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「日銀の追加緩和はあるのでしょうか?時期と規模は?」個人投資家Tさんの質問に回答! – 山崎和邦 わが追憶の投機家たち

投資歴54年の山崎和邦氏が思い出の投機家や重大事件を振り返る本連載。今回は特別編として、好評配信中の有料メルマガ『投機の流儀』より、現役投資家・東京のTさんと山崎氏のリアルタイムなやりとりをお届けします。はたして、日銀の追加緩和はあるのでしょうか?あるとしたらその時期と規模は?

山崎和邦 週報『投機の流儀』vol.156 2015/8/9号より、マネーボイス編集部にて再構成

黒田日銀は追加緩和に動くか?消費者物価ゼロ近傍、景気弱含み

現役投資家・東京のTさんからの質問(8月2日夜):

東京都在住、地方公務員にして個人投資家のTと申します。
質問を差し上げるのは2回目です。

毎週日曜配信の『投機の流儀』を心待ちにしている読者の一人です。特に「心得」はその時々の心持ちによって新たな気付きがあり、折を見て読み返し勉強させていただいています。

さて、質問は日本銀行の追加金融緩和の可能性についてです。

当方は「あり」と踏んで4月、7月とファーアウトのオプション買いポジション(※1)を取っていましたが不発で、損切りしました。私が「あり」と考える理由は、

  1. 物価が全く上昇傾向になくゼロ近傍を彷徨っており、このままでは黒田さん岩田さんともに全くの公約違反になってしまう
  2. 景気が弱含みであること(6月の鉱工業生産は想像以上に良かったですが、4−6月のGDPはマイナス成長が予測されているようです)
  3. 安倍政権が安保問題で自ら複雑骨折し支持率を落としており、起死回生の一発として政権が緩和を望んでいる可能性があること
  4. このまま景気が悪化すると2017年の消費増税もおぼつかないと思われるが、黒田さんはなんだかんだ言っても元大蔵官僚でありいっぺん先延ばしにされた消費増税はなんとしても成し遂げたいはずである
  5. 原油は日銀の予測ほど上がらないと思う

以上です。

一部では総務省統計局がCPIの基準そのものをエネルギーを除いたものに変更するなどという報道もありますが、これはゲームの途中のルール変更であり、「期待」を重視する黒田さんのこれまでの発言からするとそれはないのではないかと思うのです。

そこで山崎先生に、

についてご教示賜ればと思いメールしました。よろしくお願いいたします。

Next: いまは「休むも相場」?山崎和邦氏の回答を限定公開!


※1 ファーアウトのオプション買いポジション
原資産価格から遠く離れた権利行使価格(ファー・アウト・オブ・ザ・マネー)のオプション買い。Tさんは相場急騰を期待していたので、例えば、日経平均株価が2万円のときに、権利行使価格22000円の日経225コール・オプションを単価15円で30枚(45万円分)買うような取引になる。単純な先物買いと比較して、必要証拠金が少なく済み、相場が逆に動いた場合のリスクが限定されるのがメリット。反面、レンジ相場やジリ上げ程度の相場では損失になりやすいデメリットもあり、日銀の追加緩和(ポジティブ・サプライズ)を積極的に狙った非常に強気かつ投機的なポジションと言える
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山崎和邦の回答:

まず、私の言う「安保問題による安倍内閣の複雑骨折」を立て直すのは金融政策ではなく、あくまでも政治的営為の問題かと思います。

また、CPIの基準について、Tさんが「ゲームの途中でのルール変更」とおっしゃるのは無理もないですが、過去、このようなケースでは実際にルール変更が行われてきたのも事実です。

ご指摘の原油を除いた物価指数は7月の日銀月報から開示が始まっていますが、鉱工業生産指数も電力は除くとか、景気先行指標からあろうことか株価を削除する(1987年)といったことがありました。

株価は10年以上を経て先行指標に復活しましたが、これが「失われた13年」(1990年暴落~2003年りそな公的資金救済まで)の景気判断を誤導した主因だと私は思っています。

さて、それらを踏まえ本題の「追加緩和ありやなしや」に関する見解ですが、黒田さんは「今の時点では追加緩和は必要ない」と思っておられるようです。

原油下落は想定外だったと言っていますが、今年後半には物価指数はかなり上昇すると予想しているわけです。

そのため、黒田さんが「物価上昇の見通しはよほど怪しいぞ」と思わない限りは追加緩和はないでしょう。

また、もしやるべき事態になったとしても真新しい手法ではなく、国債買い付けの増額、ETF買い付けの増額でしょうし、それも大幅な増額にはならないでしょう。

なぜなら、国債の売りものに関して、今年のGPIFの国債売りのような大きなものがなく、やればやったで出口戦略が難しくなるからです。

黒田さんは、出口は自分の任期にはないから知らない、というような人ではなさそうです。いずれにしても今年はないと言えます。もしあっても来年でしょう。

参院選が9月、消費増税も9月、ですからその前と考えます。

そうなれば、今は「休むも相場」でしょう。世間では、今年の目標高値は23,000円とか24,000円とかいう風潮がありますが、所詮は140%上がったものがあと10%か15%上がるというだけのことです。

私は、ポジションに関しては、今までの140%で良しとして、ここは今までに仕込んで評価益のあるものの売り場を探す時だと思っています――


東京の投資家・Tさんと山崎氏のやりとり、いかがでしたでしょうか。

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山崎和邦(やまざきかずくに)

1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。

大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。

趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。

著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、近著3刷重版「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)等。

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