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米軍による北朝鮮攻撃の兆候か? 内外情勢の「不可思議」を結ぶ点と線=斎藤満

平昌五輪に対する米・露の対応や、リニア談合問題の捜査など、このところ「不可思議」な動きが少なくありません。その裏に何が潜んでいるのかを考えます。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2017年12月15日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

目前に迫る朝鮮半島有事。その合図は日本株への売り仕掛けか?

なぜあのプーチンが怒らないのか?

このところ「不可思議」な動きが少なくありません。それらの裏に何が潜んでいるのか、少し頭の体操をしてみるのも無駄ではないと思います。いくつか気になるものをご紹介しましょう。

まずは、国際オリンピック委員会(IOC)が、ロシア選手団のピョンチャン(平昌)・オリンピック参加を認めない決定を下したことに対して、プーチン大統領がなぜか表立った怒りを表明しなかったことです。バッハ会長があえてこのような厳しい判断を下したことも驚きでした。そして、米国もこの時期になってもピョンチャン・オリンピックへの参加を表明していません。

平昌五輪は開催されない可能性がある

これが実は北朝鮮への米国の武力行動と関連している、との見方があります。米国が北の核問題に対して、ティラーソン国務長官の外交交渉による解決ではなく、米軍による空爆など、軍事行動に出るとの見方が強まっています。それでも、暗黙の裡に「2月のピョンチャン・オリンピックを避けて、その後に行う」との了解がありました。

しかし、米国のトランプ大統領はもとより、国際資本と関わりのあるIOCのバッハ会長が強硬判断を下したこともロシアのプーチン大統領の反応も、実は米軍の北朝鮮攻撃によって、「冬季オリンピックどころではない」ことを知っているためではないか、との考えが浮上しています。韓国のムン・ジェイン大統領とトランプ氏の関係が良くないことも、この時期にあえて行動を起こす要因になっていると見られています。

はじめから開催できないオリンピックとわかっていれば、それに参加できないとしても、ロシアに実害はなく、事情を知らない選手は怒っても、政府は涼しい顔ということになります。バッハ会長への批判も限られます。米国がピョンチャンについて何も触れないのもわかります。かつてモスクワ・オリンピックをボイコットして、マラソンの瀬古選手や柔道の山下選手が涙をのんだことを思い出します。今回は日本が金メダルを独占しそうな競技も少なくありません。

2018年1~2月に軍事行動か?

もしそうだとすれば、1月から2月の軍事行動があることになりますが、米国から在韓米軍の家族を退避させるよう議会に提案があったことともつながります。米軍としては、北が反撃できないように、短期集中的に空爆する、とのシナリオのようですが、シナリオ通りにいかずに、北のミサイルが日本に飛んでこないとも限りません

市場は一応このリスクを念頭に入れておくのが良いと思いますが、こうした情報は国際金融資本に近い筋は知って動いてくると見られます。つまり、日本株に対して外国勢がまとまった売りを仕掛けてきたら、「そろそろ」というシグナルかもしれません。

その点、外交交渉で解決したいティラーソン国務長官が政権内で浮いていて、いずれ更迭されるのではとの見方が広がっています。代わってマクマスター国家安全保障担当補佐官マティス国防長官らの「軍事戦略」が前面に出やすくなっています。ティラーソン長官の「北と前提条件なしで直接対話の用意がある」との発言を、国務省のナウアート報道官が即座に否定したのが気になります。

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なぜ?大林組に「あえて」東京地検特捜部のメス

国内でも気になることが少なくとも2つあります。

1つは内閣支持率が回復気味の中で、身内の中からも反安倍の動きが目立つようになったことです。岸田石破両氏はポスト安倍の候補と見られていますが、両氏以外にも安倍再選を望まない声が上がっています。内閣支持率と安倍支持率は別だと公然と批判する向きもあります。

また、先のリニア新幹線の工事大林組に地検特捜部の捜査が入りましたが、本来なら公正取引委員会の案件でもよい問題です。

それを、あえて東京地検という米国CIAとゆかりのある組織が捜査に乗り出したのは、JR東海と安倍総理にも飛び火しかねない問題を承知の上で、あるいはあえて意図して捜査に出たか。

米国にも反安倍の勢力がいますが、トランプ氏の弱体化に便乗して安倍おろしを画策している可能性もあります。

中曽日銀副総裁が謎の海外出張

もう1つ、日銀の中曽副総裁がこの時期に目的が不明な海外出張をしています。会議とか講演の予定も見られません。日銀のホームページにも載っていません。

この時期に」としたのは、そろそろ安倍総理官邸が、次期日銀総裁の人事に動く時期だからです。安倍総理は黒田日銀総裁を「信頼している」と言い、再選の可能性も伺えますが、交代する場合、財務省出身の黒田氏の後は、日銀出身者が良いとの声もあります。

一部にはポスト黒田としては、安倍総理に近いスイス大使の本田悦郎氏や元副財務官を務めた伊藤隆敏氏の名も挙がっていますが、日銀出身者ということになると、現副総裁の中曽氏、影の参謀、総裁の右腕とされる雨宮理事が有力視され、OBでは山口元副総裁、稲葉元理事の名も挙がっていました。

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そこへ中曽氏が訪米して金融当局者や中銀の中銀と言われるBISを訪れたとすれば、国際金融市場に「中曽」の名を売り込むためとの指摘もあります。黒田総裁の口から、望ましい総裁像として、国際金融筋とのパイプの重要性が指摘されています。安倍総理が中曽副総裁を次期総裁として考えているとすれば、事前に彼の名を世界に売っておく必要があったとも言えます。

「本田総裁」なら一段とリフレ策強化が予想されますが、今の国際金融市場では必ずしも望まれていないように見えます。むしろ、「中曽総裁」なら、これまでの政策の延長で考えられ、国際資本との連携も図れる、との読みかもしれません。裏を返せば、それだけ日本の金融政策がG30など、国際資本の影響を受けやすくなる、ということでもあります。市場はますます金融マフィアの動きを追わねばならなくなります。

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image by:Alexander Khitrov | Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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マンさんの経済あらかると』(2017年12月15日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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