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なぜ岩田規久男氏を筆頭とする「リフレ派」のデフレ対策は失敗したか=三橋貴明

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年9月26日号より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

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間違った理論に基づく社会実験は失敗。さあ常識に戻ろう

「経済学者の妄言」に三年間ふりまわされた日本

80年前の大恐慌という「超デフレーション」と戦ったジョン・メイナード・ケインズは、著書の『雇用、利子、お金の一般理論』のラストにおいて、「経済学者や政治学者たちの発想というのは、それが正しい場合にもまちがっている場合にも、一般に思われているよりずっと強力なものです。というか、それ以外に世界を支配するものはほとんどありません。知的影響から自由なつもりの実務屋は、たいがいがどこかの破綻した経済学者の奴隷です」と、書いています。

まさに、このまま「経済学者」の妄言、率直に書けば「間違った発想」に基づき、過去三年半、デフレ脱却を目指したのが我が国なのです。

岩田規久男教授を初めとする「いわゆるリフレ派」の間違ったデフレ対策、「日本銀行が2%のインフレ目標を設定し、コミットメント(責任を伴う宣言)に基づき、量的緩和を継続すれば、期待インフレ率が高まるはずだ。期待インフレ率が高まれば、実質金利が下がるはずだ。実質金利が下がれば、設備投資や消費が増え、需要が拡大することでデフレ脱却できるはずだ」という、「はずだ」理論に基づき、すでに250兆円超のマネタリーベースを拡大したにも関わらず、インフレ率は▲0.5%。ところが、誰も責任をとらない

そもそも、一般の経営者や消費者が「期待インフレ率」やら「実質金利」など見ているはずがないでしょ!誰一人、見ていませんよ。

なぜ、実質金利が下がった(ずっとマイナスで推移)にも関わらず、我々が設備投資や消費を増やさないのか。これだけデフレが長期化し、儲かる投資先がない状況では、実質金利がどうであろうとも経営者は投資を増やしません。それ以前に、我々経営者が見ているのは、「名目金利」と「投資利益」のみです。実質金利を横目で見ながら投資決断する経営者など、この世に一人もいませんよ!

Next: 経済学者の常識は一般国民の非常識。これから進むべき道は?



さらには、安倍政権の緊縮財政で実質賃金が下がった我々が、消費を増やすはずがないでしょ。期待インフレ率など、消費者は一人として意識していません。我々は単に、実質の所得が増えれば消費を増やす。実質賃金が下がり、貧困化すれば、消費を減らす。ただ、それだけの話です。

上記の類の話は一般国民にとっては「常識」ですが、経済学者たちにとってはそうではないのです。我々は、実質金利が下がれば投資を増やし、将来インフレになるという予測があれば、賃金がどれだけ下がっていても消費を増やすのです。そんなわけがないでしょ!

デフレは貨幣現象」という奇想天外な理論に基づき、日銀の量的緩和のみでデフレ脱却を果たそうとした結果が、現在の日本なのです。「いわゆるリフレ派」の社会実験は、失敗に終わりました。

さあ、どうしますか。別に、難しい話ではありません。9月20・21日の日銀金融政策決定会合で「日銀がギブアップ」した以上、残された手段は政府による「需要創出=財政出動」という普通の政策しかないのです。

常識に帰りましょう。それこそが、現在の日本国民に求められているのです。難しく、かつ間違った理論に基づく社会実験は、もう終わりました。

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