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日本経済の「失われた30年」を取り戻す、たった1つの復活のカギ=児島康孝

世界中の一定規模以上の国を見ると、日本だけが長年、GDPの縮小・横ばい傾向を続けています。逆にアメリカ、欧州、途上国などその他の国は、おおむねGDPが拡大しています。この本当の原因は何にあるのでしょうか?実は私は、「今の日本経済はすでに大底をつけている」と見ています。その根拠も含めてご紹介しましょう。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)

世界経済が拡大する中、日本が一人負けした理由と復活の条件

日本はすでに「個人消費・内需型」の国

まず、世界の国々のGDPの推移をみてみましょう。それぞれ、1995年→2000年→2005年→2010年→2014年の順で見てみます(名目GDP、米ドル、単位100億ドル、総務省HPより)。

日本
534→473→457→551→460

アメリカ
766→1028→1309→1496→1734

中国
73→120→229→600→1043

これをみますと、1990年代までの日本のパワーを感じますね。日本がアメリカに迫っていて、中国とは大差です。

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しかしその後はというと…アメリカは2.5倍近くへ。中国は10倍以上のGDP拡大。2014年のデータで、日本はアメリカの3分の1以下、中国の半分以下というのが事実です。中国が対日で強気なわけです。GDPが中国の半分の国=日本、とみているわけです。

ただ、アメリカや中国は人口も増えているので、日本とは状況が違うのでは?という見方もあるかと思います。では、欧州のGDP推移をみましょう。

イギリス
123→155→241→240→298

ドイツ
259→194→286→341→386

フランス
160→136→220→264→282

イタリア
117→114→185→212→214

やはり、1.5倍から2倍以上になっています。そんなに日本人より生産性が高くてすごく働いてる感じはないのですが…。ちなみに北欧諸国は国は小さいですが、

ノルウェー
15→17→30→42→50

フィンランド
13→12→20→24→27

やはり、GDPは2倍以上になっています。さらにシンガポールは、

シンガポール
8→9→12→23→30

やはり、3倍以上。新興国のインドやブラジルは、

インド
36→45→82→166→205

ブラジル
77→65→89→220→234

GDPは国全体の経済規模ですから、新興国の経済の分野によっては、もっとすごい成長なんでしょう。新興国は別としましても、先進国でも少なくともGDPが1.5倍ぐらい、いい国では2倍にもなっています。

これはどういうことかといいますと…実はすべての国がすごく良い経済政策をやっていた、というわけではないのです。

世界全体の名目GDP(単位100億ドル)が、

3085→3329→4726→6564→7804

こういう推移です。

全体が2倍という状況で、日本だけが下がるとか、横ばいとか、世界中で見ても稀な状況に陥ったわけです。これは、やろうと思ってもそう簡単にできることではありません。それほど簡単にGDPは下がったりしないのですが、この謎を解くカギは、「雇用」にあります。

Next: 「バブル崩壊後と真逆の政策」で日本経済は簡単に上昇する



「雇用」の喪失で個人消費は簡単に落ちる

日本のGDPも、他の先進国などと同じようにしていれば、ここまで経済が落ちることはなかったのです。逆に何もしなくても、世界全体のGDPが上昇しているので、そう簡単には下がらない。

1990年ごろの日本は、すでに輸出主導というよりも内需型に転換していました。内需というのは個人消費です。

日本はアメリカのように、兵器の輸出で大儲けしたり、金融市場を牛耳ったり、ということはありません。ですから、個人消費の重要性はアメリカ以上というわけです。

ところが1990年以降の日本では、リストラ非正規雇用化を推進し、それまでの雇用が次々と失われました。

欧米的改革」を誤って実施したわけです。雇用が失われれば、収入がありません。個人消費は氷河期に陥ります。

このとき、雇用を残して給与削減をすれば、今のようにはなっていないでしょう。しかし人員削減が行われたので、下げた給与を戻すように簡単にはいきません。

そして内需型に転換していた日本経済は、雇用喪失で一挙に恐慌化したというわけです。これは欧米勢に仕掛けられたというか、弱点を突かれたわけです。1990年ごろの日本はアメリカのGDPに迫る勢いでしたから、欧米諸国には脅威であったでしょう。

日銀が主張する「完全雇用」のウソ

日銀は最近、日本は「完全雇用」に近いと主張していますが、現在はまったくそのような状況ではありません。雇用が良ければ、ブラック企業やブラックバイトをする人はいないです。すぐに他の良い仕事や、バイトに移っていくからです。

