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「レバ上限10倍」という改悪。2018年、投資家はFX取引から撤退する=長谷川雅一

金融庁が、FX取引のレバレッジを現行の25倍から10倍に下げることを検討しています。そんなことをされたら、FX取引をやめるトレーダーが続出するでしょう。(『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2017年9月28日号より)

プロフィール:長谷川雅一(はせがわ まさかず)
1959年、岐阜県生まれ。株式会社プレコオンライン(金融商品取引業)代表取締役社長。2000年より株式投資の研究を始め、日本で初めて「株の自動売買」という言葉を使った著書を出版。株式投資の世界では、「株の自動売買」ブームの火付け役として知られている。現在は、自動売買ソフトの開発、投資教室、メルマガの執筆など、多忙な日々を送っている。

金融庁はFXを殺す気か? レバレッジ引き下げが逆効果になるワケ

FXのレバレッジが10倍に?

日経新聞によれば、「金融庁が、FX取引のレバレッジを、現行の25倍から10倍に下げることを検討している」とのことです。なんでも、「相場急変時の投資家の損失を防ぐため」だそうで、早ければ来年(2018年)にも「内閣府令」を改正して実施するのだとか。

おいおい!ちょっと待ってくれよ!そんなことされたら、FX市場が死んじゃうよ。FX市場から、トレーダーがいなくなっちゃうよ!…というのが、僕の率直な感想です。

日経225先物だって、レバレッジは最高で25倍。FXだけ「目の敵」にするがごとく「10倍に落とす」というのは、ちょっと納得が行きません

レバレッジが下がれば、破産リスクはむしろ増す

実際にトレードをやっている者の「現場の感覚」で言えば、「FX取引のレバレッジが下がれば、かえって破産リスクが増すのではないか?」と思います。

たとえば、現在、米ドル/円を10,000通貨買うのに必要な証拠金は、1ドル=100円として、4万円です。FXの取引口座に20万円の現金があった場合、米ドルを10,000通貨買うと、証拠金で4万円が使われて、残りは16万円となります。

10,000通貨のトレードの場合、米ドル/円が1円下がれば、1万円の損失になりますので、口座に現金が16万円残っていれば、単純計算(強制決済などのルールは度外視)で、16円までの下落に耐えられることになります。

しかし、レバレッジが10倍になると、10,000通貨買うのに10万円の証拠金が必要になり、残金は10万円となりますから、10円の下落にしか耐えられなくなり、相場の急落があったとき、早い段階で破産してしまうことになります。

要するに、同じ資金で、同じ規模のトレードを続けた場合、レバレッジが下がると「破産リスク」が増すわけです。

レバレッジを下げても「投資家保護」にはならない

前述のように、レバレッジの低下により、逆行時(評価損発生時)の耐性が弱くなります。FX投資家は、これに対応するために、より多くの資金をリスクにさらす(FX口座に入金する)必要に迫られます。

つまり、レバレッジを下げることは、かえってリスクの増大につながるとも言えるわけです。

僕は、レバレッジを下げても「投資家保護」にはならないと思います。投資家が不利になるだけです。

Next: 投資家はバカじゃない。どうせ「抜け道」が用意されるだけだ



「抜け道」が用意される?

現在、FX取引の最高レバレッジは25倍とされていますが、これは正確な情報とは言えません。なぜなら、FXの「法人取引」なら「レバレッジ100倍」程度まで認められているからです。

また、海外のFX口座を利用すれば「レバレッジ400倍」といった取引も可能です。ただし、海外のFX口座を利用した場合、「出金できない」といったトラブルが多いのも事実です。

今後、金融庁が「レバレッジ10倍」を実施しても、どこかに何らかの「抜け道」が用意される可能性も高く、その意味でも、規制が狙い通りの効果を発揮するかどうかは、わかりません。

また、投資家が「ハイレバレッジ」を求めて、よりリスキーな行動を取る恐れもあると思われます。

投資家の投資意欲が低下する

レバレッジが25倍から10倍に下がれば、FXトレードの魅力である「スワップ金利」の「利率」も、2.5分の1に下がります。これは、投資家の投資意欲を大きく減退させます。

たとえば、現在、約4万円で米ドル/円を10,000通貨買った場合、国内のある証券会社では、1日に約50円のスワップ金利が付きます。年間(365日)では18,250円。年利46.25%相当となります。

しかし、レバレッジ10倍となれば、10万円に対して18,250円の年利ですから、利率は18.25%に下がってしまいます。

もともとFX取引には大きなリスクがあります。この程度の利率になってしまえば、リスクを取ってまで、スワップ金利を狙う意欲がなくなります

もしも「レバレッジ10倍」となれば、「店じまい」して、FX取引をやめるトレーダーが続出するでしょう。

投資家はバカじゃない

金融庁は「投資家保護」のために、いろいろなルールを策定するお仕事をされているわけですが、「投資家保護」をお考えなら、「FXはハイレバレッジで危険だから、投資金額を抑えなさい」と、繰り返し忠告していただければ、それで十分だと思います。

金融庁の「投資家保護」は、時に「行きすぎる」ことがあるように思います。つまり、「投資をやめなさい」と言われているように感じることがあるわけです。

投資家はバカじゃありません。「FXはハイレバレッジだから危ない」ということは十分承知の上で、リスクを調整しながらトレードしています。

また、個人投資家の為替取引は、為替市場の流動性の向上に大きく寄与しているはずです。

Next: 目的は「投資家保護」か「締め出し」か。10倍に下がったらやめるでしょ…



「投資家保護」か「締め出し」か

かつて、FX取引のレバレッジが数百倍まで認められていた時期がありました。さすがに、数百倍はちょっと「高すぎる」と思いますが、レバレッジ10倍となったら逆に「低すぎ」です。これを実行したら、「FX投資家を減らす」効果は「てきめん」でしょう。

金融庁がレバレッジを下げる目的が、「FX投資は危ないから、できるだけやらない方がいい。市場から投資家を締め出して為替取引を不活発にしよう」というものであれば、それは狙い通りの効果を発揮するでしょう。

しかし、レバレッジを下げることが「投資家保護」につながるかどうかは疑問ですし、むしろ投資家から「投資機会(チャンス)」を奪うことになりかねないと思います。

金融庁にはぜひ、「レバレッジの引き下げ」を、再考していただきたく思います。…いえ、ハッキリ申しましょう。「レバレッジの引き下げ(25倍から10倍へ)は、やめてください!

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10倍になったら、FX取引をやめるかも

僕は「株取引」も「ビットコイン取引」もやっていますが、メインと考えているのは「FX取引」です。他の金融商品と比較検討したとき、最も魅力的だからです。

そのFX取引の魅力の1つである「レバレッジ25倍」が見直され、「レバレッジ10倍」となってしまったら? 「うーん、だったらFX取引やめようかな」と思います。皆様はいかがお考えでしょうか?

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長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2017年9月28日号より一部抜粋
※記事タイトル・太字はMONEY VOICE編集部による

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