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米民主党指名争いは序盤終了【フィスコ・コラム】

11月のアメリカ大統領選に向けた野党・民主党の指名候補争いは、2人に絞り込まれました。序盤のヤマ場となったスーパーチューズデーの結果を踏まえると、サンダース上院議員は失速、バイデン前副大統領は急激に息を吹き返した印象です。

候補者の指名争いは2月4日のアイオワ州党員集会で熱戦の火ぶたが切られてから、これまで3分の1程度の州・地域で予備選を終えました。一気に14州で投票が行われた3月3日のスーパーチューズデーでは、それまで優勢だったサンダース氏がリードを維持できず、バイデン氏が予想外の巻き返しをみせています。一方、ブルームバーグ前NY市長とウォーレン上院議員は戦線離脱を表明しました。

2月の最初の3州では、サンダース氏が若者やヒスパニックの支持を得ていることが明らかになり、スーパーチューズデーを有利に戦ってムーブメントを作ると個人的にはみていました。しかし、2月最後のサウスカロライナ州でバイデン氏が圧勝したのを受けブティジェッジ・サウスベンド市長とクロブチャー上院議員があっけなく撤退。決戦の3月3日を前にバイデン氏を盛り立てる動きが加速しました。

現時点で残っているのはバイデン、サンダースの2氏。バイデン陣営の弱体化を見計らい、豊富な資金力で参戦したブルームバーグ氏は、スーパーチューズデーでの惨敗で早々と脱落してしまいました。今後注目されるのは、地元マサチューセッツ州で第3位に終わったウォーレン氏の動向です。

左派を嫌う民主党執行部は今後、バイデン氏のテコ入れとサンダース氏包囲を本格化させるとみられます。つまり、ウォーレン支持票がサンダース氏に流入するのを抑え同氏の支持拡大を食い止める作戦が考えられます。また、今後は副大統領候補の選定も注目されますが、そこでバイデン氏が、例えばブティジェッジ氏とタッグを組めばメディアの話題をさらい、勢いづくかもしれません。

戦況はなお流動的ですが、現時点ではバイデン氏をサンダース氏が追いかける展開です。こうした状況を誰よりも歓迎しているのはトランプ大統領ではないでしょうか。現在のバイデン氏は副大統領時代の精彩を欠いており、4年前のヒラリー・クリントン元国務長官のような手ごわさは感じられません。このまま本選に突入すれば、トランプ圧勝シナリオを支援しそうです。

奇妙なのは、トランプ氏がツイッターでサンダース氏の擁護とも受け取れる発言を繰り返していることです。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、NYダウはリーマン・ショック時を想起させる下げを記録し、連邦準備理事会(FRB)による利下げも今のところ効果薄。富裕層への課税強化を政策の柱とするサンダース氏の躍進は株安要因となるため、忌み嫌う候補になるはずです。

「社会主義者」がアメリカ大統領に選ばれるわけがないと決めつけているようですが、仮に草の根運動をバックにしたサンダースとの直接対決となれば、資金力にモノを言わせるトランプ氏にとっても侮れない展開となる可能性もあります。
(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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