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上司への報告が苦手…そんな人に教えたい「図解報告書」作成テクニック=久恒啓一

上司にとって「できる部下」と「できない部下」の差はどこにあるのでしょうか?ベストセラー『図で考える人は仕事ができる』の著者で、多摩大学経営情報学部教授の久恒啓一さんによると「できる部下は早い段階から報告してくれる部下」とのこと。

その報告に役立つのが「図解報告書」です。ここでは旅行会社の社員の作った図解報告書を例に、そのメリット、書き方を解説します。

できる部下になるための近道「図解報告書」を使おう!

上司は「報告を欲しがる人種」である

上司というのはたいてい心配性です。部下のしている仕事が心配で心配で仕方がありません。「あいつ、ちっとも報告してこないけど大丈夫だろうか」と。

上司から見ると、部下の仕事というのはどこかが不足しているものです。にもかかわらず、まったく報告をもらえないと不安になってきます。不安を解消したいものですから、「あれ、どうなっているんだ?」と部下に聞くことになります。

しかし、上司に聞かれてから報告するようでは、上司の信頼を得ることはできません。上司に聞かれる前に、絶えず報告をしておくことが必要です。

とはいえ、上司というのはわがままなものですから、忙しいのに長々と報告をされると腹が立ってきます。

実は、それほど詳しい報告を求めているわけではなく、「今この件についてやっています」とか、「今この段階です」といった程度の簡単なものでいいのです。上司は自分の不安を解消するために、何らかの情報とコミュニケーションが欲しいだけなのです。

部下から見ると、上司というのはいつも「困った存在」です。いい上司というのはほとんどいません。「いい上司には一生に2人しか出会わない」などと言われているほどです。

要するに、上司というのは、「報告を欲しがる人種」だと思っていれば間違いないと思います。絶えず報告をしてくれる部下は可愛くなり、報告をしてくれない部下は憎くなってくる。そういう人種なのです。

「できる部下」と「できない部下」の違い

できない部下、失敗する部下というのは、締め切り日にいきなり100点のものを上司のところに持っていこうとします

ところが、100点どころか方向性が全く間違っていて0点であることも少なくありません。「もう時間がない。明日プレゼンテーションがあるのに」となってしまい、結局間に合わせることができずに、「できない部下」の烙印を押されてしまいます。

上司から見ると、「80点のものを1日前に持ってくる部下」と、「50点のものを1週間前に持ってくる部下」では、後者のほうがよい部下」です。どんなに優秀な部下でも、いつも必ず80点のものを出せるとは限りません。50点のものでもいいから、あらかじめ見せてもらいたいのです。

上司は、早い段階で方向性が間違っていないかどうかだけは確認しておかなければなりません。方向性が間違ったまま進んでしまっては、どんなに優秀な部下でも失敗します。

そこで、たとえ20点でも30点でもいいから、早い段階で見せてもらい、方向性の確認をしておきたいのです。方向性さえ確認しておけば、あとは割と安心して部下に任せることができますから、できるだけ早い段階から報告をしてもらいたいと思っています。

ところが、上司への報告のときに、文章にして書類を持っていくと、案外トラブルになることがあります。上司は、報告の内容よりも文章の出来具合の方に意識がいってしまって、「『てにをは』が違っているじゃないか」とか、「接続詞が間違っているじゃないか」というような細かな指示をするようになります。

こういったことが何回か続くと、上司は中身よりも文章の方に腹が立ってきます。一方、部下のほうも、報告するのが嫌になってきます。結局、「書き直せ!」ということになって、トラブルが起こるのです。

「図解報告書」は時間短縮、話し合いの効率化にも効果的

報告書に細かく書けば、必ず細かい点を指摘されてしまいます。人間は、細かいことを読んだり聞かされたりすれば、細かいところに意識がいってしまいます。それは避けようのないことです。ですから、報告をするときは大まかなことだけ伝えて、聞かれたときに細かく説明するようにすればよいのです。

図解報告書なら「てにをは」も接続詞もほとんどありませんから、上司も細かいことには目がいかなくなります。おそらく、大きな枠組みでの話し合いをすることができるでしょう。

