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Frame China / Shutterstock.com

今後も乱高下が避けられない「上海総合指数」の気になる売り材料=田代尚機

11月27日に急落した上海総合指数。中国ではたびたび株価が大きな理由もなく急落するということはあるが、今回は気になる売り材料がある。それは当局が株価の下支え政策を止めて、市場を正常化させようとしている点だ。中国当局の動きに、売買の8~9割を占める個人投資家が右往左往させられている。(『中国株投資レッスン』)

チャートでは読めない中国株の急落、注目される証監会の動向

中国株は大きな材料もなく急落することがたびたびある

上海総合指数は27日(金)、急落した。5.48%下落、終値ベースでは11月3日以来の低い水準となった。

上海総合指数 日足(SBI証券提供)

26日までのチャートの動きだけを見たのでは、こうした急落を予見するのは困難だ。

11月中旬以降、長い日柄調整が続いており、25日は0.88%上昇、26日は日柄調整の上抜けに挑戦して跳ね返される格好で0.34%下落した。強いて言えば、上抜けに失敗したので少し売られるかもしれないと思ったが、ここまで下げるとは予想しなかった。

当日、大きな材料があったのだろうか?

日本のマスコミ報道を見ると、証券会社幹部に対する取り調べや、工業企業利益の悪化、IPOによる需給悪化懸念などを理由にしているところが多い。

証券会社に関する話であるが、確かに証券株は大きく売られている。取引のあった24銘柄中、19銘柄がストップ安水準で引けている。ただし、寄り付きから激しく売られていたわけではない。朝から悪材料があって安寄りしたのは確かだが、指数が下落するにつれて、株価に敏感な証券株への売りが加速したとみるべきであろう。

中信証券、国信証券、海通証券などの証券会社の幹部への取り締まりについて、最大手の中信証券においては、9月の時点で、すでに複数の幹部が取り調べを受けている。また、主管部門にあたる中国証券監督管理委員会の副主席が11月上旬、取り調べを受けている。業界の不祥事はこの日の朝、初めて明らかになったわけではない

10月の工業企業利益が4.6%減益で、減益率が4.5ポイント拡大したことが株価の原因であるといった説明については、少々無理がある。市場が企業業績の好転を予想していたならまだしも、景気減速はコンセンサスとなっている。そもそも、本土投資家はこの統計にほとんど注目していない。

IPOについては、確かに影響はあるだろう。ただし、資金ひっ迫が起こりそうだといった懸念は日程がはっきりした23日から存在していた。これが決定的な要因とまではいえないだろう。

ただし、今回はこれまでの「謎の急落」とは違う可能性も

これまでも、株価が突如として急落することは度々あったが、必ずしもはっきりとした理由がある時ばかりではない。今回のように、理由が明確でない場合もある。

本土市場は個人投資家の売買が8~9割を占める市場である。個人投資家は上がるから買い、下がるから売るといった傾向がある。

株価形成が不安定である。この日も、前引けの段階では1.5%程度の下げでしかなかった。結局この日は後場寄り後、たまたま、売りが売りをよぶ形になったが、そこから買い戻されてプラスで引けた可能性もある。

本来なら相場のアヤで終わるはずの動きが間違って一方向に動いてしまったといった感覚である。

とはいえ、気になる売り材料が1つある。

それは当局が株価の下支え政策を止めて、市場を正常化させようとしている点である。これはIPOの再開だけではない。

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証監会の動きに右往左往させられる個人投資家

25日の報道によれば、証監会は、証券会社の自己売買について、毎日、売り買いを差し引いたネットの取引で買い越しを要求していたが、こうした措置を取り消した。

証券会社は夏の株価急落時の買い支えに大きな役割を果たした。自己売買に加え、証金公司を通しての2600億元に渡る買い支えや1200億元に及ぶETF購入など、業界全体で総額5000億元を優に超える資金を投じて、株価の下支えを行っている。これを解消させ始めたということである。

一方で、市場の管理を強化している。国内の証券会社は、欧米金融機関をまねた派生商品取引業務を勝手に始めてしまったが、証監会はこれを止めさせる指導を始めた。

信用取引については、その総額が膨らむことに証監会は警戒感を示しており、信用取引業務に対する行政指導を厳しくしている。

証監会のこうした動きが市場参加者の投資行動を右往左往させている。

証監会の政策スタンスから考えると、株価が上がるにつれて売り手は増えそうだ。一方、そうした状況でも株価が上昇するためには大量の資金が市場に流れ込まなければならないが、当局の管理が厳しく、それが難しい状態である。こうしてみると、株価は今後、上がりにくいのではないかといった連想が働いてしまう。

中国株式市場、今後の展望を予想

もちろん、強い買い材料がある。中国の構造改革が大きく進もうとしている最中であり、戦略的新興産業を中心に大きく成長する企業が今後、たくさん出てきそうである。全面的な改革への期待が最大の買い材料である。

証監会は、株価を下げたいと思っているわけではない。IPOを活発化させ、戦略的新興産業に対してできるだけ多くの資金を供給しなければならず、そのためには株価を安定的に上昇させたい。株価が下がればそれを支えるはずである。下値不安は小さい……。

相場を安定させるには、機関投資家を増やす必要があるが、すぐには難しい。

当面、本土市場は荒っぽい動きを繰り返しながら、上昇していくのだろう。

ならば、A株や関連ETFについては、大きく下げたら買って、大きく上げれば売ればよい。個別銘柄では、景気敏感株を中心とした大型株が急騰する相場は当面、来ないだろう。小型材料株が有利な相場が続きそうである。

(11月28日作成、有料メルマガから一部抜粋)。

【関連】中国に仕掛けられた罠。「人民元のSDR構成通貨採用」で笑うのは米国

中国株投資レッスン』(2015年12月3日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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