、世の中の動きがある程度わかります。

そのKOMTRAXですが、コマツ社のサイト内「KOMTRAX月次データ」というところで見ることができます。
※参考:KOMTRAX月次データ(PDFファイル)

こちらを見ると、日本、欧州、北米、中国ともに公共工事が盛んになってきているようです。

建設・鉱山機械 主要7建機需要(台数ベース)伸び率」というデータも、同じことを示唆しています。
※参考:建設・鉱山機械 主要7建機需要(台数ベース)伸び率(PDFファイル)

鉱山機械の受注レシオを見ると、アメリカでの受注が伸びているのがわかり、米国の景気は比較的よいのでは、と想像がつきます。同時に、コマツやその同業他社の業績も今後さらに上向くのでは、と予想させます。

Next: 実際に使ってみよう! KOMTRAXの「読み解き方」実践例



KOMTRAXの「読み解き方」実践例

おりしも、4/27にコマツの決算発表がありました。それによると、

今期予想は、
売上高:2兆1350億円(前期比18.4%増)
営業利益:1560億円(前期比10.4%減)
当期純利益:920億円(前期比18.9%減)
の増収減益となる見通し。

その原因として、4月に買収を完了した米大手鉱山機械メーカーのジョイ・グローバル(新社名コマツマイニング)の連結化が売上高を2560億円押し上げる一方、買収に伴う償却費など一時費用を計上するので、それが480億円の減益要因となるのだそうです。

ジョイ社買収の影響を除いた従来ベースでは、
売上高:4.3%増
営業利益:12.1%増
と予想。

減益は一過性のものであることを想起させます。

決算発表後のコマツの株価も窓を空けて上昇しました(編注:本稿執筆時5月2日現在)。「コマツの株を購入すると良いですよ」と言っているわけではありませんので、ご注意ください。

小松製作所<6301> 日足(SBI証券提供)

お役所の発表する経済データは、複雑で速報性にも疑問符がつきます。KOMTRAXのような、見やすく、速報性の高い民間企業の発表するデータを利用するというのも、経済を見るうえでは大事です。この続きはまた次回にお話します。
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資産1億円への道』(2017年5月2日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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資産が1億円あるとゆとりある生活が可能と言われていますが、その1億円を目指す方法を株式投資を中心に考えていきます。株式投資以外の不動産投資や発行者が参加したセミナー等で有益な情報と思われるものを随時レポートしていきます。

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