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夫の収入「知らない」が37.9%。夫婦間の“所得隠し”は老後破産・熟年離婚の元凶になる=川畑明美

家計のご相談にいらっしゃる方の傾向を見ていると、夫婦仲が悪いご家庭ほど、老後破産のリスクを感じています。パートナーに秘密を持つことにデメリットがあるのは、事実です!松井証券が実施したインターネット調査「夫婦の家計管理事情に関する調査」の結果から、どうすれば夫婦で協力しながらお金を増やせるのかを考察します。(『教育貧困にならないために』川畑明美)

プロフィール:川畑明美(かわばた あけみ)
ファイナンシャルプランナー。2人の子どもと夫婦の4人暮らし。子育てをしながらフルタイムで働く傍ら、投資信託の積立投資で2,000万円の資産を構築。2013年にファイナンシャルプランナー資格を取得。雑誌を中心に執筆活動を行う一方、積立投資の選び方と積立設定までをマンツーマンで教える家計のコーチング・サービスを展開している。

収入を秘密にする夫婦は資産が少ない?

「あなたが、パートナーに隠していることを教えてください」って聞かれたら、なんて答えますか?

なんと隠し事の第1位は「お金関係」だったのです!(松井証券株式会社調べ

私はフィナンシャル・プランナーとして1,000人以上の方の家計相談を受けた経験から、夫婦間でお金関係を公開していないご家庭は、資産が少ない傾向にあると肌で感じています。

夫婦仲が悪いご家庭は、残念ですが、資産がほとんどないのです。

家族間の「所得隠し」であわや離婚へ

例えば、こんな事がありました。家計管理方法を教えるため収入と支出を調べていただいたところ、あわや離婚の危機になってしまったことがあるのです。

共働きのAさんは、夫の収入も知らされず、渡された生活費と自分の収入で家計をヤリクリしてきたそうです。夫の収入については聞いても教えてくれないので、課税証明書を取り寄せたのだそうです(ちなみに私は、そこまでして調べてくださいとは言っていません)。

そして、ついに夫の年収を知ることになるのですが、いただいていた生活費の3倍の年収だったそうです。「私は自分の収入をほとんど家計に入れていたのに!夫は自分のことに使っていたなんて、許せない」と言い、恨み・辛みを私は1時間以上も聞くことになりました。

適正な生活費を家計に入れないということは「経済的DV」を受けていることですから、気持ちはわかります。そうして私に恨み・辛みを吐き出した後は、前向きに、ご夫婦で話し合って良い方向に導けました。

ことわざでも「金の切れ目が縁の切れ目」というように、夫婦間で収入・貯蓄額を秘密にするのは、デメリットしかありません。

「熟年離婚」予備軍にも……

また、ご相談中にこのような話をされることもあります。

「本当に資産がなくて困っています。しかも定年後、夫がずっと家にいるなんて、本当にゾッとします。本当は、一緒に住みたくもないんですけどね……」

60歳を過ぎて定年を迎えたところで、あるのは妻の退職金だけ。ご主人は、自営業で退職金もあ
りません。夫婦仲が良ければ、こんなギリギリになって慌てることは、ありません。

残念ですが、ご相談にいらしてこのような状態では、打てる手も少ないのです。

老後も、定年後の再雇用やアルバイトするなどで長く働くことになります。もちろん働くことは、社会貢献でもありますが、生活苦のために働くのでは、第2の人生を楽しむことは、できません。

私たちは、お金を使って生活しています。つまりお金を何に使うのかは、価値観によって違います。

Next: 自分が稼いだお金は、自分の使いたいように使うのか? それとも愛する――



お金の使い方は人生そのもの

自分が稼いだお金は、自分の使いたいように使うのか? それとも愛する家族のために使うのか? 

お金も大事ですが、家庭内の人間関係が辛いのは、お金がないことよりも苦しいことです。お金の使い方は、あなたの人生そのものです。お金の使い方を間違えるということは、あなたの人生が間違っているのと同義語です。

ただ前述のインターネット調査で安心できたのは、隠し事がないと回答された方は、67.4%だったのです!

