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インフラ格差の解消なくして地方創生はない!三橋貴明が主張する地方創生を妨げる2つの要因とは?

安倍政権の重要課題のひとつとされている地方創生。中小企業診断士であり作家の三橋貴明さんは『三橋貴明の「新」日本経済新聞』において、地方創生に欠かせないのは地方間の格差をなくすためのインフラ整備であると語ります。それにも関わらずインフラが進まないのはなぜなのでしょうか?三橋貴明さんは原因はふたつあると語ります。

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015年8月17日号より
※本記事のタイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

各地方の生産性を向上させるにはインフラ整備が不可欠

地方創生について、山形県の吉村美栄子知事が、岡山で開かれた全国知事会議で、「太平洋側と日本海側の格差は大きい。高速道路やフル規格の新幹線が日本中つながれば地方創生の基盤になる」と、発言しました。

まさに、その通りです。日本国内を高速道路やフル規格の新幹線で繋ぎ、各地方間の距離を「縮める」ことで、はじめて地方間の競争条件はフェアに近づきます。当たり前ですが、現在のドイツとギリシャのように、生産性が極端に違う状況で、「フェアな競争」を実施し、勝ち組(ドイツ)と負け組(ギリシャ)の格差を拡大していくのは、実際にはフェアでも何でもありません。しかも、現在のドイツはEUやユーロを推進し、各国が関税や為替レート切りさげで自国産業を「保護」することを妨げようとしていますが、そのドイツにしても、19世紀に高関税政策を採り、保護貿易で自国市場や自国企業を守り、生産性向上のための投資を実施したのです。

イギリスにせよ、アメリカにせよ、ドイツにせよ、自由貿易を標榜する国のほとんどは、過去に「保護貿易」で生産性を高めた経験を持ちます。と言いますか、過去の保護貿易で生産性を向上させ、関税や為替レート変動なしでも「勝てる」と分かっているからこそ、自由貿易を標榜しているわけでございます。

無論、経済学は自由貿易を「理念」として信奉していますが、低生産性国が「自由貿易」で自国の生産性を高めることはできません。企業が設備投資や人材投資、技術開発投資で生産性を高めるためには、「安定的に所得を稼げる市場」が必要なのです。
もっとも、「国」同士であれば、各国ともに自国の国益しか考えていないわけで、高生産性国が「自国のために」自由貿易や市場競争を謳うのは分からないでもありません。同じことを「国内でやって、どうするんだ」という話です。

Next: 競争ならぬ「切磋琢磨」は必要


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無論、「地方は中央政府に甘えていればいい」という話ではありません。競争ならぬ、「切磋琢磨」は、いつの時代でも、いかなる地方でも必要です。

とはいえ、各地方が切磋琢磨するためには、せめてインフラストラクチャーの「格差」を解消しなければ、生産性の差を埋めることはできません。昨日のメルマガ(※編集部注=三橋貴明の「新」日本経済新聞 2015/08/16号)でも書きましたが、交通・通信といったインフラストラクチャーは、生産性向上に決定的な役割を果たします。

それにも関わらず、我が国は整備新幹線に対し、年間わずか700億円の予算しかつけていないのです。これでは、日本の各地にフル規格の新幹線が通り、インフラ面の格差が縮まるのは100年先になりそうです。

整備新幹線の予算拡大を妨げているのは、主に二つ。一つは、お馴染みの財政破綻論です。

そして、二つ目は、土木・建設の供給能力不足です。とはいえ、供給能力不足は企業の投資(設備投資・人材投資・技術開発投資)によって埋められます。

要するに、財政破綻論を打破し、整備新幹線の予算を積み増すことを決定し、将来への(前倒しした)整備計画を明らかにし、土木・建設企業の投資を促進するという政策こそが「ベスト(ベターではないです)」なのです。当然、土木・建設企業に対する投資促進税制も有効でしょう。

我が国が進むべき道は、あまりにも明らかなのですが、それにも関わらず未だに「公共事業否定論者」が消えません。要するに、マスコミの洗脳がそれほど深いという話なのですが、せめてインターネットなどで、「日本のマスゴミは腐っている」と主張している方々には、日本の「正しい道」について、先入観なしで考えて頂きたいと思う次第でございます。現在の日本には、マスコミを「マスゴミ」などと軽蔑しつつ、マスコミ発の「農協悪玉論」や「土建悪玉論」に洗脳されている愚かな国民が、あまりにも多いように感じるのです。

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