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【現地レポ】韓国と北朝鮮を分断する軍事境界線で今、起こっていること=蟹瀬誠一

北朝鮮を巡って世界的な緊張が高まるなか、米国で融和策が検討されていることを知る人は少ない。北朝鮮を核保有国と認めた上で関係正常化を行うシナリオだ。(『蟹瀬誠一の「ニュースを笑え」』蟹瀬誠一)

※本記事は有料メルマガ『蟹瀬誠一の「ニュースを笑え」』2017年8月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:蟹瀬誠一(かにせ せいいち)
1974年上智大学卒。米AP通信社記者、仏AFP通信社記者、米TIME誌特派員を経て、91年にTBS『報道特集』キャスターとして日本のテレビ報道界に転身。その後テレビ朝日『ザ・ニュースキャスター』『スーパーJチャンネル』『スーパーモーニング』、テレビ東京『マネーの羅針盤』のメインキャスターを務めた。現在は『賢者の選択 Leaders』(日経CNBCなど)のメインキャスターを務めるかたわら、明治大学国際日本学部教授として教鞭をとっている。

「日本と韓国それぞれの危機感を足して2で割ったぐらいが適当」

非武装地帯の今

北朝鮮ミサイル危機が深刻化する中、朝鮮半島を分断する軍事境界線の非武装中立地帯(DMZ)を久々に訪れた。肉眼でも北側がはっきりと見える。

近くにはソウルまでわずか50キロ程の所で発見された地下トンネルもある。1970年代に北朝鮮が奇襲攻撃のために掘ったものだ。現在4本のトンネルが確認されているが、一番大きくて知られているのは全長1,635メートル、幅2メートル、高さ2メートルの第3トンネル。北朝鮮の完全武装した兵士3万人が1時間以内に移動できる規模だ。当時の北朝鮮の南進欲の強さが感じられるトンネルである。

「命がけの非武装地帯潜入」とか大げさに体験談を書いたブログなどが散見されるが、実際の現地は誰でも予約すれば行ける人気ナンバーワンの観光スポットである。多数の観光客が記念写真を撮り、嬉々として土産物を物色しているのだ。時々刻々ミサイル危機を伝えるニュースとは対照的な光景である。

このギャップをどう理解すればいいのか。

危機感の相違

たぶん日本と韓国で感じる危機感を足して2で割ったぐらいが適当でしょう」そう話してくれたのは韓国有力紙『東亜日報』元編集局長シン・キュソン氏。つまり日本ではメディアが過剰な危機感を煽っている一方で、韓国の人々はこうした状況に慣れ過ぎているという意味だ。

とはいえ今回は傍若無人なトランプと金正恩という“予測不可能”な2人のリーダーが角を突き合わせている。世界的に緊張感が高まるのは無理もない。威嚇の応酬は人類の滅亡を暗示するスタンリー・キューブリック監督の核戦争映画『博士の異常な愛情』(1964年)のようだという声さえ米国内で出始めているという。

知られざる融和策シナリオ

しかしその裏で融和策シナリオが米国で検討されていることを知る人は少ない。北朝鮮の核弾頭小型化と大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発阻止はもはや手遅れだから、米国は北朝鮮を核保有国と認めた上で両国の関係を正常化して危機を回避するというオプションだ。にわかに信じがたいかもしれないが、ありえない選択肢ではない。

元々は1970年代にヘンリー・キッシンジャー米国家安全保障担当補佐官が2つの対立する勢力による韓国と北朝鮮の「相互承認」を提案したのが始まりだった。一方がソ連と中国、もう一方が米国と日本である。もしこの提案に沿って米国が北朝鮮との関係を正常化していれば、北が核開発をすることはなかっただろう。だが当時の政治的状況から提案は見送られ、北朝鮮は国家の存亡を賭けて核兵器開発に邁進するようになったのである。その結果が今の北朝鮮ミサイル危機だ。

Next: 金正恩にもトランプにも、核戦争を始める度胸はない



核攻撃はない

金正恩政権もトランプ大統領も今のところは強硬な姿勢を崩していないが、国家の滅亡に繋がる核戦争を始める“度胸”は双方ともあるまい。実際、トランプは金正恩との直接対話の可能性を否定していないし、それは北朝鮮が切望していることでもある。恐れから状況判断を誤ってはならない。
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蟹瀬誠一の「ニュースを笑え」』(2017年8月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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国際ジャーナリスト蟹瀬誠一が、海外メディアの視点から日々のニュースを切り、テレビ番組では口が裂けても言えない本音を書いていきます。

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