ブルームバーグが2月16日に「米ブリッジウォーター、日本株の売りに着手」と報じていますが、これは景気サイクルに沿った動きです。今回は、日本ではややなじみが薄い、世界最大のヘッジファンドについてお伝えします。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)
景気サイクルに沿って動くレイ・ダリオ。日本売りは正解なのか
世界最大のヘッジファンド
ブリッジウォーターは、大富豪のレイ・ダリオ氏が率いる世界最大のヘッジファンドです。本社は、アメリカ東部のコネチカット州にあります。
コネチカット州はニューヨークの東北方向に位置しており、ブリッジウォーターの本社があるウエストポートは、ニューヨークのマンハッタンからおおむね80キロ前後のところになります。
ブリッジウォーターの運用総額は、10兆円以上であることは間違いなさそうですが、これは20兆円か、それ以上かもしれません。
創業者のレイ・ダリオ氏は、もともと親が富豪というわけではありません。ニューヨークのクイーンズ出身です。
このクイーンズ地区は、トランプ大統領の出身地でもありますが、同じニューヨークでもマンハッタンとは全く違うのです。クイーンズに滞在経験がある方はご存知なように、日本の感覚では極めて治安が悪く、多民族、低所得者も多いエリアです。
ビジネスホテルのフロントに、防弾ガラスがあったり。ファーストフードの店員とは、プラスチックのボードで、仕切られていたり。下の10センチぐらい開いたわずかな隙間から、ドルをやりとりするわけです。マンハッタンとは、全く雰囲気が異なるエリアです。
ちなみに、トランプ大統領の人気が根強いのも、クイーンズ出身のため、ニューヨーク中心部の富豪とは違うと思われているからです。
風変わりな企業文化
さて、このレイ・ダリオ氏率いるブリッジウォーターは、ヘッジファンド業界で「風変わりなファンド会社」とみられています。
レイ・ダリオ氏に、歯向かう意見の従業員が評価される。従業員食堂の料理がまずいといった意見に真摯に対応するというエピソードが業界の語り草です。
世界的にも、特に日本企業をみても、上司に歯向かうと左遷されるか退社に追いやられるかですから、かなり違います。
日本企業でも、かつてソニーは上司に歯向かうと。別のセクションから「アイツが欲しい」といわれていたようですが、ほとんどの企業は「イエスマン」を求めています。
ですからブリッジウォーターは、ボスに反発するのがOKという、かなり風変わりな会社というわけです。
また、レイ・ダリオ氏本人についても、哲学者のようだとか、学者のようだという見方がなされています。
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2017年秋、イタリア金融株に大きな売り
ブルームバーグ(2017年10月14日配信)によりますと、『ダリオ氏のブリッジウォーター、イタリア金融株に「ビッグショート」』と報道されています。
さらにブルームバーグは、今年2月にもブリッジウォーターによる、欧州株の「売り」を報じています。
こうしたブリッジウォーターの動きは、景気サイクルに沿っています。
(参考)
当メルマガ 2017年10月9日号「中期景気サイクルはピーク圏へ…下降転換が近づく」
当メルマガ 2017年10月11日号「続・中期景気サイクルはピーク圏・・転換への備え」
当メルマガ 2017年10月26日号「なぜ、今のタイミングで利益確定なのか」
当メルマガでは、2017年の後半頃から景気サイクル(中期)が後退局面に入る、と伝えてきました。ブリッジウォーターは、こうした景気の流れにオーソドックスに対応しているというわけです。
こうした中で、日本株の「売り」も行われているようですね。これは、中期の景気サイクルに沿うものですから、仕方がありません。
イタリア金融株のショートも、EU内の問題をよく知っていたからこそ、といえるでしょう。ラトビア3位の銀行「ABLV」が破産危機にある問題も、ある意味これと同じ脈絡といえます。つまりEUには、まだ予想外のことがあり得るわけですね。
このように、ブリッジウォーターは景気サイクルの動きの分析に加えて、世界各国の詳細な情報をしっかり把握しているといえそうです。
『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2018年2月26日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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