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「2018年1月1日から世界金融危機が本格化する」著名コラムニスト予測の根拠

3月28日のブルームバーグ・ガドフライ(Bloomberg Gadfly)に非常に気になる記事が掲載されました。クリストファー・ラングナーというブルームバーグの市場コラムニストが書いた「銀行業界に吹き荒れる次の大嵐」(The Next Perfect Banking Storm)という記事です。(『カレイドスコープのメルマガ』)

※不許複製・禁無断転載(本記事の著作権はメルマガ著者および当サイトに帰属します。第三者サイト等への違法な転載は固くお断り致します)

「バーゼル3発効に先駆けて、2018年1月1日から金融激変が起こる」

世界中の金融機関を委縮させる「バーゼル3」爆弾とは?

クリストファー・ラングナーは、ロイター、フォーブス、ウォール・ストリート・ジャーナル、マージャーマーケット(Merger)などに記事を書いてきました。

まず、この記事を読んでいただく前に、ロシアのスプートニクの3月29日付の記事を読んでください。

ブルームバーグのクリストファー・ラングナーが、2018年1月1日から世界の金融危機が始まると予測しています。

銀行が資金を貸し出す際に、国際的なルールが適用され、優良な借り手以外には資金を貸し出すことができなくなる可能性について警告している記事です。

これによって、将来性が有望なベンチャーでさえ、資金手当てが困難になる事態が生じることが考えられます。

これは、バーゼル3が本格的に適用されることによって起こることです。

バーゼル3とは、主に西側主要国の金融監督当局で構成するバーゼル銀行監督委員会が、銀行の健全性を維持するために導入した自己資本規制のことです。

バーゼル3は、1998年のバーゼル合意(いわゆるBIS規制)に端を発しています。

その後、バーゼル合意が見直され、2004年にはバーゼル2(いわゆる新BIS規制)が発効され、銀行の自己資本比率を高めることが要求されるようになったのです。

そして、その範囲が拡大され、株式や内部留保などからなる銀行の資産に加え、投資や融資(債権)などによるリスク資産についても総合的な評価が行われ、それらの総資産に対して、一定割合以上の自己資本を持つことが強制されるというのがバーゼル3です。

確かに、銀行の財務体質強化、経営の健全化にとっては良いことですが、その反動として、銀行がバランスシートを重視するあまり、リスクを取らなくなってしまう恐れが出てくるのです。

これは、産業社会にとっては死活問題となり、ショックが大きければ、財政的なパニックを誘発することにつながってしまうのです。

バーゼル3では、銀行の事業によって蓄積してきた利益の内部留保(中核的自己資本)の比率を、実質7.0%以上とすることが求められており、2012年末から段階的に導入されてきましたが、いよいよ2019年から全面的に適用される運びとなったものです。
(参考記事:バーゼル3が銀行に与える影響

2019年から、バーゼル3が適用されることで銀行の貸出能力を束縛されてしまうことから、銀行にとって、まさに最高の借り手にだけに資金を貸し付けるということが起こって来るのです。

これは世界標準なので、世界規模で企業や自治体の破産を速めることにつながってきます。

しかし、どんな金融規制が発効される場合でも、その実施日より先に影響が現れるものなのです。

クリストファー・ラングナーは、バーゼル3の発効に先駆けて、2018年1月1日から適用される新しい規則によって金融激変が起こると警告しているのです。

まず、レバレッジの比率(銀行の自己資本比率の何倍までなら融資や投資に回してもいいか)が、国際会計基準審議会になって定義されている銀行監査と国際財務報告基準(IFRS)No.9にのっとって、バーゼル委員会によって設定されてしまうのです。

これまでは、リスク評価をする際に、それぞれの銀行の手法に委ねられていましたが、それが銀行から取り上げられ、すべての国際業務までを行っている銀行に厳しい規則が等しく課されることになるのです。それは、来年から導入されます。

