マネーボイス メニュー

日銀がビビる金融緩和の副作用。物価2%目標はもはや精神論に=久保田博幸

日銀が「6月会合の主な意見」を公表した。それを見るとコミットメントという用語が乱発されており、副作用から目を背けて精神論に走っているように思えてならない。(『牛さん熊さんの本日の債券』久保田博幸)

※『牛さん熊さんの本日の債券』は、毎営業日の朝と夕方に発行いたします。また、昼にコラムの配信も行ないます。興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

「2%目標は、他国並みの名目成長を実現するという決意の表れ」

日銀「追加緩和はしたくない」

日銀は6月25日、金融政策決定会合における「主な意見」(6月14日・15日開催分)を公表した。このなかから「金融政策運営に関する意見」をみていきたい。

毎度の意見「現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが適当である」はさておき、次の発言に注目した。

物価の伸び悩みの理由は、単純な需要不足とは考え難いことから、短期間で需要を無理に押し上げるような政策は適当ではない

現在の緩和的な金融環境を粘り強く維持していくことが重要であり、そのためには、経済・金融環境に深刻な歪みが生じることがないよう注意しながら、持続性に十分配慮した政策運営がなされるべきである。

「短期間で需要を無理に押し上げるような政策」とは、サプライズも意識した異次元緩和そのものを指しているようにも見えなくもないが、さらなる追加緩和については反対のようである。

そして、注目すべきワードは「深刻な歪み」と「持続性」となる。いまの政策が持続不可能なほど、深刻な歪みが生じるリスクを意識しはじめたと言えなくもない。

日銀が危惧する「深刻な歪み」とは

金融機関では、保有有価証券の評価損益の悪化に加え、低収益店舗の減損リスクも生じてきている。

金融政策の継続にあたっては、その効果と副作用の二つの時間軸を意識し、副作用が顕在化する前から対応を検討しておくことが必要となる。

こちらでは経済・金融環境に深刻な歪みとされるものが具体的に示されている。この危惧は、時間の経過とともに強まっていく

「低金利」が作り出す歪み

低金利が銀行経営の悪化を通じて金融仲介機能を低下させ、却って金融緩和効果を削ぐという議論がある。

こうした金融仲介機能の中核は、預金を集めて返済可能性を考慮しながら貸し出すことであるが、国内銀行の平均預貸率は7割以下であり、残りは債券運用である。

この点を考慮すれば、銀行の金融仲介機能にはそもそも改善の余地があるのではないか

例によって「という議論がある」という発言をする方の意見であるが、これは金融政策決定会合という場の金融政策運営に関して発言すべき意見であるのであろうか

Next: 精神論を持ち出した日銀。副作用を意識する発言も



期待できる? 国債買入に修正が入るかもしれない

足もとの国債市場では、米国金利等の動きに対する感応度が低下しているほか、新発債の業者間取引が不成立となる日もみられる。

本来の市場機能をできるだけ維持する観点から市場調節を運営していくことが重要である。

日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和の副作用の指摘であるが、どの委員による意見なのであろうか。

佐藤委員と木内委員が任期を迎えたあとは、債券市場関係者は政策委員にはいない。これは債券村の住人はリフレ派の意見を理解していないためかどうかは知らないが、このような中にあって、債券市場動向を気にしてくれる委員がいるのは心強い

日銀の国債買入について、何らかの修正が入るかもしれないという期待をしても良いのであろうか。

副作用を意識する発言も

ETFなどリスク性資産の買入れは、「物価安定の目標」を実現するための政策パッケージの一要素として行っているが、政策効果と考え得る副作用についてあらゆる角度から検討を続けるべきである。

こちらも副作用に関する指摘であり、ターゲットは国債ではなくETFなどリスク性資産の買入に関するものである。この環境下で日銀が株価を買い支える必要性はない。

事前に市場にしっかり織り込ませるかたちで、ETFなどの買入は早めに停止すべきと個人的には思っている。

精神論を持ち出す日銀

他の先進国では、2%程度の物価上昇が当然とされ、そのもとで3~4%程度の名目成長が達成されてきた。

2%の「物価安定の目標」は、国際社会に対して日本が他国並みの名目成長を実現するという決意の表れである。

何を言っているのかわからない。

Next: 具体的な説明が足りない日銀は、現実から目を背けている



繰り返される「コミットメント」という言葉

予想物価上昇率がなかなか上がらない現状を考えると、場合によっては、民間主体の期待形成に働きかけるべく、2%に向けたコミュニケーションと広い意味でのコミットメントを改善する工夫を講じることが望ましい。

広い意味でのコミットメントの改善とは、具体的にはどのようなものなのかの説明が欲しい。

足もとの物価上昇率が高まっていないため、予想物価上昇率も伸びにくくなっている。予想物価上昇率に働きかける追加的なコミットメントが必要である。

予想物価上昇率に働きかける追加的なコミットメントって何だろうか。

共同声明で謳われた政府・日本銀行のコミットメントに揺らぎがないと理解されることが大切である。

コミットメントと言う用語が乱発されており、どうやら日銀の金融政策は精神論に走りつつあるようにも思われるのだが。

それよりも、現実の副作用に目を向けたほうが良いと思う。

続きはご購読ください。初月無料です


※『牛さん熊さんの本日の債券』は、毎営業日の朝と夕方に発行いたします。また、昼にコラムの配信も行ないます。興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

