政府は11日、経済財政運営の指針(骨太方針2019)の原案をまとめました。読んでケンカを売っているのか?と思ったのは、就職氷河期世代支援プログラムです。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)
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日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
10年前の麻生首相(当時)の姿と、現在の様子がダブって見える
麻生氏「正式な報告書として受け取らない」
10年前の麻生首相(当時)の姿と、現在の様子が妙にダブって見えます。
余計なお世話ながら、選挙は大丈夫か?という気にもなります。無論、「ただでさえ脆い日本株は大丈夫か」に至るわけです。
2009年当時、前年のリーマン破綻から世界的な景気後退に襲われていました。ドンヨリした世相です。当時は「景気対策」というか、誰もが「変化」を求めていました。
そんなとき、すでに支持率が低下していた麻生政権下にあって、麻生首相は選挙向けに国民に対して「あと2〜3年の辛抱を」と求めていました。
真意は「この困難を乗り越えるには数年単位の時間が必要」とのことだったはずですが、逆効果だったのは言うまでもありません。
老後資金に2,000万円が必要と指摘した金融庁の報告書について、麻生氏が「正式な報告書といて受け取らない」としたことにも、「誰も報告書があるからって自民を批判なんてしないのに」といった嘆きがそこかしこに響いているようにみえます。
また就職氷河期世代をいじめるのか?
それより、『骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2019)』案を見たときには「ケンカ売っているのかしら」と思わずにはいられませんでした。
目に付いたのは『就職氷河期世代支援プログラム(3年間の集中支援プログラム)』です。3年間で30万人の雇用を創出するのだとか。
就職氷河期を経験した団塊ジュニア世代としての率直な感想は、「また不公平感を刷り込ませようとするのね」です。
「なぜ就職氷河期が訪れたか」との問いに、多くの人は「バブルが弾けたから」と答えるはずです。
正しい答えではありますが、「当事者」として忘れてほしくはない、もう1つの事柄があります。
Next: なぜ就職氷河期が訪れたのか?その場しのぎの支援プログラムは怒りを買う
バブル崩壊期「大量採用」のツケが回ってきた
なぜ就職氷河期が訪れたか。それは「就職氷河期直前に、企業はバブル崩壊が始まっていたにも関わらず大量採用を行った」という点です。
年の近い先輩世代の人数がやたらと多いのです。人口動態ならぬ「社員動態」のコブのツケが就職氷河期世代に回って来た形です。
どんな世界でも「大量採用」時には「残念な人材」が増えがちです。
政治の世界でも、民主党政権の「小沢チルドレン」や現政権の「魔の3回生」から出て来た「問題議員」にしても、大量当選により生まれたものです。
そのツケの整理もなく雇用促進と言われても、期待する人は少ないはず。仮に雇用されても「またか」と、自らの世代を恨むだけです。肩身の狭さは解消されないでしょうから。
その場しのぎの支援には期待するだけムダ
言い換えれば、そんなツケへの恨みを解消させる政策ならば就職氷河期世代も受け入れるはず。
しかし、その場しのぎに終始する政治家たちに、そんな細やかな配慮を期待するだけ無駄だということも理解しています。
だからこそ、表面的な「支援プログラム」は「ケンカ売っているのか」に繋がるのです。
野党への期待がほとんどない分だけ、市場も政局を軽視しているようにみえます。それだけに、骨太の方針への違和感は気掛かりです。
<今回のまとめ>
・「骨太の方針」にて、就職氷河期世代を支援、と
・表面的な支援はむしろ反感を増すのでは
・何かと10年前の政権に対する違和感と重なります
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- 株高、のち物別れ(6/6)
- お守り役、Fed(6/5)
- 対中追加関税受けて、メキシコに移転したのに(6/4)
- 「いくら何でも」の域に達したトランプ(6/3)
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『高梨彰『しん・古今東西』』(2019年6月12日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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