バーゼル3は、世界市場における流動性を減少させ、信用成長を遅くしてしまうため、すでに世界中から非難されています。

Next: これは世界危機の“レシピ”~多くの企業が破産、労働者はレイオフに



これは世界危機の“レシピ”~多くの企業が破産、労働者はレイオフに

規制が増えれば、金融機関の信用審査に関連する業務は急減することになります。

たとえば、国際財務報告基準(IFRS)No.9は、想定される信用損失が、どの程度なのか、銀行に対して初期の認知を義務付けています。

数人の信用アナリストによれば、3分の1程度の銀行では、非パフォーマンス資産(運用に回さない資産)を増加させる動きがすでに出ているということです。

信用損失を厳正な審査によってあらかじめ算定すると、今まで問題のなかった債権が、突然、不良債権化するということが起こってきます。

すると資金需要の先細りが表面化してくるのです。

どういうことかというと、銀行は融資に際して、よりハードルを高くせざるを得なくなるので、借り手の借り入れコストの上昇につながってしまいます。そうすれば、銀行側としても貸し出しが困難になるでしょう。

新しいバーゼル規制は、バーゼル3が適用される次の2年以上、影響するでしょう。

その影響とは、まだゆとりがある銀行でさえ、どのように貸し出しリスクを考慮すればいいのかと会議をしたり、頭を悩ませたりする楽しみが取り上げられてしまうことです。

2008年の世界的な財政危機後に押し付けられた新しい規制は、銀行はドルを貸し出す際に、借り手の信用状況に依存しながらも、より多くの資本を蓄えることを銀行に要求しています。

困ったことに、世界的な監査機関は、銀行自体に対する信用度の決定を残したままなのです。

「2013バーゼルの研究」では、類似の資産に付帯しているリスクウェイトに限り20パーセントの変動があることが発見されました。

こうしたことから、金融機関は2017年から、取引の相手方に対するリスク評価を行う際に、彼らの内部モデルを使用することがもはやできなくなってしまうのです。

2018年には、それは証券化にも拡大され、その後、正確な日付は決定されていませんが、貸し手は、バーゼル委員会によって設定された標準に基づいて、彼らのローン希望者全員を評価しなくてはならなくなるのです。

規則案によると、より高い収益力と低いレバレッジを持っている企業は、それだけ銀行から必要とする資本が少なくなるのです。

このことは、銀行が、より確立された事業を持つ最大手企業にのみ貸し出しを行いたいという誘惑にかられることを意味します。

反面、売上を増やすために資金を必要としている中小企業にとっては、死活問題です。

問題は、その規則が実施される前に、レバレッジ比率が2018年1月1日から実施(有効)されるのです。

このことによって、銀行は世界進出が困難になってきます。たとえ、ベンチマーク収益率(ベンチマークの騰落率。いわゆる市場平均収益率)が、どんなに低く、あるいはマイナスであったとしても。

バーゼル3を前にして、銀行は経営を引き締め、ディレバレッジ(自己資本比率を向上させる)に努めているので世界もそうなるでしょう。

つまり、融資を抑制し、場合によっては株式などへの投資も控えめになるかも知れないのです。

このことは、多くの企業の破産労働者のレイオフ、そして仕事の減少につながってきます。

これは、どうも世界危機の“レシピ”のように思えます。

信用の世界標準を導入することによって、信用アナリストなどの人の手を介在させなければ、情け容赦なく機械的に企業を潰し、リスクの高そうな金融機関を情け破産させることができます。

世界は大混乱するでしょう。

しかし、国際金融資本にとっては、優良企業と優良金融機関だけを残し、後にそれらを統合することによって一元化を進めることができるのです。

これこそが、「彼ら」が管理しやすい世界の再構築につながるのです。

バーゼル3は、金融機関だけの問題ではなく、私たちの生活の隅々までじわりじわりと影響してくるでしょう。経済サバイバルの方法についても、再度、見直す必要が出てきました。この問題は、とてつもなく広い領域を含んでいます。

Next: いま日本で起こっていること~報道されないスティグリッツ来日の真相



いま日本で起こっていること~報道されないスティグリッツ来日の真相

日銀の果敢な量的金融緩和によって薄日が差し始めていた日本経済が、再びデフレの崖っぷちに追いやられてしまったのは、安倍首相が、浜田宏一イェール大学名誉教授の「増税は時期尚早」の警告を振り払うようにして、2014年4月、5%から8%の消費増税を決行したことが主な原因であることは間違いのないことです。

この愚を再び犯さないようにと、反増税派の本田悦朗内閣官房参与の招きによって、2014年11月初めに来日したのがノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン教授でした。

