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日産、JT、タケダの高配当3社の違いとは?配当の背景から考える、最適な投資スタンス=若林利明

配当利回りでよく話題にのぼるタケダ、日産、JTの3社を取り上げてその株価の動きを比較しました。投資の検討には、高配当の背景を理解することが重要です。(『資産運用のブティック街』若林利明)

筆者プロフィール:若林利明
外資系機関投資家を中心に日本株のファンドマネージャーを歴任。現在は創価女子短期大学非常勤講師、NPO法人日本個人投資家協会協議会委員。世界の株式市場における東京市場の位置づけ、そこで大きな影響力を行使する外国人投資家の投資動向に精通する。著書:「資産運用のセンスのみがき方」(近代セールス社)など。

※本記事は有料メルマガ『資産運用のブティック街』2019年12月7日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

利回りで見る銘柄と、それに対する投資家としての対応

2018年以降、3銘柄ともに日経平均を大幅に下回る

利回りで株価を見るケースで、しばしば話題となる銘柄としてタケダ、日産、JTの3社を取り上げてその株価の動きを比較しました。

2015年の3月を1として3か月ごとの変化率をプロットしました。市場平均を示すものとして日経平均を採用し同時期の変化を同様にプロットしました。

タケダ、日産、JTおよび日経平均の株価(2015年3月=1)2015年3月~2019年9月タケダ、日産、JTの配当利回り(2015年3月~2019年3月)

最初の驚きは、3社の株価がともに日経平均を大幅に下回る動きを示していることです特に2018年以降にその動きが明確になります。

配当実績の現実…配当事情がつくる高利回りを吟味

3社は高利回りと称されて社会的にも知名度の高い銘柄です。しかし高配当にはそれぞれの事情があり、その背景をしっかりと理解することが重要です。

タケダ、日産、JTの配当利回り(2015年3月~2019年3月)

※利回り計算は各会計年度3月末日の株価で当該期の支払い配当金額を除して算出しております。JTは12月決算ですので株価は3月末ですが、配当は今期の予想額です。

日産<7201>

2016年をピークに営業利益は2019年まで連続して下がっております。その間、増配を継続しております。親会社のルノーは43%の株式を保有する絶対的支配者とも言える存在です。そのルノーは、フランスの国営企業化しております。結果的にグループの稼ぎ頭の日産に最大限の配当を実現させてきたようです。日本人投資家がその高利回りを魅力的投資対象と感じたとすればそれは、この流れをうまく利用できたといことなります。

ゴーン体制崩壊後の新生日産が主体性を回復するとすれば、現在の収益力からすれば減配に繋がるのが自然です。結局、配当政策において日産が主体的行動がとることが出来なかったと言えるでしょう。株価はそれを嫌気して人気が薄れ下落していったと思われます。

そのプロセスの中でファンダメンタルに関係なく強引に増配した結果、利回りが注目されることになったのです。配当は本来的に、まず業績があって、さらに経営者の株主還元の意識が十分あって実現するものであります。その条件が整って初めて投資家に評価されるべきものです。株価は、その無理した姿が露呈するまでの間の限定的高利回り銘柄として存在したと言えます。

Next: 続いてJTとタケダが高配当な、それぞれの理由とは?



JT<2914>

33%保有する財務大臣が筆頭株主で、配当は国の歳入に組み込まれるようになっております。当社の業績に関して成長という切り口で見ると見劣りしますが、多角化をすすめしっかりと利益をあげております。利益の相当部分を配当に回すように仕組みが出来ているようです。

わずかですが、増配を継続してきました。おそらくは、大株主の方を向いた増配であったと思われます。しかし、成長というイメージも持ちづらく、人気離散状態のなか株価が下落してきたようです。しかし、株価下落、それも2,500円程度まで落ち込んでくると6%台の高利回りも視野に入ってきますので、純粋に利回り狙いの買いが入ってくるようです。筆頭株主の影響力が変わらない限り、高利回りを期待できる株価の位置が実現されれば、魅力ある銘柄であり続けると思われます。

タケダ<4052>

政策的保有株がなく配当政策の自由度は高いのですが、極めて特殊な配当政策を実施してきたようです。異常なまでに180円配当を実施し続けてきました。

それが何に起因するか分かりませんが、現在では利回りで買える有力銘柄の象徴のような存在です。最近、イギリスの製薬会社をM&Aによってグループ内に取り込みました。“高すぎる買い物”と国内外から多くの批判はありましたが、ともかくやり遂げました。

当然それに必要な資金の一部を自社株との等価交換によって捻出した形になりました。これだけの配当のヒストリーが定着した銘柄となると利回り水準の魅力度が株価維持に大きく貢献するような状態になります。つまり異常とも思える配当政策が株価形成に積極的に作用するようになり、結果としてM&Aを進める際の財務政策の重要な一面を果たすことになっているのです。

純粋な民間会社として自由な配当政策も含めて経営の自由度が高いことが上記、日産とJTとは異なります。将来的にも自力による成長が期待出来る事業資質を有しながら、株価の位置によっては高利回りを期待できる銘柄として投資家の関心が高い銘柄としてあり続けると思われます。ちなみに180円配当を前提とすると株価4,500円で4%配当となります。

これら3社は配当に関しては異質な実績かもしれませんが、その高利回り実現の背景を理解することにより、持続的に保有する銘柄、保有期間を限定して参加するタイプの銘柄といった内容理解が進めば、今後の利回り投資に役立つことになるはずです。

※本記事は有料メルマガ『資産運用のブティック街』2019年12月7日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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資産運用のブティック街』(2019年12月7日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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