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日経平均は予想EPSとドル円の変化に注意を~「理論株価」最新データ分析=日暮昭

株式相場は荒い値動きが続いていますが、資産の価格がいつまでも実体価値から離れ続けることはありません。一定のスパンをとればファンダメンタルズで示される価値に回帰すると考えられます。本記事で取り上げる理論株価はこうした実体価値に基づく日経平均の水準を出来るだけ簡素な形で捉えることを目指したもので、予想業績と米ドルの2つの要因に絞って日経平均を説明しています。(『投資の視点』日暮昭)

筆者プロフィール:日暮昭(ひぐらしあきら)
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を用いた客観的な投資判断のための市場・銘柄分析を得意とする。

ファンダメンタルズと市場センチメントの狭間でもがく日経平均

説明しきれない株式相場を理論株価で考える

株式相場は荒い値動きが続いています。

2月9日から12日にかけての3日間で日経平均は2,000円余り下げ1万5千円台を割り込みましたが翌営業日の15日には一転、1,000円を越す大幅上昇で1万6千円台を回復しました。

年初からの日経平均の日次ベースの変動幅の平均は394円となります。毎日、平均して400円近い変動をすることはファンダメンタルズの変化では説明しきれません

世界的なマネー過剰状態によって資産価格の変動が実体経済から離れた極端な動きを示しやすくなるなか、リスク資産に対する回避が強まるあるいは弱まるといったいわゆる市場のセンチメントの要素による相場影響力が大きくなったためと考えられます。

とは言え、資産の価格がいつまでも実体価値から離れ続けることはありません。一定のスパンをとればファンダメンタルズで示される価値に回帰すると考えられます。

本記事で取り上げる理論株価はこうした実体価値に基づく日経平均の水準を出来るだけ簡素な形で捉えることを目指したもので、予想業績と米ドルの2つの要因に絞って日経平均を説明しています。

過去の実績を見ると日経平均が理論株価から一定程度かい離すると回帰する傾向がある事が分かります。すなわち、株式相場はとりとめのない変動をしているように見えますが、漂いながらもファンダメンタルズというイカリに常につながっていると見てよさそうです。

下図は2014年初から直近の2016年2月15日までの2年間余りの日経平均と理論株価の日次終値の推移です。

日経平均と理論株価の推移(日次終値)―2014.1.6~2016.2.15―

青線が日経平均、赤線が理論株価を示します。

日経平均は理論株価をはさんで上下に行きつ戻りつしつつ進んでいることが分かります。そして一定程度離れると理論株価に回帰しています。

直近の2月15日は理論株価の1万7554円に対して日経平均が1万6022円と理論株価を8.7%下回っていますが、前営業日の12日には理論株価の1万7527円に対して日経平均は1万4952円、乖離率はマイナス14%を超えました。この大きなかい離の直後に相場は反発しています。これまでの経験則が成り立った形です。

下図はこうした関係を分かりやすく捉える図です。
理論株価の上と下に一定の範囲を決め、そこから日経平均が外れた場合に反転して理論株価に回帰するメドにしようというわけです。

変動の範囲は2通り設け、第一の範囲は通常の変動とみなせる範囲、第二の範囲は通常の変動を超えここから先は反転の可能性が高まる限界とみなす範囲です。

日経平均と通常・限界の変動範囲 ―2015.8.3~2016.2.15―

青色の線が日経平均、緑色の線が通常の変動の範囲、赤色の線がここを超えると反転の可能性が高まる限界を示します。ここで、緑色の線は変動の平均を示し、赤色の線はこの変動平均の2倍に相当します。

この線引きは統計学の助けを借りて設定したもので、赤色の境界線を超える確率は約5%とみなすことができます。つまり、日経平均が赤線を超えるケースはほとんどない、すなわち長くは続かない、ということで反転する可能性が高いとみなすわけです。

実際、昨年の8月以降で見ると、日経平均が赤線の範囲を超えたのは昨年の9月29日、今年に入ってからの1月21日、そして直近の2月10日から12日にかけての3回ですが、その度に相場は直後に反発しています

ただし、2016年に入ってからの動きはこれまでとは異なっていることに留意すべきです。

Next: これまでと様相が異なる年初からの相場、予想EPSと米ドルが低下



これまでと様相が異なる年初からの相場局面

それは理論株価自体が昨年12月以降急速に低下していることです。

これは理論株価の説明要因である予想1株当り利益(予想EPS)と米ドルレートがどちらも低下しているためです。

下図は昨年8月以降の予想EPSと米ドルレートの推移を示したものです。

予想EPSと米ドルレートの推移(日次終値)―2015.8.3~2016.2.15―

図中の縦線は2015年12月1日の位置を示します。

この時点から直近の2月15日までに予想EPSは141円76銭から129円21銭まで10.5%、米ドルは123円15銭から113円65銭へ7.7%下落しています。

これを受けて理論株価は10.7%の下落です。そして日経平均は約2倍の19.9%の下落となりました。

今後、安全資産としての円への資金流入による円高が進み、先行きの業績予想がさらに低下するとすれば理論株価の低下は続きます。日経平均はこうした懸念を先取りしているのかもしれません。

あるいは業績、為替が現状で維持されるならば日経平均は理論株価に向かって戻る可能性があります。その場合は日経平均は1,500円程度上昇することになります。

こうした状況を背景に市場のセンチメントの変化によって株式相場の変動が増幅された結果が年初からの荒い値動きと見ることができそうです。

日経平均は業績、為替といったファンダメンタルズの不確実性と市場センチメントの変化の間でもがいているように見えます。

日々の動きに一喜一憂せず大きな目で相場を見ることが常にも増して肝要な局面と言えそうです。

【関連】ジム・ロジャーズも警鐘 戻り相場の限界点と「3月10日大暴落」説=高島康司

投資の視点』(2016年2月16日号)より一部抜粋

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