このとき、安倍首相は、クルーグマン教授から、8%から10%への消費増税を強行することのリスクをとんとんと諭されたことによって、消費増税延期を決定し、11月21日の衆院解散総選挙を宣言したのです。

安倍首相の腹の内は、すでに「延期」だったわけですが、公に宣言するために何らかの外圧を欲していたということです。

このとき、「10%引き上げは、たとえどんな理由があろうとも、1年半後の2017年4月には実施する」と宣言した安倍首相でしたが、アベノミクスの失敗が決定的となった今、日銀は最終的な手段である禁じ手のマイナス金利導入にまで追い込まれてしまいました。

そこで、今回も、安倍官邸はポール・クルーグマン教授に頼ることとなったのです。

安倍首相は、消費税引き上げの最終検討を行うための国際金融経済分析会合を設け、その第1回目が3月16日午前、首相官邸で開かれました。

初会合に呼ばれたのは、やはり、ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授

政府の「スティグリッツ教授は、2017年4月からの消費税率引き上げに否定的な見解を示した」との発表を受けて、日本のメディアはいっせいに「10%先送りか」と報じていますが、事実はまったく違います

スティグリッツ教授が日本側に提言したのは、「TPPは悪い貿易協定であるというコンセンサスが広がりつつあり、米国議会で批准されないであろう」ということと、安倍首相に直接、「アベノミクスを停止し、経済政策を180度転換することによって、7月のG7サミットで主導権を取るべきである」とアドバイスしたことの2点で、来年4月に予定されている消費増税には触れていないのです。

国際金融経済分析会合とは、安倍官邸が、夏の参院選対策のために、ノーベル経済学受賞者という権威を借りて本来の公約であった「10%見送り」を正当化するためのイベントに過ぎなかったわけです。

なぜなら、官邸は、スティグリッツ教授の中心的提言であった「TPP問題」と「アベノミクス」については触れず、スティグリッツ教授が言ってもいない消費増税問題をことさら強調しているからです。スティグリッツ教授は、それに利用されたのです。

Next: クルーグマンが「10%増税の延期を主張した」も正確な報道ではない



クルーグマンが「10%増税の延期を主張した」も正確な報道ではない

さらに、第3回国際金融経済分析会合には、今度もポール・クルーグマン教授が招かれ、22日夕方から首相官邸で安倍首相と他の閣僚との会談が行われました。

ここでもクルーグマン教授が「10%増税の延期を主張した」と報じられていますが、それも正確な報道ではありません

スティグリッツ教授から多大な影響を受けているクルーグマン教授は、おそらく日本政府に利用されないようにスティグリッツ教授からアドバイスを受けたのでしょう、22日の首相との会談後4日経ってから自身のツイッターで「会談で話したことのすべてを公開する」とツイートしました。

それが、このpdfファイルです。

国際金融経済分析会合が、安倍官邸のシナリオどおりに進められたことに確信を持ったクルーグマン教授は、自身の発言が安倍首相サイドによって恣意的に利用されることを危惧したのです。

幸いなことに、ここに会談の全文訳が上がっています。

読んでわかるように、クルーグマン教授は、今回は消費税アップに反対するというよりは、デフレ脱却を果たすためには、引き続き財政政策の継続が必要で、消費税引き上げだけでなく、景気回復の足を引っ張るような間違った政策は一切やるべきではないと進言したのです。

にもかかわらず、官邸からの発表をそのまま記事にするだけのマスコミ各紙は、「クルーグマン教授も消費税引き上げ、先送り進言」という見出しを付けるのです。まったく本末転倒で、財政政策を継続するために消費税は止めるべきだと教授は言ったのです。これは非常に重要なことなのです。

官邸は、「ノーベル経済学賞を受賞した世界的権威二人が、消費税の引き上げに待ったをかけている以上、10%引き上げを強行することは断念せざるを得ない。だからといって、アベノミクスが失敗したということにはならない」といった落としどころを考えたのでしょう。

