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時と場所の指定なし。コインチェック「返金の約束」は吉と出るか凶と出るか?=國澤晃

コインチェックの580億円流出事件が返金で丸く収まれば、むしろ仮想通貨の信用度が増す可能性もあります。しかしそれは返金が早期に実行されればの話です。(『KA.Blog(有料版)』國澤晃)

※本記事は有料メルマガ『KA.Blog(有料版)』2018年1月28日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:國澤晃
防衛大学校理工学部通信工学科卒業後、海上自衛隊幹部候補生学校(江田島)へ。退官後、東京八重洲の某東証1部上場証券会社(合併前)で6年間勤務するも、家族の事情で富山へUターンし退社。富山では会計事務所勤務を経て独立。証券アナリスト、FPなど金融・財務・税務関連の資格を保有し、企業業績や業界動向を読み解きながら、テクニカル分析で株価の動きを見極めるのが得意。新光証券(現みずほ証券)主催の仮想株取引「S-1チャンピオンシップ」において75000人中5位を獲得。

「総額460億円をNEM保有者26万人に返金」約束は果たされるのか

「コインチェック・ショック」

先週末の昼頃から既に界隈はざわついていましたが、国内No.1仮想通貨取引所と謳われてきたコインチェックで大規模なハッキング被害が発生。総被害額580億円とされており、確定すればビットコイン黎明期の14年マウントゴックス470億円喪失以来の大事件となります。

今回狙われたのはNEMという仮想通貨。今世界には6000もの仮想通貨が存在するなどと言われていますが、NEMは時価総額が1兆円近く、10位の通貨となっています。

その6%近くが奪われたわけですが、正直、仮想通貨全体の市場50兆円程度に比べると0.1%程度の微々たる額とも言え、足元では既に仮想通貨市場は落ち着きを取り戻しているような感じです。

実際、マウントゴックスも当時は世界最大手取引所でしたが、あの後むしろビットコインは知名度を高める結果になっています。

被害に遭われた方に関してはお気の毒と思う反面、まあ仮想通貨はこういうことも含めたリスクですから。私の周りにも先日の報道ステーションのビットコイン特集を見て始めようかとした人が居て、その旦那が「マスメディアにも責任がある」と怒っていましたが、私は自己責任だからやはり自分が悪いのだろうと思います。

マスコミであれなんであれ煽りに乗るだけで自分で調べないのであれば、そりゃ大切なお金も無くなるでしょうね、と。

一応、昨晩被害者への損失補填を発表し、計460億円分の返金を行うということで幕引きが図られようとしています。もしこれがきちんと早期に実行されれば、むしろ仮想通貨の信用度が増すのかもしれません。ただ海外でも大なり小なり似たようなハッキング被害があり、現状は投資家がまず取引所の信用力を見極める必要もありそうです。

特に仮想通貨は金融庁の許可が必要ありません。厳密に言えば取引所は登録が求められますが、今回のコインチェックは登録申請中という話ではあるものの、まだ登録完了はしていませんでした。なので当然国による補償はありません

今回事態を大きくしているのは、他の通貨の売買及び出金を停止していること。顧客の資産保全のためということですが、喪失した580億円以上の金額が身動きの取れない状況になっており、これがまたどうなるのか不透明なままです。

国家レベルでの犯行か?

じゃはどうなのか、ということですが、まず株の場合はほふりの預託で分別管理されていますから、証券会社が破綻しても保全されます。昔の紙の株券だった時には証券会社の役員が顧客の株券を持ち逃げ…なんてありましたが、今ではその心配はありません。また基本的には送金口座が顧客本人名義になっていますから、もしハッキングされても、他の口座に出金できません。

しかし580億円ものお金はどこに行ったのか…ということですが、恐らくは金額的に国レベルの関与でしょうから、北朝鮮ロシアなどに流れている可能性は十分あると思います(ちなみにマウントゴックスは未だ解明に至りませんが、社長がネコババした説が有力)。またミサイルに化けて飛んでくると思うと嫌ですね。

Next: 規制強化は必至も、仮想通貨は死なず?/関連銘柄への影響は



仮想通貨関連銘柄への影響は

それはともかく、今回の話は株にどう影響してくるか、ということですが、まずは直接的に仮想通貨関連株に影響してくるでしょう。セレス<3696>はコインチェックに出資しているという点もあって直接関わりがあります(ただ株主責任は有限ですから、期待利益の損失くらいしか直接的なダメージはありません)。

その他、SBIHD<8473>フィスコ<3807>などの仮想通貨取引所運営企業はマイナスでしょう。仮想通貨の評価はともかく、経営上のリスクが改めて認識される形になりましたし。

あと、間接的に結構影響がありそうなのは広告代理店。今回コインチェックは広告を即時に止めたということなので、最近出川哲朗のテレビCMをアチコチで見かけましたが、景気の良い業界の出稿が止まるのは痛いでしょうね。

一方、またネットセキュリティ関連株は連想買いが入りそうです。

規制強化は必至も、仮想通貨は死なず?

仮想通貨の今後に関しては、今はまだコインチェックの口座が止まっているので影響は薄いですが、再開すると売りがまた強まるだろうとは思います。

特にこれまで麻生さんが「仮想通貨は何でも規制すれば良いとは思わない」などと発言し、先進国各国で規制方向に動く中で認識の甘さを露呈した形になりました。正直、麻生さんは「最高税率計55%の雑所得総合課税で税収が増えて嬉しいな」という程度にしか考えていなかったのだろうと思いますけれど。

というわけで、国の緩さに対する責任問題にも発展しかねないとなってくると、今後日本でも取引所規制の動きが強まってくるでしょう。今回金融庁が全取引所に対する再点検を要請し、またコインチェックに関しては行政処分と伝わっています。そうなるとまた一段と売られる動きになると思います。

ただ仮想通貨自体はまだしぶとく残るのでしょうね。人間懲りませんから。そもそも本来仮想通貨の理念は正しいと思うので、値動きがトレード対象になっている今がおかしいだけと言えます。

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※本記事は有料メルマガ『KA.Blog(有料版)』2018年1月28日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した株式・為替市場の詳細な分析、今週の注目イベント展望や、配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

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KA.Blog(有料版)』(2018年1月28日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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