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【9月米雇用統計】利上げは一旦忘れるべし。レンジ103~105円、強すぎる数字に要注意=ゆきママ

本番の雇用統計前に1ドル=104円台に達していることもあって、今日の結果によってさらに上値が期待されています。果たして上値余地はまだあるのか、今夜の投資戦略は何か、などといったことについて詳しくまとめていますので、ぜひお読みいただければと思います。(『ゆきママのブログでは書けないFXレポート(無料板)』『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

「12月利上げ」は主題にならず、久々にシンプルな雇用統計に?

今回はシンプルに考える雇用統計になりそう

今年の雇用統計を振り返ると、必ずと言っていいほど利上げをテーマとして挙げていましたね。そのため、雇用者数などの単純な数字の良し悪しではなく、数字がどのように利上げ見通しに影響を与えるかということを考慮した上で、ドル円相場の展望というのを予測してきました。

そして、エコノミストらは今回も利上げを主要テーマとしているようで、雇用統計の結果がどのように12月の利上げに影響するかということについて言及しています。

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ただ、個人的には12月の利上げは今回のテーマにならないと感じています。それは、6月と9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げが見送られた経緯をみれば明らかでしょう。

まず、6月FOMCでは、直前に発表された5月雇用統計における非農業部門雇用者数が+3.8万人という非常に弱い結果となったこともあり、利上げが見送られました。確かに、ここまで弱いとかなりのネガティブサプライズですから、流石に仕方ないといった見方もできるでしょう。

しかしながら、9月FOMCでは、8月非農業部門雇用者数が+15.1万人と、やや弱い程度でも利上げを実施しませんでした。しかも、この時の間近3か月平均は+23.2万人増という、トレンドで見れば非常に堅調な伸びを示していたのにも関わらず、です。

これらはFOMCの直前に気になる数字が出ると、利上げをしないということを示唆していますから、裏を返せば年内12月の利上げに関しては、直前に発表される11月雇用統計が大きなウェイトを占めるわけで、今回の9月雇用統計の数字は本質的に利上げ見通しに影響するかといえば、かなり微妙ではないでしょうか。

というわけで、今回は利上げ云々といったことを考える必要はあまりないものと考えられますから、自ずと値動きについても、単純な数字の良し悪しが明暗を分ける、久々にシンプルな雇用統計となりそうです。

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先行指標は良好!強すぎる結果には要注意?

それでは、先行指標や事前予想値、注意すべきポイントなどについてまとめておきたいと思います。まず、先行指標は以下のとおりです。

先行指標の結果(数値はいずれも速報値)

全体的に大きく改善しています。ただし、非農業部門雇用者数と相関が最も高いとされる、ADP雇用報告が弱めの数字となっているのが唯一の気がかりといったところでしょう。

その他については、ISM製造業の雇用指数がやや改善。まぁアメリカの労働者に占める製造業従事者の割合は1割にも満たないため、あまり気にしすぎることはないでしょう。

むしろ、ISM非製造業における雇用指数の方がよほど重要となるわけですが、前月から+6.5ポイントと、統計開始以来、過去最大の伸びとなっており、ドル円の一目均衡表の雲抜けの原動力となりました。また、最新の新規失業保険申請件数も1973年以来、43年ぶりの低水準を記録しています。

これだけ先行指標が好調だと、期待感が強まって事前予想値も高いのではと思うかもしれませんが、非農業部門雇用者数は+17.4万人、賃金上昇率は前月比で+0.3%と、特に雇用者数は控えめな数字となっています。

なぜこうなっているのかと言えば、完全雇用に限りなく近づいていると考えられているからですね。もはや労働市場には、スラック(緩み)がなくなって、どんどん雇用できる人材が減っているということです。だからこそ、時給がアップし、賃金インフレにつながっていくということです。

そのため、今回は非農業部門雇用者数において、+30万人に近い強過ぎる数字が出てきた際は、その後の展開に最大限注意するようにしましょう。発表直後こそドルは買われそうですが、これだけ雇用者の増加余地があるということは、まだまだ労働市場には緩みがあり、引き締まりは不十分という見方につながって反落するなど、相場が荒れる可能性がありますからね。

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想定レートは1ドル=103.00~105.00円。ほどほどの数字がベストか

事前予想値を大きく上回るような強い結果、あるいは弱すぎる結果といった極端な数字が出てこない限り、基本的には底堅く推移すると考えています。

今週に入ってから、すでにドル円は3円近くも円安に振れているため、上値に限界が近いのではないかといった声もありますが、押し上げてきた背景というのは、過度の円高&ドル安の巻き戻しといった面が大きく、過熱感はさほどありません。

ユーロドルを見ればわかるように、本質的にドル高が強まっているかといえば、そこまでではありませんからね。先週、先々週とあわや100円の大台割れという水準(100.08~100.09円)まで円高が進んだこともあって、IMMポジション(投機筋のポジション)で、円の買い越しが史上最高とされた今年4月に次ぐレベルまで積み上がっていましたから、利益確定も含めたショートカバー(ポジションの決済)が活発化し、ドル円の上値を伸ばしているのでしょう。

したがって、4月に1週間で4円以上も巻き戻されたことや、まだまだドル高が本格化してないことから、上方向への調整余地はありそうですので、今の相場の雰囲気を壊さない程度のほどほどの数字(非農業部門雇用者数が+15~25万人)になれば、素直に好感して底堅い動きが継続するのではないかと考えています。

加えて、先行指標もかなり好調なので、雇用者がやや予想を下回っても、好調な賃金上昇率などが下支えするといったパターンもありそうですからね。下振れする可能性は高くないと考えていますし、よほど大きく下回らなければ(非農業部門雇用者数が+10万人以下)大丈夫といった感じなので、上目線気味でいます。

そして、上下の目処については、上は先月の高値であった104.32円があり、さらに105.00円という大きな節目があります。1ドル=100~105円というレンジ相場から抜け出すことがあれば、一段と上昇余地が広がるわけですが、非農業部門雇用者数が多すぎてもダメという限られた条件下では、上値も自ずと制限があるのかなと。

また、下はこれまで非常に強いレジスタンス(上値抵抗)として機能してきた、一目均衡表の雲の上限が103.10~103.20円近辺が支えになるでしょう。ただし、あっさり割り込んで再び雲に入ってしまうようだと、ドル円の上昇展望はかなり描きにくくなるでしょう。

ドル円チャート。再び雲(水色)に入ってしまったら手仕舞い。

ですので、戦略としては103円台を割り込んでこない限りは上目線で、押し目を狙ってトレードといったところでしょう。104.30円手前、105.00円手前では利益確定103円を割り込んだら一旦終戦です。

それから、特にドル円の値動きに関しては、明確な根拠があるわけではなく、市場全体に漂う雰囲気を感じとって進んでいるだけに、これを乱すようなマイナスな動きが、株・原油・金利などに発生してしまうと、上昇が難しくなりますので、警戒して見ておきましょう。

実際に、今朝、ポンドが突如として5%近い急落(原因不明)をしたことで、水を差される格好になりました。落ち着きを取り戻し始めたので、今のところ影響は限定的ですが、こういったイレギュラーな動きによって、ドル円の潮目が変わってしまうことは十分考えられますから、トレードする際は意識していただければと思います。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2016年10月7日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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