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積み立て投資は本当に万能と言えるのか? こんな人はストレスを抱えて大失敗する=田中徹郎

「貯蓄から投資へ」を推し進める金融庁が立ち上げた『つみたてNISA』は、今のところの加入状況は順調です。ところでこの積み立て投資、良いことばかりなのでしょうか。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

投資に対する考えは十人十色。積み立て投資に潜む落とし穴とは?

相場を読む必要がない

積み立て投資はよいですね。毎月自動で一定額を投資できますので、相場の上げ下げに一喜一憂する必要はありません

ドルコスト平均」といって、相場が下がればそれだけ多くの株(もしくは口=クチ)が買えますので、平均購入単価を下げることもできます。

なにより相場を読まなくて済むのがよいですね。相場が上がれば持っている資産が増えて気分がよいですし、相場が下がっても上記のように「安く買える」と自分を納得させることができます。

特に積み立て期間を十分に取れるお若い方にとっては、大変に使い勝手の良い投資方法ではないかと思います。

お金持ち・高齢者には向かない

一方で、積み立て投資にはいくつかの問題点があります。

まず、多額の資産をお持ちの方や、高年齢層にとっての使い勝手の問題です。

仮に皆さんが既にリタイアされていて、1億円の余資の運用についてお考えだったとしましょう。この1億円を毎月10万円ずつ積み立てたとすれば、1億円すべてを投入するまでに80年以上かかる計算になりますし、積立額を50万円に増やしても16年もかかってしまいます。

このような方にとっては、積み立て投資は現実的な選択肢ではなく、ポートフォリオ全体のリスクレベルを下げる、別の方法を考えなければなりません

Next: 積み立て投資に潜む問題点「ヒヨコ理論」とは? 精神面も考慮したい



積み立て投資に潜む問題点「ヒヨコ理論」とは?

2つ目の問題点は、「ヒヨコ理論(僕が勝手に作りました)」です。

ヒヨコを養鶏場で増やす場面をイメージしてみてください。毎日10羽ずつヒヨコを買ってきて、鳥小屋に入れるとしましょう。ヒヨコには相場があって、毎日値段が変動するとします。

ヒヨコの相場が安い日は仕入価格が下がるので、相場の下落はむしろ朗報です。一方で、最初のうちは小屋に入っているヒヨコはほんのわずかですから、ヒヨコの相場の下落を、どちらかといえばプラスに感じるのではないでしょうか。

しかし、その後はどうでしょうか。

毎日買ってくるヒヨコは10羽ですが、いずれ小屋の中のヒヨコはどんどん増えていき、そのうちヒヨコだらけになってしまいます。その時点でも、皆さんはヒヨコ相場の下落に無頓着でいられるでしょうか

小屋ばかりではなく、いずれ皆さんの頭のなかもヒヨコでいっぱいになってしまうに違いありません。

その時になってヒヨコ相場の勉強を始めても、相場観など一朝一夕で身につくものではありません

つまり、積み立て投資が気楽にできて手間ナシなのは積み立ての初期のうちだけで、皮肉にも積み立てが成功して資産の残高が増えるにしたがって、相場や運用に関する悩みが出てくるということです。

ヒヨコには寿命があるが、株や投信は持ち続けてもいい

ただし、このヒヨコの事例はお話を簡単にするためのもので、株や投信の積み立てとは少し違ったところもあります。

例えば、満杯になったヒヨコはそのままにしているといずれ死んでしまいますが、株や投信は(一部の例外を除き)その危険性は高くはありません。

ですから、あらかじめ決めた積立期間が満了すれば、そのまま持ち続けてもよいわけです。

ただし、その間に受ける精神的ストレスは、一時投資の場合と同様です。

Next: 投資に対する考えは十人十色、積み立て投資の欠点も考える必要がある



「定額解約サービス」を利用する方法も

相場が気になる方は「定額解約サービス」を利用し、老後の年金代わりに毎月定めた金額を解約してもよいと思いますが、この「定額解約サービス」にも欠点があり注意が必要です。

このサービスは毎月決まった金額を自動解約するものですから、保有する投信の時価が下げたときに多くの口数を解約することになりますし、逆に相場が上がったときに解約する口数は少なくなります。

つまり、相場が高いときに少なく解約し、逆に安いときにたくさん解約してしまうことになるわけです。

これは、積み立て時の「ドルコスト平均効果」の裏返しで、平均解約単価を下げる方向に働いてしまいます。

それを避ける方法として、金額ではなく株数(や口数)を決めて解約するという手法がありますが、その場合、解約する金額は相場動向によって毎月変動しますから、これもストレスになるでしょう。

投資に対する考えは十人十色

投資に対する考えは十人十色です。年齢や保有資産の規模も違いますし、株価変動に対する気持ちの上での許容度も違いますし、ライフプランもひとそれぞれです。

たしかに積み立て投資には優れた面がありますが、すべての人が等しくその効果を享受できるわけではありません

昨今は、金融庁の旗振りもあって積み立て投資は万能のように言われていますが、上記のようにもう少し深いところまで考える必要があるように僕は思います。

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一緒に歩もう!小富豪への道』(2018年7月26日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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