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就職も結婚もできない「クレジットスコア超格差社会」に突入する日本=岩田昭男

アメリカでは、クレジットカードの購買履歴だけでなく、各種のローンや公共料金の支払いなどの顧客情報が大手信用情報機関に集められ、そのデータをもとに個人の信用偏差値=クレジットスコアが算出されています。

そして、就職転居結婚などにもこのスコアがかかわるようになり、スコアの善し悪しが生活に大きな影響を与えたり、格差を拡大させたりしています。

トランプの経済政策は保護主義だといわれていますが、アメリカの経済政策が日本に大きな影響を与えることは言うまでもありません。私はそう遠くない将来に、日本でもこのクレジットスコアと同様のシステムが取り入れられるのではないかと考えています。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)

※本記事は、『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』2016年11月15日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:岩田昭男(いわたあきお)
消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。

あなたはプライム? それともサブプライム? スコアは人なり…

アメリカ人を格付けする「信用偏差値」

アメリカ大統領選は、ヒラリー・クリントンがドナルド・トランプに敗れるという衝撃的な結果となりました。

この大番狂わせのもたらす影響については、今後、さまざまなことが論じられると思いますが、ここでは、アメリカの「クレジットスコア」についてお話しようと思います。

クレジットスコアといってもご存じない方が大半だと思いますが、実は、今回のアメリカ大統領選を見ていて、早い時期から私はクレジットスコアという言葉を思い浮かべました。

なぜなら、トランプ、クリントン、サンダースといった候補者たちが、クレジットスコアというものをそれぞれよく反映していたように思えたからです。

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アメリカがクレジット社会であることはみなさんよくご存じだと思います。では、クレジットスコアとはどのようなものでしょうか、簡単に説明しましょう。

日本でクレジットカードをつくる際は、カード会社の審査を通らないといけません。クレジットカード会社は、カードを申し込んだ人の「Capacity:資力」「Character:性格」「Capital:資産」にそれぞれ点数をつけて評価、判断を行っています。

しかし、これらの数字はそれぞれの企業が持つ個人の情報をもとに算出されているため、詳しい計算方法は非公開です。

これに対してアメリカの場合は、クレジットカードの購買履歴だけでなく、各種のローンや公共料金の支払いなどの顧客情報が大手信用情報機関に集められていて、そのデータをもとに個人の「信用偏差値」が算出されます。

この信用偏差値がクレジットスコアで、それを使ってカード会社は審査を行っています。

クレジットカードの利用状況に応じて点数化するシステム

具体的には、過去のカードの使用履歴を精査することによって、返済履歴や借入残高や新規借入の有無、クレジットカードの種類などを点数化しています。

これらの点数を合計すると850点満点になり、点数に応じて以下のようにランク分けされます。

  • 760点以上(プライム層)…ハイクラスのカードを作成可能
  • 660~759点(一般層)…一般的なカードは作成可能
  • 660点未満(サブプライム層)…信用力が劣り、カード作成に不利

このランクのいちばん下のサブプライム層に入ってしまう主な原因は、返済の遅れ、キャッシング支払いの滞納、繰り返し限度額ギリギリまでカードを使用するなど、クレジットカードに対する責任感のないルーズな行動です。

しかし、平均点は680~700点といわれ、比較的高い水準を保っており、常識的な範囲でカードを使用していれば、サブプライム層に入る危険性は高くありません。

それにしても、どうやって点数を上げることができるのでしょうか。これは意外と簡単です。クレジットカードを使うときに、ちょっとした点に注意するとスコアを上げられるといわれています。

たとえば、利用額を限度額の20~50%に抑えて、毎月必ず使い続けること、カードの所持数を2~3枚にして万遍なく使うこと、カードを1つ作ったら6カ月間は新しいカードを作らないことなどです。

要は、自分の経済力と金銭管理能力の両方をバランスよくアピールするということです。

日本人の感覚では、「クレジットスコアの点数を上げるためにはカードを使わなければいいのでは」と思うかもしれません。「カードを使うから返済の延滞が生じたりするのだから、使わなければそんなことを心配する必要もない」と。

しかし、アメリカではカードを使わないことがいちばんよくないのです。カードは毎月、確実に使わないといけない。ただし、使い方が問題で、返済が滞るほど高額なものを買い過ぎたり、突然カードを使わなくなったりするとマイナスとして査定されます。

つまりクレジットスコアは、金融資産や収入の多寡を見るのではなく、借りたお金をきちんと返しているかという返済能力を見るのです。これが重要なポイントです。

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