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2016年は世界的景気後退と金融危機の年?著名エコノミスト12人の予想

11月下旬から12月にかけて、欧米の各メディアは2016年の景気動向を占う市場予測を出しました。そのすべてといってもいいのですが、2016年は景気後退、あるいは長引く不況を予想しています。(『カレイドスコープのメルマガ』)

※不許複製・禁無断転載(本記事の著作権はメルマガ著者および当サイトに帰属します。第三者サイト等への違法な転載は固くお断り致します)

2016年から、世界的な景気後退と金融危機が表面化する

異口同音に景気後退と市場の危機について警告するエコノミストたち

以下は、ブルームバーグがよく取り上げている金融の世界の「専門家14人による2016年のスッキリ明快・市場予測」です。

ブルームバーグを取り上げる意味は、この世界的な「経済・金融・マーケット専門メディア」が世界の金融資本の影響を強く受けており、世界の市場を誘導する企業メディア群と連動しているメディアだからです。

ブルームバーグは、明らかに「1パーセント」のグローバリストのためのメディアですから、この14人の専門家(彼らは、金融のプロパガンダと密接な関係を持つ証券会社や、投資銀行のストラティジストたち)のようなマーケティング発想から市場環境のキートレンドを読み解くことが大切です。それが、2016年の大きな流れになっていくかもしれません。

ブルームバーグのこの記事の冒頭には、「トップクラスの金融専門家の何人かは、景気後退と市場の危機について警告している」と書かれています。あのブルームバーグにして、これです。

ここでは14人のうち、歯切れの悪いアラン・パトリコフ(Alan Patricof)と、ジョセフ・ラヴォナ(Marc LaVorgna)の2人を除く12人の予想を取り上げています。

それぞれから出されている警告や投資のヒントには、いちいち解説を加えず原文の粗訳のままにしてあります。太字のスミ文字の箇所は、私が強調したいところです。

(1)「世界不況に注意のこと!」-ルチル・シャルマ

ルチル・シャルマ(Ruchir Sharma)は、「世界の頭脳100人」にも選ばれたという天才的な頭脳を持ったインドの著名な投資家です。現在は、モルガン・スタンレーの新興国投資担当マネージャーを務めています。日本語での著書には、「ブレイクアウト・ネーションズ」があります。

ルチル・シャルマの警告と投資のヒント:

われわれは、今まさに、世界的な景気下降から放たれた大きな衝撃を受けている。そして、次の衝撃は、どう見ても中国から始まりそうだ

中国は、巨額負債の重圧、過度の投資と人口減少が複合的に作用して、経済成長を徐々にむしばんでいる。

一方、東ヨーロッパから南アジアの相対的に負債額の少ない国々は、景気サイクルの次の転換を乗り切っていく上で、良いポジションについていると言える。

(2)「債券は茨の道を目の前にしている」-ダン・ファス

ダン・ファス(Dan Fuss)は、ルーミス・セイルズ社の副会長。そして、200億ドルを取り扱っているルーミス・セイルズ債券ファンドのポートフォリオ・マジャーです。

ダン・ファス警告と投資のヒント:

(マクロの)標準となっている米国の10年もの財務省証券(10年米国債)の利回りは、2016年中に、2.6%から2.8%に上昇するかもしれない

しかし、これは私の予想であって、現在の地政学的な混乱のために、正確な予測を出すのはかなり困難である。

こうした厳しい時代にあって、ポートフォリオに債券を組み込んでいる投資家は、米国債と5年から12年満期の投資適格企業の債券(社債など)を組み合わせることを推奨したい。

ハイ・イールド債(高利回りのリスクの高いジャンク債)は、2016年では最高の成功のチャンスを持っている。

(3)「どの株式を見ればいいのかが重要」-トーマス・リー

トーマス・リー(Thomas J. Lee)は、ファンド・トラスト・グローバル・アドバイザーズ(Fundstrat Global Advisors)のマネージング・パートナーです。

トーマス・リー警告と投資のヒント:

普通株は2016年は良さそうである。特に、銀行と優良企業の株式では良い

連邦準備制度理事会(Fed)の金融引き締め(利上げ)によっては米国の銀行は利益を上げるだろう。また、景気拡大にともなって、銀行は自己資本利益率を押し上げるだろう。

とにかく、優良株を見つけることである。経済が上向くことによって、より強い収益を生み出す能力があるだろう。

Next: (4)「EUは、いまだ最大の問題に直面している」-レベッカ・パターソン



(4)「EUは、いまだ最大の問題に直面している」-レベッカ・パターソン

レベッカ・パターソン(Rebecca Patterson)は、ベッセマー・トラスト(Bessemer Trust)の主任投資役員。ベッセマー・トラストは1000億ドル以上の資産を管理運用しています。

レベッカ・パターソン警告と投資のヒント:

2016年、ユーロッパにとって、もっとも大きいリスクは「難民危機」である。それは、EUに対するもっとも大きい挑戦だ。

パリの恐ろしいテロ攻撃によって、難民危機が政治的、政策的な方針変更をもたらしたり、消費者の消費パターンを変えさせてしまうというリスクを増大させている。

そのどちらも、ヨーロッパの経済成長と企業収益に関してセンチメントの上で感情的に重苦しい雰囲気を作り出している。

そうした危機感があるものの、ヨーロッパの株式は“重量オーバー”の状態のままであり、ユーロは弱含みの状態にある。

今、世界的に多くの投資家が、何百万人もの移民がヨーロッパ経済と市場にどんな影響を与えるのか、いろいろ想定はしているが、その難民危機が生成する副次的な危機が、来年、どんなトリガーとなるのか、誰も確かな答えを出していない。

(5)「利回りは上がると予想する」-ジム・キャロン

ジム・キャロン(Jim Caron)は、モルガン・スタンレー投資経営陣の常務。

ジム・キャロン警告と投資のヒント:

来年は、インフレのリスクが再び、市場に戻ってくる

インフレのトレンドは、30年米国債の利回りが、おそらく3.75%に向けて上がっていくことによって鮮明になるだろう。

人々が経済情勢は改善されていると考えつつも、一方では連邦準備制度理事会(Fed)がゆっくり金利を上げていくので、冷や汗をかかされる場面が何度かあるだろう。

(6)「配当のより一層の選別が強化される」-ラス・コースタリッチ

ラス・コースタリッチ(Russ Koesterich)は、世界最大の資産運用会社ブラック・ロック(Black Rock)の最高投資責任者である。

ラス・コースタリッチの警告と投資のヒント:

2016年になると、連邦準備制度理事会の重要性は、ますます薄れていく。

また、ジャネット・イエレンは徐々に利上げを進めていくだろうと考えている。

経済成長は、世界的に鈍化したままの状態が続くものの、投資家たちの間では、高利回りの資産への渇望が増大していくだろう。

財政危機の前に買った高利回り債券に依存していた投資家は、それらの証券がすでに尽きてしまっている。

高収益の債券には、いままで以上リスクが伴うが、だからといって、それをやらなければリターンは得られない。

Next: (7)「天然資源の価格に大幅な回復が見られ始める」バーバラ・バーン



(7)「天然資源の価格に大幅な回復が見られ始める」-バーバラ・バーン

バーバラ・バーン(Barbara Byrne)は、バークレイズ・キャピタルの投資銀行部門の副会長。

バーバラ・バーンの警告と投資のヒント:

2016年は、天然資源の価格に大幅な回復が見られ始めるだろう。きわめて重要なことは、それが政治的理由からであるということだ。

今、ノルウェイ、サウジアラビアなどの政府系投資ファンドが下落し始めている。われわれは、それについても反転すると見ている。

これらの国々には、外貨準備の変動に対応できるだけの余裕はない。

したがって、今後は、より安定した原油価格に移っていくだろう。安定した価格とは、1バレルあたり60ドル程度である。

そして、同時に、現在の需要を満たすことに集中している持続可能な経済に寄与するエネルギー関連に投資された資金は、おそらくうまくやるだろうと考えている。

(8)「ラテンアメリカに学ぶ」-トゥリオ・ベラ

トゥリオ・ベラ(Tulio Vera)は、JPモルガンのラテンアメリカ民間銀行の世界投資のチーフ・ストラティジストである。

トゥリオ・ベラの警告と投資のヒント:

アルゼンチンから一条の光が差し込んでくる。それは、アルゼンチンだけでなく、南米地域にとっても重要である。

ブラジルの投資見通しは、今はまた不透明のままであるが、メキシコは、特に自動車産業において、米国の景気回復から利益を上げ続けている

ラテンアメリカの資産状況には、現在と来年の終わりの間に、若干の興味深いポイントが出てきている。

われわれは、これらの市場のいくつかに、再びエントリーする(投資の出動)瞬間に近づいている。

(9)「インパクト投資は癌をターゲットにするだろう」-マーク・ ハーフェラー

マーク・ ハーフェラー(Mark Haefele)は、スイスの銀行・UBSのグローバル最高投資責任者。

マーク・ ハーフェラーの警告と投資のヒント:

世界は高齢化に向かっている。そして、癌治療の需要は、一方的に高まっている。

にもかかわらず、治療法の開発や創薬の開発におけるもっもとリスクの高い段階における資本の供給は限定的だ。

ヘルスケア各社は、後の段階(癌の進行が見られた段階)の研究に集中する傾向がある。

しかし、初期段階の癌対策への投資こそが、後の長期にわたる魅力的なリターンにつながり、それが、社会に貢献することになるのであるが、初期段階への投資は薄い。

とはいうものの、投資家が、ポートフォリオを社会的価値と整合させようとしているので、「インパクト投資」として知られているこの種の実践は、より人気化する気配が見えている。

Next: (10)「中国は、まさに素晴らしい」-ヤン・ツァオ



(10)「中国は、まさに素晴らしい」-ヤン・ツァオ

ヤン・ツァオ(Yang Zhao)は、野村ホールディングスの中国担当チーフ・エコノミスト。彼は、10月6日に、中国の経済成長率 = (当年のGDP 対  前年のGDP)を、それまでの6.7%から5.8%に引き下げた男です。

ヤン・ツァオの警告と投資のヒント:

中国は、ハード・ランディングするのだろうか。そうは思わない。

GDPの成長率が5.8%に引き下げられたところで、労働市場は相変わらずバランスが保たれており、中国経済は仕事を創出している。特に、労働集約型のサービス部門については、しっかりしている。

そして、中国の国家機関の大部分が政府によって支えられているので、中国の金融業界が危機に向かって進んでいるなどということはありえない。

組織的に重要な金融機関に問題があるとすれば、中国政府は救済に乗り出すだろう。

(11)「千年紀の人々のように思考することが大切」-ケイト・コーチ

ケイト・コーチ(Katie Koch)は、ゴールドマン・サックス・アセットマネージメントの常務。ゴールドマン・サックス・アセットマネージメントは、世界の株式の1000億ドル相当の資産を監督している。

ケイト・コーチの警告と投資のヒント:

ミレニアル世代の台頭は、長期投資と密接な関係を持っている。

彼らの消費軌道は、より急激なカーブを描いていて、ベビーブーム世代(すでに、現役を引退して消費を減少させている)と比較して増加している。

1980年から2000年までの間に生まれた世界中の20億のミレニアルの人々(※)は、即座に入手できる情報、素早い消費、健康的な暮らしを優先させるようになっているので、2016年は、特に、ネットフリックス(Netflix)、ナイキ、H&M、PCホーム・オンライン(PChome Online:台湾の電子商取引会社)に注目している。

ミレニアル(millennial)
米国で、2000年代に成人あるいは社会人になる世代。 1980年代から2000年代初頭までに生まれた人をいうことが多く、ベビーブーマーの子世代にあたるY世代やデジタル・ネイティブと呼ばれる世代と重なる。

(12)「“なんとしても”ECBからは、さらに多く」-エリック・ニールセン

エリック・ニールセン(Erik Nielsen)は、ユニクレジットのチーフエコノミスト。

エリック・ニールセンの警告と投資のヒント:

連邦準備制度理事会(Fed)と欧州中央銀行(ECB)との間の更なる相違が広がると予想してほしい。

前者のFedは、来年、2、3度の利上げをすることになっているし、後者は発表された以上に、バランスシートが拡大している。

Next: まとめ1~アメリカ、ヨーロッパ、中国、日本のうち、誰がトリガーを引くか



まとめ~アメリカ、ヨーロッパ、中国、日本のうち、誰がトリガーを引くか

この12人のエコノミストのトレンド予想から、以下の流れが見えてきます。

(1)世界経済にとっての最大の不安要因は、相変わらず中国の膨大な借金と行き過ぎた投資のツケが、いつ回って来るのか、ということ。

野村のヤン・ツァオ(Yang Zhao)でさえも、「中国の2016年は素晴らしい」と言いながら、金融当局の市場介入がなければ、ハード・ランディングする可能性を暗に臭わせているのです。

ヤン・ツァオ(Yang Zhao)が、「2016年の中国は問題なし」とする際、真っ先に挙げているのが労働市場の安定性です。

つまり、中国にとっての最大の脅威は、(水面下では握手しているのだが)アメリカ軍が南シナ海におけるプレゼンスを高めていることではなく、中国国内の所得格差がさらに開くことによって、一斉に暴動が起こることです。

こうしたレベルで問題の抽出行われること自体、中国は自由経済の一員とはなれないでしょう。

(2)それに比べて、相対的に借金の少ない東ヨーロッパから南アジアの国々の台頭が予想されるものの、ダン・ファス(Dan Fuss)が言うように、地政学的な混乱要因が世界の経済情勢を左右するまでの脅威になっている以上、アナリストたちの計算どおりにはいかない。

それは、パリの同時多発テロで、欧州先進国の過剰な反応(世界支配層の企業メディアによる一斉プロパガンダによる)を見ても分かるでしょう。
相場はマスメディア次第ということです。

(3)ほとんどのエコノミストが、FRBは、2016年に数度にわたって金利を引き上げると見ています。実際にジャネット・イエレンは今月の利上げを成功させました。

問題は、エリック・ニールセン(Erik Nielsen)が指摘しているように、欧州中央銀行(ECB)が量的金融緩和を継続しそうだ、ということ。

ギリシャ危機は収束したわけではなく、イタリア、ポルトガル、スペインに広がっていく可能性は残されています。

FRBは引き締めへ。この逆相関は何をもたらすのか。

そのまま受け取れば、ドル対ユーロで言うなら、ドル高が進み、ユーロは安くなる。円はすでにGDPの粉飾が行われているので、三つ巴の化かし合い相場になると予想されます。

FRBも、ECBも、日銀も、ロスチャイルド財閥によってコントロールされており、さらに、国際通貨基金(IMF)、世界銀行のみならず世界各国の中央銀行に指示書を出している国際決済銀行(BIS)までもが、ロスチャイルドの私物として動いています。

すると、何が見えてきますか?

アメリカ、中国の金融当局が、粉飾・捏造された経済指標を早々と出しているという点では、日本の大先輩です。そこに、安倍晋三という“稀有な”政治家によって、日本もその仲間入りをしようとしているのです。

つまり、捏造した経済指標こそが、世界金融崩壊の時限爆弾の信管なのです。その信管を引き抜くのは、人々の良心であり正義感です。そう、あなたの、私の。

そして、「不正の是正」を強く訴えて立ち上がる政治家こそが、実は世界を金融システムを大混乱に巻き込むトリガーを引く人間です。もちろん、それは、ロスチャイルドの奉公人です。

ラス・コースタリッチ(Russ Koesterich)が言うよう、成長力のある高配当の企業を見つけ出し、一瞬高値に吊り上げて利益を確定することができる投資家であれば、2016年ほど豊かな実りを提供してくれる年はない、のは確かでしょうけれど、それができる投資家はいないでしょう。

結論は、「素人は手出ししない」こと。ビギナー投資家は、「早々と足を洗う」こと。

【関連】米CNBCによる2016年米市場「10の懸念」~海運低迷、原油安etc.=矢口新

「カレイドスコープ」のメルマガ』(2015年12月28日号)より一部抜粋、再構成

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