「あなたが、パートナーに隠していることを教えてください。」と尋ねたところ、隠し事がない(67.4%)以外では、1位 お金関係(20 .9%)、2位 恋愛関係(9.5%)、3位 趣味関係(7.5%)、次いで、仕事関係(3.6%)、病気関係(1.8%)、親戚関係(1.3%)、その他(0.3%)、と回答。

出典:<若年夫婦・熟年夫婦の実態を発表>夫婦間の隠し事1位は「お金関係」。半数以上が貯蓄額を正確にパートナーに伝えておらず、若年夫婦のサバ読み額は50万円! – 松井証券株式会社のプレスリリース(2020年6月30日)

半数以上のご夫婦に隠し事がないのにホッとしました。

資産は「見える化」しないと増えない

家計も会社の経営と同じです。家族みんなが家計にかかわっているご家庭ほど、お金が貯まって
いきます。

資産形成を考える時にすべきことは、自分自身の現実の生活や価値観に基づいて「お金の出入り」を解剖してみることです。これは事業やイベントなどの計画書を立てることと似ています。計画を立てて、イメージを描いていたものを形に落とし込むわけです。

具体的に言えば、年間の収支を作って現状を知り、資産表を作成することで、今ある資産の状態がわかり、ライフイベント表を作って、今後に必要となる資金を洗い出します。

これは、夫婦間でやらないと意味がありません。夫婦2人で収入や貯蓄額を開示するということは、資産を「見える化」しているということなんです。

私はこの見える化するまで、投資はしない方が良いと教えています。

「見える化」すると、生活費などの「使うお金」と、教育費、住宅・車などの購入資金の「貯めるお金」が見えてきます。

そこが見えた後、余裕資金が「増やすお金」として投資できるのです。

もちろん、教育費や住宅費も時間をかけられるのでしたら、リスクの少ない投資を取り入れても良いでしょう。

このお金の「見える化」ができていないと、投資に使って良い金額がわからず、いつまで経っても資産運用ができず、前述の相談者のように、60歳を過ぎて定年を迎えたところで、お金がないまま老後を迎えることになってしまいます。

お金持ちは必ず資産表を作っている

ちなみに、お金持ちで資産表を作っていない人はいません。資産運用するには、資産表を見てどの資金をどこに投資するのを決めているのです。

お金持ちは、勤労所得も高いのですが、資産運用をすることで、不労所得も受け取っているのです。ますます、お金持ちになっていく道筋ができているのです。

また夫婦だけでなく、家族みんなが家計にかかわっているという意識を持つことが、貯められる家庭になるための重要なポイントになります。

特にライフイベント表は、子ども達の進路によっても変わってきます。家族でよく話し合いをしている人ほど、お金が貯められるのです。

そこで、お金の家族会議を開くことをおすすめします。子どもも含めた全員で家計の現状を把握し、お金の使い方を話し合いましょう。

少なくても1年に1回、できれば毎月でも、家族会議を開くと良いですね。

Next: とは言っても、ずっとお金の事を話し合わない夫婦が、いきなりお金の話を――



どうやって収入・所得を打ち明ける?

とは言っても、ずっとお金の事を話し合わない夫婦が、いきなりお金の話をはじめるのは、少し抵抗があると思います。

私のおススメは、家族旅行の行先を計画する話から入ることです。我が家では、10年先の旅行まで計画していますよ!家族旅行の話でしたら、家族会議を開きやすいです。子どもも、積極的に参加してくれるでしょう。

お金が自然に貯まる家庭になるには、まず「特別費」を決めることです。家族旅行は、とっておきの楽しみである特別費です。特別費がわかれば、その他の節約すべきお金も見えてきます。

そして、旅行に行くには資金を確保する必要があります。

まずは、あなた自身の年間の収支を作ってみてください。そこから捻出できる資金を検討します。そして、資産表も作り、10年分の旅行先と予算を調べてライフイベント表に書き出します。

自分の収入だけでは近場の旅行しかできないとわかれば、相手の収支も自然の流れで聞くことができます。楽しい旅行のためなら、お金を出しても良いと考えるでしょう。

そして旅行の資金計画ができたら、逆算して老後も旅行を楽しむための貯蓄額まで話を進めましょう。その時のポイントは、何のために貯蓄するのか明確にして、毎月の貯金宣言をすることです。

宣言することが成功のコツです。ゴールから考えると、夢が実現しやすくなります。

目標達成のための「予算」を「ゴールから逆算」して決めるため、スケジュールおよびそのために行うべき行動が明確になります。

「ゴールから逆算」して行動予定を自分で決定することは、人に言われてから動くのではなく、目標達成のために、自らの意志で行動することになるのです。

それは、人に言われた通りに行動する「他者の支配を受け入れる生き方」から「自らの意志で生きる主体的な生き方」への脱却でもあるのです!

