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2万1000円越えはいつ?日経平均株価の水準メドを判断する3つのシナリオ

2日の日経平均株価は、前日比236円高の20,565円と3日続伸で取引を開始。先月は596円の急落もありましたが、外部環境に不透明感のあるなか堅調に推移しています。

となると、気になるのは日本株のお買い得感ですよね。本記事では前回に引き続き、日経新聞社で証券分析サービス開発に従事、各種日経株価指数も担当した日暮昭氏による、日経平均の水準メドを判断する3つのシナリオをご紹介します。

【前回】日経平均の「理論株価かい離率」は何%までが妥当水準?

日経平均はおおむね妥当範囲で推移

下図は前週ご紹介した日経平均と理論株価の推移を6月29日まで延長したグラフです。

日経平均と理論株価の推移(日次終値)─2014.1.6~2015.6.29─

6月29日の急落によって日経平均は2万100円台へ、一方、理論株価は1万9400円台で、日経平均は理論株価を約700円、率にして3.6%上回っています。

下図は、これも前回講座でご紹介した日経平均と理論株価のかい離率の推移を上の図と同じく6月29日まで延長したグラフです。

日経平均と理論株価のかい離率(%)─2014.1.6~2015.6.29─

中央の赤い横線がこの間のかい離率の平均でマイナス0.14%、変動幅の平均は4.8%で、平均の赤い線からこの変動幅をそれぞれ上と下にとったのが“変動平均の上側” と“変動平均の下側”です。紺色の線で示してあります。

前回の講座でみたように、かい離率はこの変動平均の上側と下側の線に挟まれる範囲を超えると反転する傾向がある、つまり相場が注意領域に入るメドと言えます。逆に言えば、この範囲に収まっていれば妥当な変動幅とみなすことができるわけです。

図から、6月29日の直前にはかい離率がこの上側の注意領域にありましたが29日の急落によって妥当な範囲に戻ったことが分かります。

ちなみに、下図は理論株価の上と下に妥当範囲のかい離率に相当する変動幅をとって、日経平均ベースの妥当な変動範囲を、今年の年初から6月29日まで示したものです。

日経平均の妥当な変動範囲─2015.1.5~2015.6.29─

紺色の線が日経平均、赤色の点線が妥当範囲の上限、空色の点線が妥当範囲の下限を示します。6月29日時点の上限は2万313円で、日経平均は上限を下回りました。

年初に妥当範囲の下限に近かった日経平均が4月にかけて急上昇し、一気に妥当範囲の上限を超えましたが、これは前回の講座でみたように今期の業績が大幅増益となることを市場が先取りし理論株価に先行して上昇したためです。

5月に入り今期の増益予想を理論株価が織り込むにつれて理論株価が日経平均を追いかける形で上昇、それに伴って妥当範囲の上限も高まり日経平均がほぼ上限内に収まるようになったわけです。

その意味で、年初からの日経平均はおおむね妥当な変動範囲に収まっていたと言えます。

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日経平均の具体的な水準のメドをつけるには?3つのシナリオ

ところで、株価は上記の年初来の動きで明らかなように先行きの見通しに基づいて決定されます。

ここでは理論株価を以下のように規定しますので、理論株価は業績としての予想EPSと米ドルをどのようにみるかで変わり、それに伴って日経平均の妥当な範囲も変わります。

日経平均の理論値=─3630+74.66*【予想EPS】+101.52*【米ドルレート】

そこで、先行きの業績と為替の見通しによって理論株価が実際にいくらになるのかをみてみましょう。

足元の日経平均ベースの予想EPSは142円(*)、米ドルは123円です。

以下で、業績については(1)現状の142円が維持される、(2)今後、通貨波乱など外部環境の悪化によって10%の減益になる、(3)そうした波乱はなく、順調に10%程度の増益が実現するーーの3通りの場合を想定します。

同様に為替については(1)足元の123円が維持される、(2)通貨波乱などで5円の円高となる、(3)米国の金利上昇などにより5円の円安となるーーの3通りを想定します。

下の表は、横方向に米ドル、縦方向に予想EPSとって、それぞれ3通り、合わせて9通りのケースに対応する日経平均の理論株価を一覧したものです。

業績・為替の想定による理論株価一覧

現状の業績と米ドルに対応する理論株価は黄色の枠内で示され、1万9458円となります。

当講座執筆時の7月1日の日経平均は2万300円台ですが、これは、米ドルが123円で現状、業績が10%増益のケースである緑色の枠にある2万503円にほぼ相応します。

足元、市場は、為替は現状維持、業績は増益を見込んでいると言えそうです。

以下で、表の左上と右下のスミになる典型的な悲観・楽観ケースを見てみましょう。

左上のスミは、例えば、今後、ギリシャ問題がさらに深刻化して為替市場が動揺、安全資産としての円が買われて為替が5円の円高になる。それによって業績も10%の減益と低迷することを見込む悲観ケースで、この場合は日経平均は1万8000円を割り込みます。

その逆に右下のスミは、ギリシャ問題が落ち着き、市場が安定を取り戻す中で米国金利が上昇、それによって為替が5円程度の円安に振れ、業績も順調に増益基調を辿るとする楽観ケースです。この場合は日経平均は2万1000円を超えます。

ただし、実際の相場の評価については、これらのケースごとの値を一点で押さえるのではなく、この値を中心に平均変動幅を上下にとり、その範囲内を妥当な水準とみなします。

不安定な相場環境で先行きの見通しが難しいとき、こうした想定を立てることで具体的に相場水準のメドをつける理論株価をご参考にされてはいかがでしょうか。

筆者プロフィール:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を用いた客観的な投資判断のための市場・銘柄分析を得意とする。

投資の視点』(2015年7月2日号)より一部抜粋

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