【関連】ソロスが狙う次の通貨危機。養分になるのが嫌なら「タイ株」を刮目して見よ=鈴木傾城

<初月無料購読ですぐ読める! 6月配信済みバックナンバー>

※下記コラムのほか、毎営業日の朝と夕方に相場展望・解説が配信されます。

・日銀はコミットメントよりも副作用を注視すべき(6/25)
・日本国債の動かなさが、半端ない(6/22)
・ワールドカップの優勝国予想と物価予想の違い(6/21)
・アマゾンが日本の物価を引き下げている?(6/20)
・4月のロシアによる米国債の保有高が前月から半減したのは政治目的なのか(6/19)
・欧米の中央銀行が出口に向かうなか、日銀だけが出口に向かえないのは何故なのか(6/18)
・ECBは年内の資産買入停止を決定、利上げは慎重に(6/15)
・日本の国債市場が静かな悲鳴を上げている(6/14)
・米国の物価動向とFRBの利上げペース(6/13)
・歴史的な米朝首脳会談を前に市場ではリスク選好の動きが進む(6/12)
・4月に日本の投資家はスペインやイタリアの債券を買い越しに(6/11)
・キャッシュレス化に向けて経済産業省が動く(6/8)
・金融市場の動きは何を見て、どのように判断すべきなのか(6/7)
・AIを使って株や為替の動きを予測するのは可能なのか(6/6)
・6月の米国の利上げは確実視、今年は何回利上げするのか(6/5)
・イタリア次期首相は大学教授のジュセッペ・コンテ氏(6/4)
・日銀の国債買入減額にも関わらず円安が進行(6/1)

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※6月分すべて無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。

5月配信分
・イタリアの政局の行方がユーロにとっても不安要因に(5/31)
・イタリアの長期金利が急上昇、市場動向を見極める必要も(5/30)
・原油先物価格はピークアウトしたのか(5/29)
・欧州リスクが再燃か? イタリアとスペインに火(5/28)
・米朝首脳会談の中止による市場への影響(5/25)
・4月に都銀は超長期国債を大量売り越し、期初の売りか(5/24)
・バンクペイはキャッシュレス化への本命か(5/23)
・イタリアの政府紙幣(mini-BOT)発行構想は、かなり危険な構想(5/22)
・ドル円は113円、米長期金利は4%、原油先物は80ドルに向けて上昇か(5/21)
・3月に中国は米国債保有高を増加させていた(5/18)
・イタリアが政府債務を帳消しにするようECBに要請?(5/17)
・ドル円は110円、米長期金利は3%の節目を上抜けた。今後の動きと円債への影響(5/16)
・機能停止状態に陥りつつある日本の債券市場(5/15)
・ドル円は110円の壁を突破できるのか(5/14)
・国の借金は過去最高を更新、国債のアラート機能は停止中(5/11)
・日銀が金利を上げれば金融機関は打撃を受けるのか(5/10)
・ポンペオ米国務長官の動向が米国債利回りやドル円に影響、イランや北朝鮮問題に関わるキーパーソンか(5/9)
・原油先物が70ドル突破、80ドル台へ押し上げも(5/8)
・金融政策に関する情報発信のあり方(5/7)
・国債の決済T+1が始動、これにより日銀の国債買入がさらにスムーズに(5/2)
・日銀が物価目標達成時期の表記を削除したのは何故か(5/1)

4月配信分
・北朝鮮リスクの後退で、リスク回避の巻き戻しが強まるか(4/27)
・米長期金利が3%台乗せ、いずれ4%も視野か(4/26)
・今年度最初の日銀の決定会合や国債買入の行方(4/25)
・米長期金利は3%に接近、ドル円は108円の節目突破(4/24)
・3月も海外投資家が日本国債を大量買い越し(4/23)
・欧米主体に世界的に長期金利が上昇、その背景とは(4/20)
・ドル円がここにきての反発してきた理由(4/19)
・デジタル通貨を中央銀行が発行すべきなのか(4/18)
・トランプ大統領はFRB副議長にクラリダ氏を指名(4/17)
・シリアへのミサイル攻撃に対し市場は冷静に受け止める(4/16)
・トランプ大統領に振り回される米国市場、いつまで続くのか(4/13)
・原油価格が3年ぶりの水準に上昇した要因とは(4/12)
・中国の習近平国家主席の発言で貿易摩擦懸念がひとまず後退(4/11)
・セブン-イレブンが独自のスマホ決済を導入するそうだが(4/10)
・日銀法改正から20年、新日銀法の目的を再確認すべき(4/9)
・米国株式市場に対して火に油を注ぐ、トランプ大統領(4/6)
・米国株式市場が乱高下した要因を探る(4/5)
・日銀の異次元緩和5周年、何が起きて今後はどうするのか(4/4)
・今年度の国債発行計画を再確認(4/3)
・日銀短観がピークアウトを示す(4/2)

【関連】なぜ日本の物価は上がらない。言い訳探しを始めた黒田日銀が見抜けなかったこと=斎藤満

【関連】「貯金をしなさい」はもうやめよう。学校では教えてくれない子どもの金銭教育=午堂登紀雄

【関連】ソロスが狙う次の通貨危機。養分になるのが嫌なら「タイ株」を刮目して見よ=鈴木傾城

牛さん熊さんの本日の債券』2018年6月26日, 20日号より
※記事タイトル・リード文・本文見出しはMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

牛さん熊さんの本日の債券

[月額1,100円(税込) 毎週月・火・水・木・金曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
金融サイトの草分け的な存在となっている「債券ディーリングルーム」の人気コンテンツ、「牛さん熊さんの本日の債券」がメルマガとなりました。毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを会話形式にてお伝えします。さらっと読めて、しっかりわかるとの評判をいただいている「牛さん熊さんの本日の債券」をこの機会にぜひ御購読いただければと思います。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。