ここまで到達できれば、いままでお金の話を内緒にしていたのは、なんて残念な行動だったのか、理解してもらえるでしょう。

家計を1つにして行なうべき資産管理方法

お金の話がオープンになったら、夫婦でお金の管理方法を考えましょう。

家計管理は、およそ次の3つのパターンが多いと思います。

1. 共有口座に夫婦それぞれの収入額に応じて負担金額を決める「金額分担派」
2. 項目別の支出を担当する「支出分担派」
3. 夫婦のどちらかが管理して、管理しない方は小遣い制度の「小遣い派」

前述の松井証券の「夫婦の家計管理事情に関する調査」では、妻が家計を管理している家庭が一番多く、45%でした。

専業主婦のご家庭でしたら、小遣い派が多いのは、わかりますが、この小遣い派は、あまりお勧めできません。

まず、管理している妻に負担がかかること。また、管理している妻の支出は、生活費の中に入ってしまうので、膨らみやすいのです。ママ友との豪華ランチ会で散財しているケースなどもあります。

Next: そして妻が管理している家庭で心配なのは「税金」の存在です。税金は、個人――



妻ひとりがお金を管理するのはNG?

そして妻が管理している家庭で心配なのは「税金」の存在です。税金は、個人にかかるものですから、お金の管理は、それぞれがする方が良いのです。

特に家計に投資を取り入れれば、税金のことも考えないといけません。また、夫婦であっても、パートナー名義の口座で投資をするのは、違法行為です。ご夫婦それぞれ、自分の口座で投資をする必要があります。

なので、お金の管理方法として適しているのは、前述した(1)の金額分担派か、(2)の支出分担派が良いでしょう。ただし支出分担派は、不公平になる場合もありますので、定期的に話し合いした方が良いですね。

1. 共有口座に夫婦それぞれの収入額に応じて負担金額を決める「金額分担派」
2. 項目別の支出を担当する「支出分担派」
3. 夫婦のどちらかが管理して、管理しない方は小遣い制度の「小遣い派」

「金額分担派」もお金は貯まりづらい

また金額分担派の注意点です。毎月一定額を2人共通の口座に入れ、食費や水道光熱費といった生活費のほか、2人で使うお金をそこから支出し、余ったお金は貯蓄扱いにして口座に残して貯
金するケースですね。

実は、このパターンでは、お金は貯まりません。一見良さそうなのですが「2人で使うお金の口座」というのがクセものです。2人のお金だからと責任の所在が曖昧になってしまうのです。それでは効果的な節約もできません。

さらに毎月余ったお金は貯蓄するといっても、さほど残らない傾向が高いのです。例え貯金できても、「たまには贅沢しても」なんて散財してしまいがちです。

そうではなく、金額分担派や支出分担派も、貯蓄はそれぞれがします。できれば、お給料が出たら、すぐに引き落とされる積立定期や投資信託を積立で購入していくのが正解です。

2人で使う口座は、毎月使い切る金額だけを入れておくと良いでしょう。

とにかく「オープンにする」ことがお金持ちへの最短ルート

そして、金額分担派も支出分担派も、口座の状態や収支もオープンにすることです。

我が家は、クラウドストレージを使って、資産表と家計簿を共有しています。お互いに資産がどのくらい貯まっているのか、いつでも確認できます。

資産は見える化すると、貯まっていくのが楽しく感じられますよ!

特に不動産投資などで銀行から借り入れする際は、世帯単位で家計の資産を見られますので、ご夫婦の資産を開示していないとできない投資になります。

資産家になりたいのでしたら、「お金関係」を隠していては、ダメなんです。

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image by:November27 / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年7月22日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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