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「トランプに捨てられた」安倍首相の危ない片想い~日米2つの破局ルート=斎藤満

今後の日米関係を考えるとき、トランプ氏と安倍総理の認識ギャップはもちろん不安なのですが、それ以上に、安倍政権がラブコールを送るトランプ政権の支持率が40%にすぎない点に注意が必要です。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2017年1月23日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

ただの「すれ違い」ではない、日米同盟を脅かす不安の影とは?

広がるトランプ氏と安倍総理の認識ギャップ

20日のトランプ新大統領の就任式に先立ち、安倍総理は通常国会開会にあたって所信表明を行いました。

そこではトランプ新大統領の米国との関係がますます重要との立場が強調され、実際21日には安倍総理からトランプ大統領の就任に際して祝辞が送られました。

しかし、その祝辞のなかに、今後の日米関係への不安の影が伺えます。

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祝辞の中で総理は、アジア太平洋地域が世界の経済成長の源であると同時に、そこでの安全保障環境が一層厳しくなっている点を強調。そのうえで、自由、民主主義、法の支配という普遍的価値で結ばれた日米同盟の果たす役割を強調、日米同盟こそが日本の外交・安保の基本であり、トランプ大統領と一層この関係を強化したい、と日本の希望を伝えています。

そしてできるだけ早く、またお目にかかって、地域や世界の様々な課題について幅広く意見交換をし、世界に向けて日米同盟の重要性を発信したい、と記しています。これは当初予定していた1月27日の首脳会談の予定が「立ち消え」になっている可能性を示唆しています。

トランプ大統領下での日米関係に不安の影、というのは、この祝辞にも見られる日米、あるいはトランプ氏と安倍総理との認識ギャップが大きく、日本が期待する両者の信頼関係が果たして築けるか、という不安と、もう1つ、支持率が40%にすぎないトランプ政権が、分断された米国の「半分」でしかなく、世界に反トランプの流れができていることです。

揺らぐ日米同盟の「普遍的価値」

まず最初の不安ですが、トランプ氏の認識する自由、民主主義、法の支配は、日本の認識とかなり異なる面があります。

つまり、トランプ氏の世界では、あくまで米国の労働者の立場から見た自由、民主主義であり、そこには世界や日本への意識がほとんど登場しません。法の支配も、世界ルールではなく、米国第一主義に則った法の支配となります。

ですから、米国に不利になるTPPやNAFTAから撤退し、場合によっては世界の貿易規定を定めたWTOをも無視し、国境税をかける動きまで始まっています。

少なくとも、日本が期待する米国のリーダーシップ、世界に向けた統治力に、トランプ氏はほとんど関心がなく、民主主義の意味さえもが問われています。日米同盟が普遍的価値で結ばれているとは見えません。

ここまでの事実を見ても、米国に大規模な投資をし、雇用を約束したソフトバンクの孫社長に対しては「マサはグレート」と持ち上げるものの、メキシコに工場を建設し生産を計画するトヨタには「ノーウエイ」と非難します。

米国に利益をもたらすものは受け入れ、害となりうるものは排斥する「実利」が判断基準で、貿易も勝ち負けが基準で「比較優位論」も通じません。このような基本認識における日米のズレがどんな影響をもたらすのか、大きな不安と言えます。

しかも今後の日米関係には、これに加えてもう1つの大きな問題が立ちはだかっています。

Next: 日本が世界で孤立し「総スカン」を食う最悪シナリオが存在している



「トランプ失脚」で日本孤立も

「トランプの米国」には多くの敵がいますが、そのトランプ政権に「べったり」の日本がトランプ氏と同様の批判を受け、日本が孤立するリスクと、万が一トランプ政権が倒れた場合に、日本が「もう1つの米国」とうまく付き合えるのか、が大きな問題になります。

トランプ氏の支持率は、大統領就任直前で40%、不支持率52%(ギャラップ調査)と、半分以上が反トランプとなっています。

今回の就任式典では、米国の芸能人の多くが、トランプ氏と関われば後々の仕事に支障をきたすとして、出席を拒みました。

民主党議員も60人が出席を拒み、式典の会場後方はガラガラで、反対派がブーイングしたり、無関心で居眠りしたりする人々も見られました。

世界でも何百万人単位の抗議デモが、女性中心になされました。

米国議会においても、新しい閣僚人事について、議会が承認した閣僚はここまで2人に留まり、その下で働く実働部隊は、ほとんど決まっていません。それだけ、行政部門でも反トランプ派の影響力が大きいことが分かります。

二股で総スカン?

大統領選でのロシアの介入をトランプ氏自ら認め、それでもロシアのプーチン大統領を尊敬し、経済制裁を解除しようとの動きに対して、欧州などから批判の声が聞かれます。

日本がそのトランプ氏にべったりで、さらにプーチン大統領にも尻尾を振ることが、日本孤立につながるリスクがあります。

Next: 安倍政権の「統一教会つながり」外交は心もとない



安倍政権の「統一教会つながり」外交は心もとない

トランプ氏に万が一のことがあった際、その大統領権限を継承することになるマイク・ペンス副大統領はエバンジェリカル(キリスト教東方福音派)と言われ、統一教会と近いこともあり、安倍政権との関係は悪くないとも言われますが、異例な政権、世界に多くの敵を作る政権に肩入れし過ぎると、日本も孤立しかねません。

東シナ海での中国の脅威があるとはいえ、トランプ氏の米国に無批判な従順はリスクが大きく、沖縄の基地問題も含め、個別案件ごとに「是々非々」の対応を地道に進め、米国以外に広く「お友達外交」を展開して仲間を増やす必要があります。

米国に倣って台湾に肩入れし過ぎると、日中関係の緊張を高めます。バランス感覚も重要です。
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・矛盾が露呈したトランプの通貨戦略(1/20)
・財政赤字拡大の正当化に「シムズ理論」(1/18)
・トランプ政策の矛盾にマーケット・チャンス(1/16)
・日銀の自信と背中合わせの危機リスク(1/13)
・新年の中国リスク(1/11)
・2017年の日本経済、ここに注目(1/6)
・2017年の世界経済予想(1/4)


※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2017年1月23日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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マンさんの経済あらかると』(2017年1月23日号)より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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