それが他に移れないので、ブラック企業は存在できるというわけです。

ですから、当時と逆のことをする=雇用を増やす政策や低所得者への給付を行えば、簡単に日本経済は復活するはずです。

世界の多くの国が経済成長しているわけですから、日本の問題が生産性の問題とは言えません。海外の国を訪問すればよく目にするように、日本よりテキトーな国はいくらでもあるのです。

そういう国でも経済成長しているわけですから、これまでと逆の、雇用を増加させる政策で、すぐにデフレと逆の動きが生じるでしょう。1990年以降のリストラ・緊縮政策と逆のことをすれば、簡単に日本経済は上昇すると考えられるのです。

Next: 意外!? 2025年の日本は「空前の好景気」を謳歌しているかもしれない



「コンドラチェフの波」で考える

コンドラチェフサイクル」という考え方をご存じでしょうか。これは100年ほど前のロシアの経済学者ニコライ・コンドラチェフ(1892-1938)が提唱したものです。西側・資本主義国の景気の超長期サイクルを分析したもので、長期波動の理論は多くの支持を集めています。

コンドラチェフ氏は、1917年のロシア革命のあと政権の要職も務め、ソビエト政権でも経済学者として活躍。しかし集団農場への批判などで、スターリンの粛清の対象となり銃殺。旧ソ連の悲劇の経済学者です。

それによると、50年~70年におよぶ経済サイクルの前半部分(30年間ぐらい)は好況。サイクル後半部分(30年間ぐらい)は不況とされています。

サイクルの見方は様々

このコンドラチェフサイクルですが、経済恐慌の周期などにぴったりあてはまります。このため、欧米の投資関係者の間でも信奉者は多いです。

一方で、1つのサイクルの起点や終点を何年と見るかは、識者の間でも見解が異なります。このため本によって、期間やサイクルのあてはめ方が違ったりする、ということです。あの本ではこう書いているけど、こっちはこうだった、という感じです。

ですから、きっちり何年と決めるよりも、社会情勢などを勘案して「時間の帯」で考える方がよいかと思います。

2016年はどの位置?

2016年を考えるうえで問題になるのは、まず起点をどこにするかです。1929年のNYウォール街の大暴落と世界大恐慌。1939年~1945年の第二次世界大戦。この頃は明らかに「」ですね。

そして日本の神武景気は、1954年末(昭和29年)~1957年(昭和32年)。岩戸景気は1958年(昭和33年)~1961年(昭和36年)。いざなぎ景気は1965年(昭和40年)~1970年(昭和45年)。このうち神武景気は、白黒テレビ・電気洗濯機・電気冷蔵庫が「三種の神器」といわれた空前の好景気。神武景気と岩戸景気の間には「なべ底不況」がありますが長さは短いです。ですから、この景気の良い時期は、コンドラチェフサイクルは上昇しています。

こうした変化を見ますと、実体経済の上向きの起点は1945年~1950年前後が妥当となります。場合によっては、1935年~1940年ごろに既にサイクルは底を打っていた、という見方もできます。

そして日本のバブル崩壊が1990年。神武景気から見ますとやはり、いい時期は30年余り、で終わりました。

バブル崩壊後は良くなかったですね。金融危機、デフレ不況、リーマンショック。それでようやく現在は、戦後70年あまりですから、やっと1周まわった、という頃合いです。

1945年から計算しますと…

1945+60=2005
1945+70=2015

サイクル70年説をとれば、2015年が転換点です。そして景気は良くなり、10年後には神武景気のように、いわゆる国が始まって以来の空前の好景気が起きている、との予想がなりたちます。

アベノミクスでの日経平均株価2万円の恩恵は、生活実感としては全く感じられませんが、経済の先行指標かもしれないわけです。

今は1945年と同じで国民生活は苦境にあるのですが、これから2050年ごろまでは、日本の景気は、非常に良くなることを示しています。ちょっと信じにくいですが、これまでの恐慌状態の逆、ですね。

転換期には産業革命が起きる

そして、恐慌状態から経済が上昇するときには産業革命が起きます。めざましい発展が起きるわけです。AI(人工知能)なのか水素なのか、何かが飛躍するわけです。

前回の産業革命はコンピュータ革命といわれています。最近の日本は貧困化を背景に痛ましい事件も相次いでいますが、もう少しで社会が変化するはずです。

サイクルがあと5年先だった、といわれればがっくりきますが、たぶん株価がいったん上昇しているので、転換点は過ぎていると思います。

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ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2016年12月30日,2017年1月4日号)より抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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