ロシア空軍機がトルコ空軍機に撃墜された事件は、詳しく新聞やTVで報道されていますので皆様熟知されていると思います。
私が気になるのは、トルコがロシア爆撃機を撃墜した後、撃墜されたパイロットの救助に向かったロシア軍ヘリコプターを、シリア反政府勢力(反アサド大統領派)の「自由シリア軍」が米国製TOWミサイル(編注:本来は対戦車ミサイル)で撃墜した事実です。
私の疑問は、彼らは米国製TOWミサイルをどこから入手したのか?この武器の使用方法をどこの国の武官が教育したのか?ということです。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)
「トルコ・米国・イスラム国」同盟~密売石油の一部は日本へも
IS爆撃前に親切な警告ビラを撒く米軍
まず、ロシアによる空爆動画は以下です。ISの石油施設やタンクローリーを標的にしています。
■ロシア爆撃機がIS石油施設を空爆する様子
■ロシア爆撃機がIS石油タンクローリーの車列を空爆する様子
いっぽう以下の(カ)は、米軍の空爆のルールを示す写真です。やっと米国もISの石油密売タンクローリー車列に空爆を開始しましたが、空爆予定時刻の45分前にビラを撒いて車列に警告をするルールになっています。
民間人運転手(?)がタンクローリーから逃げるのに、45分の猶予を与えているそうです。この報道では、空爆事前警告ビラのアラビア語の文章も写真に載っています。
ISの密売が原油価格低迷の原因に
では、問題のISの資金源となっているシリアやイランへの石油密輸はどの程度のものかを調べてみましょう。統計資料がないので決定的な数字は存在しません。
(キ)は、米国上院委員会に提出されたISの原油生産に関する資料です。この資料ではISの原油生産量を日量2万5000バーレルから8万バーレルと推定しており、原油価格が下落した理由の1つとしてIS勢力の拡大が考えられると結論しています。
27トンタンクローリーの積載量は約3万リットル=189バーレルです。これで割り算すると、毎日、石油運搬用のタンクローリーが最低132台~最高424台必要となります。
ISの石油密売、驚くべき手口
さて、複数の報道記事から、驚くべき事実を抜き書きします。中にはシリアのアサド政権にISが石油を売っているケースもあります。
- 鋼管ではなく、プラスチック管によるパイプラインがトルコ領内にまで敷設されている
- 毎日タンクローリー平均100台で運搬している
- ISの売り先はイラク、イラン、トルコのクルド人地域の零細精製業者
- イラク・イラン政府の各地軍司令官に賄賂を渡し、石油輸送を黙認するように手配
- IS→クルド人地域の商人→トルコ、イラン、ヨルダンへ転売
- サダム・フセイン政権時代の元イラク情報省の高官で、現在、石油密輸業者(仲介業者)のSami Khalafは「27トン積みタンクローリー1台を4200ドルでISから購入し、ヨルダンに15000ドルで転売している。だいたい1週間に8台分の商売をしている」と証言
IS自身が運搬するのではなく、密輸業者、仲介業者がタンクローリーと運転手を用意して運搬するケースも多いようです。
次ページでは、ISによる石油密売の買い手は一体誰なのか?さらに詳しく見ていきます。
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ISによる石油密売の買い手は一体誰なのか?こちらの海外記事のポイントをご紹介します。
トルコ大統領一族がIS支援、バイデン米副大統領も言及
トルコ大統領のレジェップ・タイイップ・エルドアン一族と、トルコ諜報局がISを支援している。
米国のジョー・バイデン副大統領は2014年10月、ハーバード大での講演中に、トルコ政権はISに何十億ドルもの資金援助と何千トンもの武器を供与していると示唆。しかしトルコ政府から、米軍の重要な空軍基地となっているトルコのIncirlik基地の使用を禁止すると脅かされて、発言を撤回した。
そのバイデン副大統領の講演動画は以下です。
ISを作ったのは米国、イスラエル、トルコ
ISを作ったのは誰か?ISは過去3年間にわたって、米国、イスラエル、トルコの専門家の協力を得て、トルコ・シリア国境近く、トルコ領内Konya地区の秘密基地で訓練をしている。
※How the West Created the Islamic State
ISの資金源は石油密売。一部は日本にも
ISの資金源は、イラクMosul地域の油田からの原油。トルコ大統領の息子がこのIS石油密輸のキーマン。息子のビラル・エルドアンは海運会社を5社ほど保有しており、欧州の企業(たぶんグレンコアのような総合商社?)を経由してアジア地域の国々に石油輸出をしていると言われている。
ビラル・エルドアン所有の海運会社はレバノンのベイルート、トルコ南部のCeyhan港に自社専用埠頭を保有しており、日本に寄港するタンカーに積んでいる。
※Turkish President’s daughter heads a covert medical corps to help ISIS injured members, reveals a disgruntled nurse
トルコ・エルドアン大統領の釈明は信用できない
トルコ野党の副党首は、メディアのインタビューで、
エルドアン大統領は国際運航会議で、「息子のビラルは違反行為はしておらず、日本の複数の正規に登録されている企業と普通の商業取引をしているだけだ」と弁解しているが、実際のところビラルは、首まで浸かったISの共同正犯だ。
しかし父親が大統領職にいる限り法的制裁から免れるだろう。息子の海運会社BMZ社はISの原油を運搬しており、これは一族のビジネスで、複数の親戚が大株主となっており、トルコの複数銀行がBMZ社に融資をしている
と語っている。
また大統領の娘は、トルコ領内に病院施設を設営してIS戦闘員の治療を行っている。IS負傷者をトルコ軍トラックで運搬しており、毎日シリア領内との往復運搬を担っている。
さらにトルコ大統領は、シリアのアレッポの工場群を解体して売却し、シリア古代の考古学的価値のある重要文化財をAntiochの国際市場で売却している。
Next: トルコ経済に黄信号/本当の「敵味方」が明らかになる国際情勢
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トルコ経済に黄信号。石油密売ビジネスの意外なリスク
以上の推測記事を交えた事実関係(?)から出てくる私の妄想は…
ISの石油密輸ビジネスは、彼らにとって非常に美味しい商売である。なによりも低価格。
これをトルコの政権トップ一族が商売にしているのであれば、どこか大手商社(スイスの大手商社等?)に転売が必要となる。もちろんその大手商社は、さらにどこかへ転売することになる。
タンクローリーが大量に爆破され、施設も破壊されれば契約不履行となる。契約不履行は破産や倒産につながる可能性がある。融資しているトルコの商業銀行も危なくなるかもしれない。
これを防ぐにはデリバティブ取引、ヘッジ取引で保険を掛ける必要がある。いずれにせよ誰かが痛い目に遭うはず。
本当の「敵味方」が明らかになる国際情勢
これから本当の敵味方が見えてきます。トルコに接近していたロシアは、トルコに対して非常に強硬な態度に出るでしょう。ロシア・シリアのグループがフランスとともに、徹底的にISを攻撃するはずです。
ドイツは微妙です。米国と同様にISを訓練していたという噂があるからです。またロシアはトルコに対して戦闘行動は控えても、経済制裁を課すはずです。天然ガスの供給をロシアが止めれば、トルコはこの冬、厳冬を迎えることになります。トルコの天然ガス需要の6割以上をロシアが供給しているからです。以下の(ク)はトルコの天然ガス供給国を示しています。
他方、米国はトルコの肩を持つでしょう。つまり「米国・トルコ・イスラム国(IS)」のグループが、否が応でも薄らと見えてくるでしょう。「敵の敵は味方である」という発想が、ISという怪物を産んだのです。
※太字はMONEY VOICE編集部による