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医療・介護の受け入れ能力の低い東京圏から地方に移り住む人が増える?その時に注目される企業とは

「日本創成会議・首都圏問題検討分科会」が発表したデータによると、今後、高齢化社会が進むにつれ、東京圏は他地域に比べ、さらなる介護需要が増えることが予想されています。しかし、一方で、東京圏は医療・介護の受け入れ能力が全国平均よりも低いという課題も。そこで重要になってくるのがアベノミクスにおける課題のひとつである地方創生です。『億の近道』にコラムを寄せる「炎のファンドマネージャー」さんは介護・医療レベルの高い地域に移住することが増えるようになると、その地域を事業エリアに持つ企業が今後注目される可能性があると指摘しています。

東京圏からの高齢者移住促進策と注目企業

産業界や研究者らでつくる有識者団体「日本創成会議・首都圏問題検討分科会」(座長・増田寛也元総務相)は先週4日、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県(東京圏)の2025年の介護需要が現在(15年)に比べ、45%増え、172万人に上るとの試算を公表しました。全国平均(32%増)を大きく上回り、他地域に比べ突出。入院需要も21.8%増加するとの見通しです。

一方で、東京圏は医療・介護の受け入れ能力が全国平均よりも低く、「患者のたらい回し」や「介護施設の奪い合い」が起きる可能性が高いと警鐘を鳴らし、地方移住を促す施策の推進などを提言しています。

団塊の世代が75歳以上となる2025年時点で国立社会保障・人口問題研究所の推計では、同年の東京圏の75歳以上人口は現在より約175万人増え、全国の増加数の3分の1を占めるとされます。

創成会議の試算によると、在宅と入所の介護需要は25年には埼玉が現在の51.5%増、千葉は49.8%増、神奈川で47.7%増、東京は37.9%増。埼玉、千葉、神奈川の増加幅が際立っています。入院需要も全国平均の14.1%増に対し、埼玉24.6%増、神奈川22.5%増、千葉21.9%増、東京19.8%増となると予想されます。この結果、東京圏では医療や介護の人材が25年に約80万~90万人不足するとされます。

試算を踏まえ、創成会議は、今後の医療や介護の需要・供給見通しを東京圏全体で共有する必要があると指摘。
さらに、40年には医療や介護を支える体制が崩壊しかねないとして、高齢者の移住を促すため、移住費用の支援や「お試し移住」の導入などを提案しています。

Next: 移住を促すには介護、医療のサービスが足りていない




移住を促すには介護、医療のサービスが足りていない

地方創生を図るアベノミクスにとって東京圏から地方への移住は大きなテーマ。高齢者のみならず若年層の移住は既に長野や山梨などで進みつつありますが、今回の創生会議の提言は高齢者の移住を促すために介護や医療といったサービスの不足への警鐘を鳴らしていることで、注目されます。

このように東京圏への人口一極集中によって将来、介護・医療サービスを十分に受けられない高齢者が増加するとの見通しから今後政府は東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)からの高齢者の移住促進策を打ち出す可能性が出てきました。地方創生がテーマになった株式市場での物色気運が移住政策にまで至るとどうなっていくかは高齢者予備軍でもある私にとっても大いに関心を持つところです。

国民がどこで住もうが勝手だとは言え、介護・医療サービスの不足がもたらす弊害は無視できないことになります。

いわゆる終の棲家探しを東京圏に住む多くの国民は行う必要があります。基本的にはふるさとに戻ることが最も良い選択肢なのかも知れませんが、政府はこうした介護や医療サービスの充実した余力のある41の地方都市への移住を推奨しています。

東京圏からの転出者は現在、年間37万人となっているそうですが、2020年には年間41万人にまで増加させることを目標としています。その受入れ自治体としては九州や四国、北海道の都市が選ばれています。
とりわけ大分県の別府市や北海道室蘭市など介護・医療レベルの高い地域や北九州のような大都市でも介護や医療レベルが高いエリアが推奨されています。

先日私は地熱発電の現場見学に別府市を訪ねましたが、温泉の湯けむりが立ち上る市内の眺望は素晴らしく温泉を日常生活で使えるメリットは地方都市の中でも魅力的です。

このほか、九州では鳥栖、大牟田など、中・四国地方でも岡山や松山、新居浜、下関、山口、宇部、徳島、高松などが選定されており、関西では和歌山、北陸でも富山、福井、北海道・東北では函館、山形などの地方都市が選定されています。

こうした地域を事業エリアに持つ企業が今後注目される可能性が考えられます。

本日は地方での住宅開発事業を展開する4社について取り上げておきます。

Next: 実際にはどんな会社があるの?




実際にはどんな会社があるの?

東京圏や全国的な住宅開発企業に対して地方に限定した事業展開を行う企業は市場での注目度がとても低い状態です。ROEはいずれも資本コストを上回る水準を維持していますが、PERが低いという結果になっており、これは将来への成長期待の低さを物語っているか中長期の成長の自信のなさが背景になっているように思われます。
このため将来的な成長基盤の確認がなされればPERの上昇につながるものと期待されます。

1.コーセーアールイー<3246・JQ>
時価792円 時価総額33.1億円 今期予想経常利益7億700万円
実績EPS111.15円 実績ROE24.9%
予想一株当たり配当金 25円 予想配当利回り3.16%
福岡や熊本など九州の都市圏中心にマンションや投資用ワンルームマンションの開発・分譲を手掛ける。今期予想PERは7.9倍。6月8日に第1四半期決算発表。

2.グランディーズ<3261・M>
時価1024円 時価総額12.9億円 今期予想経常利益3億1500万円
実績EPS168.55円 実績ROE25.7%
予想一株当たり配当金 0円
大分、別府が地盤の不動産会社、低価格の建売住宅を軸に投資用住宅と分譲マンション事業も手掛ける。2014年12月に福岡市場からマザーズ市場に上場。高値から半値の株価水準。予想PERは7倍。

3.エストラスト<3280・TSE1>
時価625円 時価総額38.5億円 今期予想経常利益9億7000万円
実績EPS106.4円 実績ROE21.3%
予想一株当たり配当金8円
山口県トップのマンション開発会社。九州や四国に事業エリア拡大。戸建も順調に拡大。管理戸数拡大、収益不動産も所有。今期予想EPS97.3円、同PER6.4倍。7月9日に第1四半期決算発表。

4.東武住販<3297・JQ>
時価1710円 時価総額23.2億円 前期推定経常利益3億8000万円
推定実績EPS160.3円 推定実績ROE15.1%
1株当たり配当金40円
山口県・福岡県を地盤に中古住宅の再生販売事業を展開。5月期決算で前期から株主優待制度導入。7月9日に本決算発表予定。大分、佐賀、広島などに事業エリア拡大。

億の近道』(2015年6月8日号)より一部抜粋

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