また図を見せるだけなら、文章を読んでもらうのと違って、短い時間で報告することが可能です。忙しい上司でも見てくれるはずです。

「課長、1分いいですか」と言われて断る課長はおそらくいません。課長のほうが興味が持てば、1分が5分に延びることもあるでしょう。ちなみに、私は課長時代に、「課長、15秒いいですか」と言われたことがあります。もちろん、断れませんでした。

なお、上司が不在のときにも、図を使って報告すると楽です。報告書を1枚の図にして、付せんを貼って「このようになりました。おかげさまで順調にいきました。ありがとうございました」とでも書いて机の上に置いておけば、細かい報告をしなくても済むこともあります。

Next: これぞ好例!旅行会社社員Aさんが作った一目瞭然の図解報告書


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文章と箇条書きを中心とするコミュニケーションは、組織の生産性を3割ほどもダウンさせているのではないか。こういった観点から私は過去20年にわたって、「図解コミュニケーション」という考え方を提唱して活動を続けてまいりました。図解コミュニケーションの核心は、理解力や伝達力の向上以上に「考える力」の獲得にあります。企画力、構想力、思考力を鍛えることが個人にとっても組織にとっても喫緊の課題です。受講者との交流を大事にしながら、図解コミュニケーションの達人を数多く輩出していく場にしたいと念願しています。

旅行会社社員Aさんが作った一目瞭然の図解報告書

この図は、旅行会社の社員Aさんが上司から「旅行企画を考えてほしい」と指示され、その報告書をつくったものです。

もちろん、いきなりこの図ができたわけではありません。報告書になるまでに、Aさんは大枠を詰めるための相談を何度も上司としています。

Aさんは簡単なグラフと図を見せながら、マーケットの設定について上司と相談しました。

「日本の社会は今後も少子高齢化が進むといわれています。高齢化社会になれば、生涯学習というテーマが出てくると思います。それに、少子化が進めば、一人の子供に対してかける教育費用が増えてくるでしょう。今回、学習活動というテーマで企画をまとめて提言したいと思いますが、いかがでしょうか」

「少子高齢化社会に注目してその方向に進んでいけば、わが社も大きく間違うことはないだろう。その方向で進めてくれ」

こうした合意ができて初めて、Aさんは実際の企画に入れます。上司の方も、安心して見ていられます。

その後も、Aさんは上司への小さな報告を重ねながら、出来上がったのがこの図です。これは具体的な企画内容と同時に、そのコンセプトもわかるような報告書になっています。

最大のメリットは誰もが一目で全体像がわかること

Aさんは、「旅というのは非日常の世界をお客様に提供することだ」と考え、非日常と7つの有望な分野の交わったところにマーケットが存在すると仮定して企画を練りました。

この7つの分野は、財団法人余暇開発センター(現:公益財団法人日本生産性本部)が、今後急成長する余暇活動としてあげたものです。

このうちの学習活動のところに重点を置き、学習活動に寄せていく形で企画を実現するのがよいというのがAさんの考えです。たとえば、山・海・空のスポーツのところにある「小型飛行機免許取得の旅」や、創作活動のところにある「小説を書く旅」や、けいこごとのところにある「資格取得の旅」なども、学習活動的な旅です。

こうした分野の企画を重点的に実行していけば、少子高齢化での生き残りが図れるのではないかという企画になっています。

この図は、コンセプトが非常に明確です。報告を受けた上司は、文章でコンセプトを説明され、箇条書きで企画案を説明されるよりも、全体の構造がはっきりとわかります。図のなかのマルが重なったところに注目し、マルのなかでは特に「学習活動」に重点を置いていることが示されているからです。

あとは、上司の裁量次第です。他のメンバーにもこの図に企画案を書き込ませて、もっとアイデアを集めていくこともできます。この図を持ってさらに上の上司に見せ、「この方向で進めたいのですが」と言って了解を取り付けることもできるでしょう。社長に報告するときにも、この図を見せるだけで十分です。

社長から平社員までの誰もが、見ただけで全体像や構造がわかるというのが「図解報告書」の最大のメリットです。子会社や外部の人に説明するときも、「図解報告書」があればコミュニケーションミスが減っていくのではないでしょうか。

【関連】伝わる!仕事の文章術~ラブレターとビジネス文書の違いを言えますか?=久恒啓一

久恒啓一メールマガジン 図解達人への道』(2015年10月8日、15日、22日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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