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世界同時株安のウラ要因「アップル・ショック」の本当の怖さとは?

第1四半期決算が発表されたAppleの下落が深刻です。私は今回の世界同時株安の裏要因の筆頭はこの「Appleショック」ではないかと考えています。(『KA.Blog』)

世界同時株安のウラ筆頭要因?Appleショックの本質と今後の展望

Appleの「強み」は世界経済の「弱み」となる

指数に影響を大きく与えるApple<AAPL>の第1四半期決算が発表されました(米国時間1月26日)。主力商品iPhoneの販売が予想を下回ったということで、時間外では売り優勢の展開に。Apple株の下落が止まりません。

こちらでも年初からAppleに注目して掘り下げましたが、このAppleの下落が深刻で、私は今回の世界同時株安の裏要因の筆頭はこの「Appleショック」ではないかと考えています。

アップル<AAPL> 週足(SBI証券提供)

単に「Appleの株の指数寄与度や時価総額が大きいから、各指標の下げ圧力になる」というテクニカル的な意味だけに止まりません。

まず1つ目は同社が自社工場を持たないファブレスメーカーであるということ。もし自社生産のソニー<6758>のような会社であれば、その影響は主に自社が引き受け、他への影響度合いはもっと抑えられるはずでした。

ところが同社はその生産を主に中国に発注しています。だから関連する無数の会社の業績悪化に繋がり、今回の中国の成長減速に繋がった…とまでは言いませんが、遠因になっている点は否定できないでしょう。事実年初は日本の電子部品メーカーにも売りが波及しました。

Appleは工場の稼働率など意に介する必要が無いですから、減産の影響の多くは発注先企業が被ることになります。工場側は、設備投資計画などにおいてAppleさんの出方を予想しなければならず、かなり不利な状況です。

またAppleはファブレスメーカーですが、一応製造業ではありますし、ドル高のマイナスの影響を受ける代表格とも言えます。足元では特に中国の元安が響いているという言い方が出来るのかも知れません。

元安であれば生産原価は下がるかも知れませんが、一方で消費地としての中国に期待できなくなります。そういう意味でAppleの弱さは、ひいてはアメリカ企業の製造業の強弱を示すバロメーターであると言えそうです。

Next: もはや成長株ではなくバリュー株であるAppleの100ドル割れが意味するもの



もはや成長株ではなくバリュー株であるAppleの100ドル割れが意味するもの

もう1つの意味は、これも年初に書きましたが、利上げによってバリュー株が買われないという事実の確認です。Appleはもはや成長株ではなくバリュー株であり、利回りも2%を超えています。まあアメリカでは2%強の水準は平均並なのですが、Appleの場合は自社株買いも大胆に行うところですから、全般的に還元性向が高いと言えます。図体も世界一ですから、これを成長株とは定義し辛いです。

そのAppleが遂に100ドルを割り込んできました。そしてまだ下値確認とは言えません。世界中で概ね「森(全体地合)」には方向性が出てしまっているので、あとは「木(個別)」に注目する他ありません。日本でも個別企業の決算が少しずつ出てきています。

足元で期待できる反発材料としては、株価の下落が急過ぎることによるリバウンドか、この個別企業の決算で良いものを積み上げていく他ないでしょう。ただ一方で主に新興国を頼りにするグローバル企業にはやや逆風が吹くのかも知れません。

とりあえずAppleに関しては今回の決算が出尽くしになるかどうかを見守りたいですが、それとFOMCを終えてアメリカ株がきちんと反発してくるかどうか。目先の注目点はそこに集中できるものと思います。原油、中国の下落はあくまでそれの副産物でしかありません。

日本株は2月末までのリバウンドを見込むも油断は禁物

今の日本株の基本スタンスとしては、とりあえず2月末までのリバウンド相場を想定しています。ただし戻りはせいぜい25日線を越えて75日線を越えない程度まで。ですから現状の投資判断は「やや買い」としています。

その先はどうかというと、残念ながらまた底を探りに行く1年になると考えています。具体的には08年のリーマンショック時のような、非常に恐怖感の高い1年になるのではないかと見ています。

まず最近は落ち着いてきましたが、足元の日本株の騰落レシオは50ポイント台が並ぶ時期がありました。過去を遡ってみると、50ポイント台が連続したのは08年のあのリーマンショック時に遡ります。そうして考えてみると、08年1月と非常によく似ているような感じです。あの頃も夏場に相場がピークアウトし、そのままズルズル値を下げていました。

