トランプ大統領のメキシコ追加関税をきっかけに再び下げ相場となっている世界市場。しかし、本当に注目すべきは、パウエルFRB議長の利下げのし過ぎでした。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)
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「1998年型のマーケットの大波乱」の始まり
「メキシコからの全輸入品に5%からの段階的な追加関税」発言にびっくり
5月31日のトランプ大統領の「メキシコからの全輸入品に5%からの段階的な追加関税」発言にはびっくりです。
この発言については、トランプ大統領の真意は「藪の中」。NAFTAに代わるアメリカとメキシコとカナダとの間の新貿易協定が、USMCA。そのUSMCAは、民主党の妨害があって、なかなか議会で批准されない状態でした。「そのことにしびれを切らしたトランプが、議会へプレッシャーをかけるためにこういった発言をした」と、指摘する向きもあります。
一方、トランプ大統領は、「中国以外でも、本気でメキシコなどへ関税をバカスカかける算段かもしれない」という、一抹の不安は残ります。トランプ政権は、「世界中の輸入製品に関税をばかすかかけて、その関税を財源にして、巨大インフラ投資を実行するつもりなのではないのか?本気で、海外進出したアメリカの多国籍企業の工場をアメリカ国内の呼び戻すつもりなのではないのか?」といった指摘も可能です。
あるいは、「パウエルFRBが1.00%の利下げを断行するまでは、すなわち、パウエルFRBへの『利下げの督促相場』が始まるまで、こういったトランプ大統領とトランプ政権の暴走は続く」とも指摘できます。
おりしも、GAFAへの規制強化の動きが始まっています。まるで、トランプ政権は督促相場が始まることを最も切望しているみたいです。
なにはともあれ、トランプの「メキシコへの関税」発言は、ただでさえ「新冷戦の勃発」で再急浮上してきた「中国および世界経済減速」懸念を、さらに深めました(ちなみに、最初の懸念は、昨年2018年秋に起きましたね)。
日に日に深さを増している「逆イールドカーブ」はさらに深まっています!
「世界経済減速」懸念のみならず、「アメリカ経済の景気後退(=リセッション)」懸念さえも急浮上しています。
しかしながら、アメリカ経済のファンダメンタルは、その人口動態から眺めても、まだまだと向こう数年間、もしかしたら向こう10年は頑強です。アメリカの若年労働者数は、先進国で唯一増加しているのです!
しかも、今起きているアメリカ金利市場での「逆イールドカーブ」は、その形状から見ても、「株式ブームの終焉が近かった2006年型や2000年型の逆イールドカーブ」とは、まったくもって異質です。違っているのです!
Next: 現在起きている「逆イールドカーブ」は、どういうものなのか?
今起きている「逆イールドカーブ」は1998年型
「2006年型や2000年型の逆イールドカーブ」は、短期金利がやたら上昇することで起きた「逆イールド」でした。典型的な「近いうちのバブル崩壊型・景気後退入り型」の「逆イールド」でした。
2006年や2000年は、FRBが、過熱した経済の中で、インフレ退治のために政策金利の引き上げをばかすか行っていたのです。中央銀行であるFRBがインフレ退治に本腰を入れれば、バブルだって弾けてしまうのです。その後、案の定、アメリカ株式市場はバブル崩壊して、アメリカ経済は唐突に景気後退入り(=リセッション入り)してゆきます。
しかしながら、今回の2019年のアメリカの「逆イールドカーブ」は、「1998年型の逆イールド」です。2018年12月、パウエルFRBは間違えてしまったけれども、わずか一回の利上げ(昨年12月の利上げ)しか間違えていません!
今は、経済のどこを眺めても、過熱しているような気配は見られません。インフレもバブルも起きていません。
振り返ると、20年前のロシア通貨危機が起きていた「1998年型の逆イールドカーブ」では、短期金利はたいして上がらないまま、長期金利がやたら下落していました。そのために起きた「逆イールド」でした。
「バブル崩壊前の逆イールドカーブ」と比べると、まったく異質だったわけです!