Next: 麻生大臣の不気味な発言「米国は1930年代の不況を戦争によって克服した」



麻生大臣の不気味な発言「米国は1930年代の不況を戦争によって克服した」

さて、問題は、クルーグマン教授が公開したこのpdfファイルの中身です。

会合に同席していた麻生財務大臣が、恐ろしい発言をしているのです。それが、この部分です。

日本企業の稼ぎだす収益は過去最高に達しているのですが、しかし彼らは、それを設備投資へ支出しようとはしていません。

日本は、企業という部分では大きな収益が手元にあるのです。それは賃金上昇や、配当や、設備投資に使われるべきなのですが、企業はそれをしていません。現金や預金を手放そうとはしないのです。内部留保は積み上がる一方です。

1930年代のアメリカも同様の状況が起きたました。

この問題を打開したのは何だったのでしょうか?

戦争です!

第二次世界大戦が1940年代に起こり、それが米国にとっての解決策となりました。

おそらく、麻生大臣は、クルーグマン教授に「戦争を起こすことも選択肢としてはありうる」と言ってほしかったのでしょう。

クルーグマン教授は、麻生財務大臣の発言にやや憤慨したのか、「戦争は恐ろしい過ちだった。不況の大きな第二波を引き起こしたからだ。言うまでもなく、我々が求めているのは、戦争ではなしにそのようなことを達成するということである」と返しています。

日本側の大臣たちの発言からにじみ出てくるのが、「戦争を最終的な解決手段にしよう」という潜在的な願望です。大変、危険なことです。

Next: 「大本営発表」を取り戻すNHKの破れかぶれの洗脳番組



「大本営発表」を取り戻すNHKの破れかぶれの洗脳番組

この数日、信じられないことが立て続けに起こっています。気が付いたでしょうか。

それらのすべてが、「ある一点」に向かって収斂しつつあることが。

個人的に、もっとも驚いたのが、昨夜(3月29日夜)放送のNHK・BSプレミアムの特番「幻解!超常ファイル「世界はだまされている!?陰謀論の闇に迫る」でした。

番宣のコピーは、「9.11アメリカ同時多発テロは、政府の自作自演だった!?フリーメイソンは世界征服を狙ってる?こうした怪しげなウワサを、信じるか信じないかをお任せせず、きっちり答えます!」

内容は、「こうした怪しげなウワサのすべてが根も葉もない陰謀論」であると決めつけて、最終的には、「陰謀論を信じる人たちはヒトラーと同様、危険な人々である」結論付けて終わる、という凄まじく「支離滅裂で怪しげな」番組でした。

2、3人の見るからに胡散臭いライターを登場させて、ことごとく事実とは違う解説を加え、その際に引用するデータも、当のアメリカでも使っていない捏造データばかり。

民放ならまだしも、公共放送であるNHKが、いったいどうしたことだろう、と多くの人たちが、さっそくネット上に「NHK番組異変」について書きたてています。

私は、日本より、むしろ英語圏の世界のニュースサイトを見ているので、番組制作の段階で使用するソースを見ると、番組制作者の意図が奈辺にあるのか、おおよそ突き止めることができます。

この番組は、明らかに「陰謀論などありえない」「だから、日本政府、アメリカ政府の言うことだけが正しい」と視聴者に刷り込む目的を持った洗脳番組です。他の意図がある可能性は、まったく考えられないほど、あからさまな捏造番組でした。

夏の衆院選に向けても異常なことが連続して起きています。

中でも、安倍政権が、共産党を破防法の適用対象とする閣議決定をしたことです。

2013年12月6日、自公の強行採決によって秘密保護法案が成立しましたが、今でも国民の8割以上が憲法違反と反対している法律です。

この法律は、警察公安が権限拡大のために政権を強力にプッシュしたことによって決まったのですが、その後、共謀罪までもが俎上に乗せられたのです。

そして、今度の参院選で自公が勝てば、「緊急事態条項」を、またもや数の論理で強行採決してしまうでしょう。

「緊急事態条項」とは、一朝有事の際には内閣総理大臣にすべての権限を集中させ、場合によっては戒厳令を発動してすべての法律を停止する権限を持たせるという法律です。

こうした政府の不穏な動きの数々から、戦前の治安維持法の暗黒時代から第二次世界大戦に突き進んでいったことを想起した人は少なくないはずです。

【関連】2020年「預金封鎖」への道~国民に牙をむく政府・日銀の秘められた計画

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