「デフレから完全に脱却していない現状での消費再増税」に懐疑的な立場をとる作家の三橋貴明さん。当然、新聞業界についても「財務省の手下として散々に消費増税を煽っておいて、自分たちだけ軽減税率適用を求めるのはおかしい」と批判的に見ています。
記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015年12月16日号より
※本記事のタイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです
日本国民を貧困化させる消費税増税路線に加担した新聞業界
消費税再増税を既成事実化する軽減税率の議論
文化放送『おはよう寺ちゃん活動中!』に出演します。
『おはよう寺ちゃん』などで何度も繰り返してきた通り、消費税再増税を「前提」とした軽減税率の議論が進んでいます。もちろん、消費税再増税を既成事実化するためです。
デフレから完全に脱却したわけではないにも関わらず、しかも14年4月の消費増税が明確に「失敗」だったにも関わらず、安倍政権は消費税再増税路線を邁進しています。
そして、「そもそも、消費税を上げるべきなのか」という議論を封殺するため、政治家やマスコミでは「軽減税率」の議論がクローズアップされ、本質論が忘れられてしまいました。
挙句の果てに、財務省の手下として散々に消費増税を煽った「新聞」業界は、軽減税率を認められることになりそうです。
一方、新聞は、毎日配達される体制の整っている一般紙については全国紙、地方紙を問わず対象となる方向だが、詳細は今後詰める。書籍は長期的な検討課題となる見通しだ。
この種の議論が本当に愚かしいと思えるのは、新聞に軽減税率を適用されたところで、消費税再増税でデフレが深刻化していき、国民が貧困化すれば、結局は新聞業界も収益が落ち、苦境に陥るという話です。
「自分たちは軽減税率を適用された。助かった…」という話にはなりません。
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消費税増税を煽ってきた新聞が軽減税率の適用を受ける愚かしさ
ある意味で、デフレーションとは安全保障に似ています。大震災が起きたとき、地域の住民は富裕層を含めて全員が被災者にならざるを得ません。
デフレも同様で、一時的に「デフレビジネス」ということでデフレを活用して儲けていても、国民が次々に貧困層に落ちていくと、結局は勝ち組のビジネスも衰退していきます。
もっとも、一般企業の場合は、「日本国民が貧困化したなら、グローバル市場へ」という選択肢は取れないことはありません。とはいえ、新聞は違います。
新聞ほどローカルなビジネスは、他にないのではないでしょうか。新聞の「ユーザー」は日本語を話す日本国民の読者であり、日本語を読む読者向けに広告を出す企業です。
日本国内で、日本語を話す日本国民を相手にビジネスをしているにも関わらず、日本国民を貧困化させる消費税増税路線に加担する。その「報酬」として、自分たちは軽減税率の適用を受ける。これが、日本の新聞業界の現実です。
もっとも、日本国民が貧困化していけば、いずれにせよ新聞の業績も悪化していかざるを得ません。
これほど愚かな連中は、他にいないと思いたいところですが、実際には結構います。
要するに、「国民経済はつながっている」ことを理解せず、自己利益追求に専念し、最終的に自分の足も引っ張られる愚者が、デフレ下の日本で増えてきたというわけです。
この種の閉塞的な状況を打破するためには、「散々に消費税増税を煽ってきた新聞が、自分は軽減税率の適用を受けるなど、おかしいでしょう!」という正論を、国民が共有する必要があると思うのです。
『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015/12/16号より
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