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サウジによる「ニムル師の処刑」は原油底打ちのための出来レースか?=藤井まり子

この「出来レース」論は勘ぐりすぎかもしれません。しかし、地政学的リスクの高まりによる原油価格の下げ止まりは、財政難に悩むサウジアラビアはもちろん、直近の商品安に苦しむ南アやブラジルにとっても「良いことずくめ」なのです。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)

米国、サウジ、イランの出来レース?原油価格は安定するか

原油価格の下げ止まりは各国にとって「良いことずくめ」

サウジアラビアは、新年早々の1月2日、アメリカの制止を振り切って(?)、「サウジ王室に批判的だったイスラム教シーア派の有力指導者ニムル師の処刑」を執行しました。

と同時に、国内への「みせしめ」として、「サウジ国内の過激派の囚人:47人」の死刑を同日に執行しました。

このニムル師の処刑をきっかけに、サウジアラビア(アラビア語を話すスンニ派)とイラン(ペルシャ語を話すシーア派)の関係はさらに悪化、中東の地政学的なリスクは高まりました。

歴史的に「原油価格が1バーレル30ドルを下回る」と中東で大規模な戦争が起きてしまいます。が、直近の1バーレル35ドル前後でも、中東は十分に「きな臭く」なっているのです。

「サウジ王室によるニムル師の処刑」のニュースを最初に受けて、当メルマガでは、最初は、「これは原油価格を釣り上げるための『アメリカとサウジとイランとが仕組んだ出来レース』かな?」と勘ぐってしまいました!

なぜならば、サウジとイランとの仲が悪化したということで、待ってましたとばかりに「中東の地政学的リスク」が高まれば、原油価格が下げ止まり、「原油価格の下げ止まり」はサウジにとってもイランにとっても、さらには「原油輸出を解禁したばかりのアメ
リカ・シェール企業」にとっても「良いことずくめ」だからです。

財政難に悩むサウジアラビア以外にも、「地政学的リスクが高まって原油価格が下げ止まれば」、直近のコモディティー安に苦しむ南アフリカやブラジルの経済にとっても「良いことずくめ」だからです。

「中東で地政学的リスクがやや高まって原油価格が安定し始めたので、イエレンもオバマもやれやれと肩をなでおろしていたら、中国の財新が国家の特命を受けて、嫌がらせに『悪いPMI統計』を発表して邪魔をした」なんていうストーリーも成り立つわけです。(^^;

そうはいっても、まさか、この「出来レース」論は勘ぐりすぎかもしれません。

さて、かつてのサウジアラビア王家は、「金持ち喧嘩せず」を絵にかいたような「スーパーリッチな王家」でした。ところが、2011年に「中東の春」が巻き起きて、さらには、原油の大幅安が1年以上も続くと、その「金持ち喧嘩せず」の「スーパーリッチなサウジアラビア」のかつての面影は、今となってはほとんど残っていません。

Next: 原油価格は安定へ?財政破綻説まで囁かれるサウジの台所事情



今度こそ原油価格は安定?財政破綻説まで囁かれるサウジの台所事情

イランでパーレビ国王がイラン革命で国外追放されて以来の1980年から、「サウジ王政も、それほど長持ちしないのではないのか?」といった素朴な疑問は、中東の専門家の間で周期的に浮上していました。

が、その後、サウジは「巨大なバラマキ」で、国内の不満分子をどんどん骨抜き・飼い殺ししてゆきます。

ところが、ところが、2015年に入るや否や、そのサウジ王家では強硬な対外姿勢が目立つようになります。財政難で血の気の多くなったサウジ王家は、混迷するイエメン内戦やシリア内戦に進んで関与、「中東の覇権を狙うイラン」の増長を許さない構えを鮮明にしてゆきます。

「中東の春」以来の「国内のシーア派の不満分子の高まり」を受けて、サウジアラビアも国内過激派の活動を封じ込めようと必死なのです。

このサウジアラビア、2016年の今では、ブラジルと並んで「財政破綻」が懸念されている国家になり下がっています。

原油安で財政事情が厳しいサウジは、2016年予算でおよそ10兆円相当の財政赤字を見込みんでいます。それでも、サウジは補助金削減に着手。ガソリンや電気料金を一斉に値上げしています。大盤振る舞いの「バラマキ」で国内の不満分子を骨抜きにする手法が、いよいよ壁にぶち当たってきているのです。

余裕のなくなっているサウジ王家は、かつての注意深い外交方針から、衝動的な介入政策へと舵を切り替えているます。この王家の中枢で鍵を握っているのは、衝動的な性格のム
ハンマド副皇太子(30)。もちろん、この王家とて一枚岩ではありません。衝動的なムハンマド副皇太子には敵も多いです。今のサウジアラビア王家には常時「軍事クーデターのリスク」が付きまとっています。

内憂外患に直面する「巨大王家サウジのカントリーリスク」の高まりは、ストレートに「サウジアラビアvs.イラン」の「対立の構図」を深め、そのまま「地政学的リスク」の高まりに直結、2016年の原油価格に行方にも大きな影響を与えそうです。

今度こそ、原油価格は安定するかもしれません!

1月4日の原油先物市場は、「中国リスク」の高まりを受けても、たいして下落しませんでした。

2015年の原油価格はこういった「地政学的リスク」にまったく反応することなく大幅続落を続けました。

2016年、原油をはじめとする資源コモディティー価格は、こういった「地政学的リスク」を正当に反映し始めて、そろそろ価格が安定し始めるかもしれません。

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藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2016年1月5日号より一部抜粋、再構成

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