当時は、アメリカ以外のグローバル経済では、アジア通貨危機やロシア通貨危機などの危機が連発していて、やたらドル国債に人気が集まり、ドル国債が買われ過ぎてたのです(その結果、長期金利は低下)。
めぐりめぐって、2019年。今も、1998年と同じようなことが起きています。
今は、習近平政権が中央主導で強力に金融市場をコントロールしているものの、その強力なコントロールがなかったら、「中国発通貨危機」が起きていても不思議ではない状態です。
ヨーロッパのほうでは、「突発的なブレグジットの危険」が再び台頭しています。イギリス以外でも政治の混乱は続いています。
アメリカ以外では、どこもかしこも「危機」だらけなわけです。
こういった中で、グローバル規模での「質への逃避」が過剰に進んで、アメリカドル国債がやたらと買い進められている。その結果、アメリカの長期金利がやたらと低下しているのです。
ですから、2019年の金利市場では、20年前の「1998年型の逆イールドカーブ」が起きているわけです。
こういうときの「逆イールドカーブ」発生では、バーナンキ(元FRB議長)やガイトナー(元財務長官)などの多くの識者が指摘しているとおり、中央銀行であるFRBが対応を間違わない限り、その後のバブル崩壊も起きなければ、その後の景気後退も起きません(きっぱり)。
近いうちに「FRBに利下げを求める督促相場」が巻き起きます。その時、FRBが正しい対応をして(=対応を間違えないで)軌道修正すれば、すなわち、利下げを実行すれば、再び「アメリカ株式ブーム」が形成されてゆきます。
かくして、先行き不透明なものの、今起きているのは、「1998年型のマーケットの大波乱」の「始まり」でしょう。「アメリカ株式ブームの終焉」「アメリカ経済のリセッション入り」ではないです。
Next: アメリカ経済に大きな影響を与えた、本当の原因とは?
一番の問題は、FRBの利上げのし過ぎ
個人消費がGDPの7割を占めるアメリカ経済では、「米中新冷戦の始まり」そのものによるダメージは、それほど大きなものにはならないでしょう。
今のアメリカ経済にとっての一番の問題は、FRBの「利上げのし過ぎ」なのです。わずか「昨年12月の一回分の0.25%」だけでしたが、パウエルFRBは利上げをし過ぎてしまったのです。
実は、「新冷戦」よりもこちら「FRBの引き締め過ぎ」のほうが、アメリカ経済全体に与える影響は深刻です。
この「FRBの引き締め過ぎ」こそが徐々にじわじわじわじわアメリカ経済を減速させています。
「新冷戦」の影響がまだ出ていない4月の経済統計でも、「アメリカ経済の減速懸念」が鮮明になりだしています。
アトランタ連銀によるアメリカの第2四半期のGDP成長率予想は、1.3%。NY連銀によるそれは、1.48%。かなり下がってきています!
昨日発表のISM製造業景況指数も市場の予想に届かず、2016年10月以来の低水準となりました。
今年後半のパウエルFRBがマーケットに督促される「緊急利下げの幅」は「0.50%~0.75%~1.00%の利下げ」と、かなりの大幅になることでしょう。
日本株式市場~「消費増先送り」の解散総選挙は、意外と早い?~
日本株式市場の下落が、アメリカ株式市場の下落よりも大きくなっています。
日本株式市場(TOPIX)は、とうとうPER13倍台を切って、PER12倍台へ。理不尽なまでに売り込まれています。この状態は長くは続きません。
日本では、「消費税増税先送り」の督促相場が始まっているのです。
日本株式市場では、安倍自民党政権が「消費税増税の先送り」を宣言して選挙へと打って出るまでは、売りが続くでしょう。
近いうちに安部自民党政権が「消費税増税先送り」を掲げて「選挙」に打って出る可能性があります。
解散の時期は、「日銀短観が発表される6月30日の翌日の7月1日」より早まるのではないのか?6月19日あたりではないのか?
解散選挙が発表されれば、その時は、日本株(TOPIX)を買いましてゆきましょう。
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『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』(2019年6月4日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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