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Joseph Sohm | Crush Rush / Shutterstock.com

【10月米雇用統計】トランプに殺されたくないならドル売り! 101~104円想定=ゆきママ

先週の段階では、テーマは「12月利上げ」と信じて疑いませんでしたが、ドル円相場の値動きを見ればお分かりのように、もはやほとんどすっ飛んでしまいました!用意していた原稿を一から書き直し、直前情報を含めて改めて今夜の戦略を考えさせていただきましたので、ぜひお読みいただけると幸いです。(『ゆきママのブログでは書けないFXレポート(無料板)』『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

想定レートは1ドル=101~104円。ドルショート・戻り売りに分あり

今回の雇用統計における3つのポイント

単純な数字の良し悪しで相場が動くとは限らないのが雇用統計の難しさですが、今回は特にその傾向が強そうです。なので、まずは現在の状況と今回想定される値動き傾向について、以下に3つのポイントをまとめさせていただきます。

1. 最大のテーマは大統領選挙

市場の最大の注目ポイントは、11月8日に投開票が行われる米国の大統領選挙になってしまいました。ご存知のように、FBIによるクリントン候補への捜査が再開されたことが痛手となり、トランプ候補が急速に巻き返しているからです。いわゆるトランプ・リスクが高まりつつあることが原因です。

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もっとも、11月3日時点のリサーチ会社の分析などによると、ほとんどが70%以上の確率でクリントン候補が勝利するとされてはいるんですけどね。ただ、先週末の捜査再開報道までは、クリントン候補の勝率は95%を超えるといった見方で動いてきただけに、市場もリスクを織り込まざるを得ず、ドル売りに傾いているのが現状となります。

ちなみに、バークレイズのストラテジストの推計によると、トランプ大統領誕生なら米国の株式市場は11~13%も下がるとされています。仮にこれだけ株価が下がるなら、株式市場の混乱を重く見て12月利上げが先送りされても不思議はありません。というか、むしろ利上げ先送りになる可能性が大です。

NYダウなら2,000ドル近く下がるわけですからね。とすると、大統領選挙の方がよっぽど重要な意味を持つわけで、今回の雇用統計は値動き材料になりにくいかもしれません。

2. ドル買いはかなり難しい

また、12月利上げ動向に目を向けると、Fedウォッチ(金利先物市場から想定される利上げの確率)から、ほぼ70%となっています。これが、90%を優に超えるレベルで織り込まれるようになれば話は違ってきますが、それは非農業部門雇用者数はもちろん、賃金上昇率なども予想を大きく上回る良好な数字が並ばなければ難しいでしょう。

最新のFedウォッチは12月利上げを71.5%としています。

とはいえ、非農業部門雇用者数が+30万人近い、あるいは超えてくるようだと、労働市場の緩み(スラック)を意味することにもつながりますから、良好過ぎる結果はかえって疑念を生み、ネガティブに捉えられる可能性が高そうです。

したがって、利上げ確率90%を超えるような雇用統計の数字は、実質存在しないといっても過言ではないため、今回の雇用統計が極端なドル買いを促す要因となることは、かなり難しいと考えています。

Next: 10月雇用統計でドル売り進行の可能性は十分。トランプ・ショックに備えよ



「トランプ・ショック」に備える意味でも、ドルは売りやすい環境にある

3. 10月雇用統計がドル売り要因になる可能性は十分

しかしながら、大幅なドル売り要因となる可能性は十分ありそうです。雇用者数や賃金上昇率がマイナスを記録するのであれば、12月利上げが大幅に後退することにもつながりますし、トランプ大統領誕生という、トランプ・ショックに備える意味でもドルは売りやすい環境下にあります。

しかも、トランプ候補は米国経済が停滞した原因として、クリントン候補とオバマ大統領、そして政治的な影響を受けたFRBが適切な政策を怠り、雇用を創出してこなかったからと批判し続けていますから、雇用統計の弱い数字が追い風となることも想定されます。

というわけで、雇用統計の下振れによって、70%以上という利上げ確率は大きく下げる余地があること、トランプ候補へのアシストになるということから、大幅なドル売り要因になり得るということは覚えておきましょう。

現状についてはこんなところでしょうか。週明けの大統領選挙が予定されていることから、基本的には売りにも買いにもポジションをとりにくい状況ですが、ドル高よりはドル安の方を重く見ておきたいといったところです。

先行指標は弱めだが、ハードルはそこそこ高め

それでは、先行指標や事前予想値、注意すべきポイントなどについて解説していきましょう。まずは先行指標からとなります。

先行指標の結果(数値はいずれも速報値)

全体的に良くないですね。極端に悪い数字もないので、過度に不安視する必要はないとは思いますが、やはり相関の高いとされるADP雇用報告は弱めですから、期待もできなさそうです。

そして、事前予想値については、非農業部門雇用者数が+17.5万人、失業率が4.9%、賃金上昇率が前月比で+0.3%と、そこそこ強めな数字が並んでいます。

ここ最近のADP雇用報告の軟調傾向から、普通に考えれば完全雇用が近そうなので、どちらかといえば非農業部門雇用者数は予想を下回る可能性の方が高いでしょう。

初動としては如何にもドル売りで反応しそうな気がしますが、賃金がしっかり上昇していれば、完全雇用に近づいているとポジティブに受け取られることになりますから、+10万人を大幅に割り込む、あるいはマイナスになるといった極端に弱い数字でもなければ、飛びつかないように注意です。

Next: ショート(売り)中心に組み立てたい。想定レートは1ドル=101.00~104.00円



戦略はショート!想定レートは1ドル=101.00~104.00円

繰り返しになりますが、大統領選挙の方が大きな影響力を持つイベントになっており、来週11月8日に控えていますから、よほど事前予想値から乖離がなければ、初動はともかくとして、結局は発表直前の水準程度に落ち着くことになるでしょう。

そして、本稿執筆時点(4日午前10:40)の1ドル=102.89円というレートから、今回の雇用統計は概ね1ドル=101.00~104.00円を想定しています。かなり強い、またはかなり弱い結果となったとしても、この範囲には収まると考えています。

ただし、冒頭で書いてきた大統領選挙の見通しに大きな変化があったと報じられた場合は、この限りではありませんので、ご注意いただければと思います。特にトランプ候補がさらに巻き返していると報じられた際は、最悪100.00円ぐらいまで下値を見ておきたいところです。

気になるトレード戦略は、ショート(売り)中心に組み立てたいですね。現在の市場が置かれている状況や、先行指標の結果を考慮すると、短期的なトレードで買いから入るのは厳しいでしょう。非農業部門雇用者数が+20~25万人かつ、賃金上昇率が+0.4~0.6%といった数字でも出てこない限りは、上昇したとしても積極的に戻り売りを狙いたいです。

より具体的に戦略をまとめると、値幅が限られそうなので、利食いは細かめに20~50pips程度でチマチマと。上昇パターンでは、104.00円近辺にレジスタンス(抵抗線)として、21日移動平均線や一目均衡表の転換線がありますから、ここをしっかり上回るなら損切りして撤退でしょう。

大体こんなところで。最後になりますが、悲しいことに雇用統計よりも大統領選挙の動向の方が注目されていますから、選挙関連の報道にも警戒しながらトレードすることを忘れずに!

「ジブリの日」のアノマリーも

ちなみに、今日は「金曜ロードShow!」でジブリ作品(今日は『となりのトトロ』)が放映されるジブリの日ということで、最近は不発気味ですが、「呪い」(雇用統計とジブリ作品放映が重なると株などが暴落する)の発動にも念のため警戒しておきましょう(笑)。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2016年11月4日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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