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平山 Research Memo(6):インソーシング・派遣事業は医療機器、食品向けを中心に増収。利益率も向上

■平山ホールディングスの業績動向

2. 事業セグメント別動向
(1) インソーシング・派遣事業
インソーシング・派遣事業の売上高は前期比9.4%増の18,411百万円、セグメント利益は同16.0%増の1,337百万円となった。顧客業種別売上高の動向を見ると、主力の医療機器や食品関連分野が前期比2ケタ増収と順調に拡大したほか、小売・サービス分野も都市型小型食品スーパー向けの派遣が好調で同2ケタ増収となった。一方、オフィス用品はコロナ禍の影響で、住宅設備分野は新築住宅着工件数の減少などが響いて減収となった。なお、最大顧客であるテルモ向けの売上高は前期比8.6%増の4,471百万円となり、過去最高を6期ぶりに更新している。

利益面では、大規模請負事業所における現場改善の効果が寄与したほか、FUN to FUNののれん償却額が前期比で49百万円減少したことも増益要因となった。なお、Fun to Funののれんについては一括償却を実施したため、2021年6月期以降はのれん償却負担もなくなる(2020年6月期は27百万円)。Fun to Funの売上高は前期比1割増の52億円となり、経営破綻した大口取引先を除けば業績は堅調だった。

(2) 技術者派遣事業
技術者派遣事業の売上高は前期比14.8%増の1,501百万円、セグメント利益は同244.2%増の71百万円となった。売上高は、自動車等の輸送機器分野や通信機器分野など既存顧客向けが堅調に推移したほか、2019年6月期に採用した人材も順調に配属が進み、新規取引先が拡大したことも増収要因となった(取引先数は前期比8社増の85社)。

増益要因のなかには、2019年6月期に比べて新規採用数が減少(前期56名→38名)したことによる採用費・教育費の減少も含まれている。2019年6月期はミャンマーを中心に海外から14名の新卒エンジニアを採用し、2020年6月期も20名の採用を予定していたがコロナ禍の影響で入国できなくなり、採用時期が2020年11月以降に遅れる見込みとなっている。まだエンジニア数が250名前後と少ないため、採用者数の増減が利益に影響を与える格好となっている。

(3) 海外事業
海外事業の売上高は前期比3.3%減の2,148百万円、セグメント損失は2百万円(前期は13百万円の損失)となった。売上高の9割超を占めるタイが、通貨のバーツ高などもあって工業生産が低調に推移するなか、子会社の収益改善を図るため利益率の高い顧客への絞り込みを進めた結果、売上高は減収に転じた。一方で、損益面では採算重視の営業活動を実施したことや、間接部門を集約化したことなどにより、損失額がやや縮小した。一方、ベトナム子会社については、コンサルティング事業及び教育事業を中心に展開し、日本の取引先企業向けに技術者の採用業務に注力した。

なお、タイやベトナムの子会社の決算期は3月で、コロナ禍の影響が最も大きかった4月-6月の業績については、2021年6月期の第1四半期に反映されることになる。

(4) その他事業
その他事業の売上高は前期比91.9%増の908百万円、セグメント利益は同58.2%減の15百万円となった。現場改善コンサルティング事業及び海外からの研修ツアーについては、2020年年明けまで好調を維持していたが、2月から6月にかけてはコロナ禍の影響が大きく、研修ツアーなどは中止となり減益要因となった。

こうしたなか売上高が増加したのは、2018年11月に子会社化した平和鉄工所の業績がフルで寄与し、約2億円の増収要因となったほか、2019年6月に子会社化した大松サービシーズの売上高が1.4億円加わったこと、IoTソリューションやSaaSといったITサービスの売上が前期比3倍増の120百万円と拡大したことが要因だ。

平和鉄工所については、売上高で303百万円、営業利益で35百万円と増収増益となった。同社は製缶、機械加工、組立て、修理までを一気通貫で対応できることを強みとしており、複雑・特殊な産業機械製作において高い技術力を有している。主要取引先は、三菱重工業や住友重機プロセス機器(株)、荏原製作所(荏原)、JR九州エンジニアリング(株)など大手企業が並び、コロナ禍において設備保全などの需要が増加した。また、精密な軸受け加工や溶接技術が求められる分野では、匠の技術を持つと言われる人材が必要だが、こうした人材は継承者が育たず、年々枯渇している状況にある。こうした状況を踏まえて、同社ではこうした高度技術者の育成に取り組み、育てた人材を大企業に請負・派遣する事業も新たに開始している。派遣単価は通常の製造業派遣の2倍と高く、今後の収益源に成長する可能性がある。

大松サービシーズは主に自動車整備事業を主力に行っており、介護サービスも一部行っている。需要は堅調に推移し、損益面でも若干の黒字となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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