トランプ大統領が誕生すれば、世界は途方もない混迷の時代を迎えることになる。米国のみならず世界中の株式市場が暴落し、為替市場でも米ドルが売られて円高になるだろう。(岩崎博充の「財政破綻時代の資産防衛法」)
※本記事は、『岩崎博充の「財政破綻時代の資産防衛法」』2016年11月3日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
「トランプ・ショック」は、今世紀最大のブラックスワンになるか?
米国の基本スタンスが崩壊へ
トランプ米大統領が現実味を帯びてきた。
万一、トランプ大統領が誕生すれば、世界は途方もない混迷の時代を迎えることになる。米国のみならず世界中の株式市場は暴落するだろうし、為替市場でも米ドルが売られて、円高になることが予想される。
とりわけ、トランプが“公約”に掲げてきた在日米軍や在韓米軍、欧州の軍隊などは、そっくり撤退する可能性だってある。フィリピンのドゥテルテ大統領のように、中国と接近するシナリオもあるだろう。
トランプ大統領の政策ポリシーは、米国の繁栄を最優先するものであり、これまでの米国のスタンスを象徴してきた「世界の警察」や「民主主義を世界に浸透させる新保守主義(ネオコン)」といった新自由主義路線からは、大きく方向転換することになる。
言い換えれば、これまでのような「ウォールストリート」が支配してきた価値観は大きく転換をする可能性がある。大きく拡大した「格差社会」が是正される可能性があるかもしれないが、その一方でいびつな経済になりかねない。
とりわけ、問題なのはその政治的手法だ。ポピュリズム(大衆迎合主義)やファシズムを連想させる手法であり、移民や国防の問題では大きな転換があるかもしれない。
最悪のシナリオでは、日本や韓国、欧州といった米軍が駐留している地域では、米軍が撤退して独自の防衛ラインを築く必要が出てくる。
トランプ氏は、共和党の候補だからネオコンやウォールストリートの嫌がる政策はしないだろう、と思うのは早計だ。ポピュリズムによって誕生した政権は、独自路線を歩み、これまでとは異なる政策を打ち出してくることが多い。
ありえないことが起こることを金融市場では「ブラックスワン」というが、トランプ大統領の誕生はひょっとしたら、今世紀最大のブラックスワンになる可能性がある。
Next: ドル安を強制演出。地政学リスクよりも怖い「第2のプラザ合意」とは?
怖いのは地政学リスクよりも意図的な「ドル安」
トランプは、日本や韓国と締結している「安全保障」の再交渉もしくは破棄を訴えている。
日本に駐留する約5万人の在日米軍、及び2万8000人の韓国米軍を引き上げるようなことになれば、日韓共に現在「半額」負担している米軍駐留費を全額自己負担する必要がある。
日本は20億ドル(2100億円)、韓国は9億ドルの負担だが、単純に2倍にすればいいというものでもない。当然、米軍は武器は持って帰るだろうし、現在の米軍のレベルの武器装備や人員を揃えるには相当の時間とコストがかかる。
安倍政権がやっているような「中国敵対政策」では、すぐに限界が見えるはずだ。日本が中国と単独で戦争しても、勝てる可能性は太平洋戦争よりも低いかもしれない。そもそも資源をほとんど持たない日本にとって、戦争という選択肢はありえない。
トランプ氏の最大の目的は「お金儲け」だから、米国が攻撃されるようなリスクは犯さないはずだ。トランプ大統領による地政学リスクはむしろ少ないとみるべきだろう。
むしろ、これまでの市場原理を重視するという姿勢から転換する可能性のほうが高い。共和党が重視する「小さな政府」もどうなるのか不透明だ。共和党の重鎮は、今回揃ってトランプ支持を避けた。そういう意味では、共和党政権のスタンスを守る必要もなく、たとえば米国の不動産市場を活性化させるためなら、意図的に景気を良くする政策を平気で取りそうだ。
FRBが進めている利上げは、不動産市場にはマイナス要因になる。安倍首相がやったように中央銀行に様々な圧力をかけて、意図的にバブルを作ってしまう可能性もある。
FRBが利上げをすると、当然米ドルが買われる。ドル高になれば、米国の景気は成長率がかげり、不動産価格も下落する。
経済運営に素人同然のトランプ大統領なら、プラザ合意のような形でG7(7カ国首脳会議)を招集して、強制的なドル安を演出してしまうかもしれない。
Next: トランプ当選でも東京株式市場への影響は限定的? ただし…
「ドル安、資源高」の時代が再び?
問題は日本への影響だが、一時的に株は下がるかもしれないが、中央銀行である日銀やGPIFなどの公的資金「クジラ」がいる限り、そう大きくは下がらないかもしれない。
ただし怖いのはやはり「ドル安円高」だ。しかも、米国大統領の任期は4年ある。4年の間、日本経済は再び円高リスクにさらされ続けることになり、デフレが続く可能性もある。
こんな状況で、個人投資家は自分の資産をどう守ればいいのか。そもそも、どの程度のボラティリティ(変動幅)を覚悟すればいいのかだが、“クリントン大統領”と異なり、トランプ大統領では金融マーケットにも、どんどん介入してくる可能性がある。
1.株式市場、2.為替市場、3.コモディティ、4.金価格、それぞれの分野での対応方法を考えてみよう。
1.株式市場
株価の下落は避けられないが、一時的なものと言える。むしろトランプ大統領の誕生でFRBが――
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※本記事は、『岩崎博充の「財政破綻時代の資産防衛法」』2016年11月3日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
『岩崎博充の「財政破綻時代の資産防衛法」』(2016年11月3日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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財政赤字1054兆円の日本に暮らす国民にとって、自分の資産をどう守ればいいのか。コラムや単行本で書けなかった幅広い分野(メディア、業界、政府対応など)に視野に広げ、ニュースや統計の分析などを通して、役立つ情報を提供する。