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「スローなインベストメントにしてくれ」ファンドマネージャーの独り言=山本潤

トランプがどうの為替がどうのと、ファンドマネージャーの仕事には何かと雑音が多いもの。だからこそわたしはスロー・インベストメントを心がけています。(『億の近道』山本潤)

トランプの思いつきで世の中は変わらない。スロー投資のススメ

わたしが考える「スローなインベストメント」

ファンドマネジャーの1日は早朝から始まる。トランプがどうのこうのという情報。為替や債券市場がどうのこうのという雑音。はたまた、いい銘柄ありませんか? と証券会社や周りのアナリストたちに聞き回る。ニューヨークダウは上がったのか下がったのか、何が上がったのかなどをチェックしたりする。

けれども、わたしは思うんですよ。トランプが何をしようとしてもね、人はやりたいと思うことは熱心にやりますが、やりたくないことについては「やったふり」をするだけ。

つまり、人にやりたくないことを強要しても、成果は期待できないんじゃないかなーって思います。

トランプが何を言っても、企業は米国で雇用を増やすようなことをしません。なぜならば、企業がやりたくないから。米国での雇用に経済合理性がないからです。

人件費が高いところで雇用を増やせば競争に負けてしまうという、極めて明確な理由です。

だから、トランプがどうのこうのということを考える必要は、長期投資の場合、まったくない。為替やニューヨークについて考えるのは、時間の無駄

じゃあ、スロー・インベストメントとは、何も考えない投資? 間抜けな投資? という疑問がわくと思います。いえいえ、そうではありません。

スロー・インベストメントとは、日々の喧騒に惑わされない投資です。惑わされないから、株の本質を見極める。ノイズを除去することによって、実は、思考時間が生まれる。じっくりと考える投資なのです。結果的に、とっても大きなキャピタル・ゲインを狙う、長期の成長株投資のことです。「とっても大きい」っていうのは、数十%という値上がりではなくて、数倍とか数十倍以上を狙う投資のことです。

ノイズ(日々の情報)を無視しろ

もしあなたが、毎日、ニューヨークダウが気になっているとしたら、それはせいぜい、たったの1~2%の値動きのこと。たった1~2%のことに、人生の大事な時間を毎日費やすことになります(40年間毎日費やしたら、どれだけの時間が「無駄」になりますか?)。

上がったり、下がったり。上がったり、下がったり。毎日それをランダムに繰り返していくのでしょうが、その1~2%の動きはノイズです。大きなキャピタルゲインを狙うスローな投資家にとっては、ノイズは本質を惑わす敵にほかならないのです。

スロー・インベストメントにおいては、ノイズ(日々の情報)は無視しなければならない。無価値なノイズに価値のある人生の時間をかけるな。日々や月次だけでありません。四半期決算の情報なども、残念ながら(というよりは、当然のことですが)、ほとんどがノイズの部類に入ります。

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あらためて問う、株式の本質とは?

株の本質は「何が成長するかを考える」ことです。少なくとも考えようとすること。考える姿勢を見せることです。

さすがに当てろとはいわない。人は神様ではないので。当たりません。当たらなくていいのです。

世の中のことを考える。じっくりと考える。ある製品のことを考える。ゆっくり考える。成長する製品とそうではない製品との区別ぐらいはつきますよ。

成長か否かを区別できれば、何通りかの予想をすればよい。ひとつだけの予想ではなくて。何通りか予想をする

わたしたち投資のプロは、それをリスク・プレミアムという連続複利の数字に直してバリュエーションを算定します。リスク・プレミアムを設定すれば、それは無数のシナリオを考えたことと同じですから。

ちょっと専門的ですか? でも、こんなこと大したことじゃないので、へー、そんなものか、と流してね。

数十年後をざっくりと見る

成長率を推定して、その成長率が達成できないリスクも同時に推定する。これでバリュー算定は終わりです。シナリオを現在価値に直せるからです。

スローな投資家は、数十年後も存在するに違いないサービスや製品について、深く、本質的でも、「ざっくり」と世の中を見る。

まったくビジネス・スクールの教科書通りですよ。競合が厳しいかどうか。基本特許や変動費率が低いとか、いろいろな状況証拠から成長力を判断しますね。

また、すべての製品やサービスを分析する必要はないんですよ。成長するのではないか?という期待が持てるものだけを、ざっくりと調べる。それがスローな投資家です。

調べることそれ自体が楽しい方々も多いですしね(アナリストたちは調べることが好きなんですよ。株を当てることよりも。困った人々だ)。

調べることで、世の中のことが深く理解できるようになりますしね(アナリストは商売も上手いですよ。いろいろな事例を見ているから)。

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良いことづくめの「スローなインベストメント」で行こう!

スローインベストメントには、欠点はなく、利点しかない。それって断定? 断定ってよくないじゃん、と言われる方もいると思います。ええ。よくない。

それでも、断定したい。わたしは、スローインベストメントには利点しかないと思っています。

まず、社会のことが見えるようになる。人間について考えるようになる。製品や商品についてくわしくなる。賢く生活できるようになる。金融リテラシーが身につく。それによって、一生で億単位のお金を合理的に儲けられるようになる。経済的な自由が得られる。あとは、アートっぽい感性が磨かれますよ。直感とか、感性というわけのわからないものが身につく。

日々の情報での売り買いも否定しません。ノイズ(振動)を利用して、うまく稼いでいる人々はそれはそれでよいと思います。こちらの生き方は、マーケットを見るのが好きという方にはオススメなんです。ただし、大型成熟株でやるべきなんですがね。

わたしがスローインベストメントをオススメするのは、仕事を持っている人々や日々の株価やノイズにはあまり興味がない人々。でも、数年で資産を倍増したいと考えている人々。そんな人々には、スロー・インベストメントがオススメです。

短期投資はビジネスとしては最低、ギャンブルとしては最高

儲かればどちらも同じという意見もあります。否定しません。

だからといって、やみくもに回転売買のデイトレードを行い、トータルで損をしている人々の方が多いのではないでしょうか。

振動やノイズは運の要素が多いので、運が悪い人はあまり儲かりません。それは、考えればすぐにわかることです。

なぜならば、短期トレードをビジネスとしてみた場合、変動費率は100%以上。普通に考えたら、短期トレードはやってはいけないビジネスです。でも、ギャンブルとしてみれば、FXと並んで一番マシなギャンブルです。テラ銭が安いのが株のいいところです。競馬よりはマシです。パチンコよりもマシです。

短期投資はビジネスとしては最低、ギャンブルとしては最高ということです。

一方、スロー・インベストメントは、数億円の価値のある幸福な人生への自己成長なんだと言えるでしょう。

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億の近道』(2017年7月13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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