その後は1/22にようやく底を打ちました。今年は今のところ1/21に底打ち反転となっています。08年は後は2月いっぱいかけてある程度戻しましたが、3月にまた下げていきます。

リーマンショックの際には「サブプライムローンがどこに組み込まれているかわからない」「アメリカが金融機関を救わない」というアメリカ発の悪材料で急落が発生しました。この点は恐らく誰も異論が無いでしょう。その結果として、世界的な景気減退観測から原油価格が急落したのです。当時、原油価格も78%の急落となりました。

今もある種その通りです。アメリカの利上げが新興国の通貨安を引き起こし、世界全体の景気減速感を呼び起こす→結果として原油で稼ぐ中東、東南アジア、南米といった赤道付近の産油国(+ロシア)を直撃→世界同時株安という流れになっています。まず原油安ありきではありません。

2016年が、2008年の「写真相場」となる可能性

もし本当に08年の写真相場であると考えると、今年の3月はアメリカの追加利上げが意識されますから、やはりそこでまた一旦落ちるのかも知れません。08年の時も3/17に底打ちしましたが、今年のFOMCのスケジュールも3/16。そしてその手前にはメジャーSQもあります。そこまで下がらないと底は打たないのでしょうか?

そして以後は6月まで株価は戻りますが、今年は参院選がありますから、以前私が示した今年のシナリオ通り政策期待感で6月まで戻るのでしょう。となると、その先に待ち構えるのは…ブルブル。これ以上語るのは止めておきましょう。

私は昨年から「16年は下げる」「アベノミクス終了」と言ってきましたが、実は17年も下げるのではないかと思っていました。その大底がどこにあるのかというと14000円であると見ているんですよね。この大きなシナリオを考えると、今の下落ペースはとにかく早過ぎます。

Next: 米国のジャンク債問題が報じられなくなったことへの違和感



米国のジャンク債問題が報じられなくなったことへの違和感

1つだけ心配しているのが、これだけ原油が下げ止まらない中でアメリカのジャンク債に関して全然「危ない」という話が出てこないこと。

中東などで十分危うさが喧伝されているので、今更ジャンク債を気にする動きがないのかも知れません。本当に他の金融商品に組み入れられていなかったり、問題がなければそれで良いのですが、思い出しように後で不安材料としてかき立てられないかだけ気がかりです。これが今回の「サブプライム」になるのかもしれません。

特にこのシェール絡みの融資に対して金融機関側の期限が4月ともされています。というわけで、3月辺りからこの不安感がまた鎌首をもたげてくるのかもしれません。

とりあえず足元に話を戻しまして、需給という点についても言及してみると、先日までまだ大半の企業の決算前なので、企業の自社株買いが「出辛い・出し辛い」というところが、売り方に容赦ない売りを決断させていたようにも思えます。

昨年1年間の投資主体別売買動向では、外国人、個人の売り越しに対して、買い越のしのトップは事業法人、つまり企業でした。2位がGPIFなどの信託銀行となっています。

今、ここでお金を出せるとすると、本来は個人(逆張り、NISA買い)なんですが、その個人もさすがに萎縮するような下落でした。新興市場や個人投資家大好き銘柄も急落してしまいましたし、身動きが取れなくなった、追証などで損切りせざるを得なくなった人が多いでしょう。信用評価損率は15%を超えるレベルにまで悪化していました。

個人投資家はそれぞれがそれぞれの意思で売買する遊兵ですから「ドン!」と大砲を撃ち込まれると一斉にわらわらと霧散し、パニックが起きた時に弱いです。そんな時には本来GPIFや企業のように、大金を背景に無条件で買い拾うような正規軍の存在が有り難いです。

ところがGPIFは既に枠一杯になっているので(昨今の株価下落により逆に余力は出来たでしょうけれど)、ちょっと今は期待し辛いです。また「運用損何兆円」と記事にされたら、政治的な面でも買い辛さが出てきますし。ですから事業法人の奮闘が待たれますし、今売り方が怖いのはその事業法人による買いの登場です。

それがやはり足元の決算発表と同時に出てきやすいということがありますから、2月にかけて買い戻しが出やすいのだろうと思います。ですから、スケジュール的に売り方が手を出しにくくなってきます。

以上のことから、少なくとも足元はここから積極的に売っていくというよりは、買いに目盛りを合わせ始めた方が良いように思います。少しずつですが戻り売りをこなしながらも、当初想定通り2月の戻り歩調になっていくのではないでしょうか。

【関連】英国大手銀行RBSが異例の警告「極めて深刻な事態、投資家は全てを売るべきだ」

KA.Blog』(2016年1月27日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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