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北の達人 Research Memo(1):次の成長フェーズに向けた転換期、中長期成長をにらんだ組織体制の立て直しに注力

■要約

北の達人コーポレーションは、インターネットにて一般消費者向けに健康食品や化粧品を販売するeコマース事業を展開している。オリジナルブランド「北の快適工房」のサイトにて、便秘やアトピー、ニキビなど、体の悩みのサポートに特化した商品の開発及び販売を主力とし、特にオリゴ糖を原料とする「カイテキオリゴ」が長期にわたって同社の業績を支えてきた。また、足元では大ヒットとなっている「ディープパッチシリーズ」が大きく伸びており、従来の「健康食品」中心から「基礎化粧品」の構成比が高まってきたことに伴って、アンチエイジングを意識する男性の中高年層など会員属性の幅も広がってきた。一方、集客部門における体制整備が不十分だったことなどに伴って新規獲得件数は減少傾向にあり、次の成長フェーズに向けて組織体制の立て直しに取り組んでいる。

2021年2月期上期の業績は、売上高が前年同期比9.2%減の4,592百万円、営業利益が同25.9%減の1,030百万円と減収減益となった。一方、期初予想に対しては、売上高が上回ったものの、利益面では下回る結果となっている。売上高は、引き続き「ディープパッチシリーズ」(現在4商品)が順調に伸びており、商品別構成においても存在感を増している※1。ただ、売上高全体が減収となったのは、新規獲得件数の減少により既存商品が総じて伸び悩んでいることが理由である。もっとも、その点は想定の範囲内であり、むしろ積極的な広告宣伝費の投入により、新規獲得件数及び売上高ともに期初予想を上回ることができた。一方、利益面についても、減収による収益の下押しにより大幅な営業減益となり、営業利益率も22.4%(前年同期は27.5%)に低下した。また、利益面で期初予想を下回ったのは、新規獲得を目的として広告宣伝費を増やしたことなどにより、一時的にROAS(広告投資効率)※2が悪化したことが理由であるが、足元では回復している。

※1 なお、マイクロニードル化粧品市場において売上世界No.1であるとしてギネス世界記録(TM)の認定を受けている。
※2 Return On Advertising Spendの略で、広告出稿に対してどれだけの売上があったかの成果を計る広告投資効率の指標。なお、ROASが一時的に悪化したのは、1)単価の小さい商品の獲得が好調であったこと、2)上限CPOの設定に一部ミスがあったことの2つの要因があったようだ。もっとも、1)については、継続購入により通年ではカバーすることが可能である。また、2)についても、既に対応済みであり、それに伴って足元のROASは回復している。

2021年2月期の業績予想について同社は、期初予想を据え置き、売上高を前期比18.5%減の8,227百万円、営業利益を同31.2%減の2,006百万円と、将来を見据えた取り組み等により減収減益を見込んでいる。過去最高業績を更新した前期(2020年2月期)と同様、「ディープパッチシリーズ」の伸びやその他主力商品の継続利用が期待できるものの、次の成長フェーズへ向かうための「組織体制立て直しの1年」と位置付け、業績面では一旦後退する見通しである。すなわち、前期から明らかになってきた課題の解決に向けて「クリエイティブ部門の強化」及び「商品開発部門の強化」に注力する方針である。

同社はこれまで、競合の少ないニッチなマーケットにおいて1商品10億円~20億円の商品を複数展開することで利益率の高いビジネスを行い、合計100億円の事業規模を目指してきた。その結果として、前期(2020年2月期)の売上高は100億円を突破し、営業利益率も高い水準を維持することができた。加えて、高い利益率のまま、50 億円程度の商品を運用するノウハウが身についてきたことから、今後は、市場の大きなマスマーケットにおいて1商品50億円~100億円規模を複数展開し、将来的には売上高1,000億円、営業利益300億円を目指す戦略を描いている。具体的には、「ディープパッチシリーズ」のような新たな市場の創出に加え、オールインワンゲルやシャンプーなど市場の大きなカテゴリーをイメージしているようだ。一方、海外展開についても、台湾事業の拡大を始め、更なる拡充を視野に入れており、水平展開を行いやすいインターネット販売に特化して推進する方針である。弊社でも、同社の強みを維持しつつ、マスマーケット商品の拡大や海外への展開を実現していければ、長期目線で売上高1,000億円も十分に視界に入ってくる可能性があり、同社はそのポテンシャルを有していると評価している。また、規模の経済を生かし、同社主導型の大型M&Aも取り得る戦略であり、規模拡大ペースが速まる可能性もある。いかに同社らしさを失わずに進化を図っていくのか、そこが経営手腕の見せどころと言えるだろう。

■Key Points
・2021年2月期上期は新規獲得件数の減少により減収減益。一方、期初予想に対しては広告宣伝費の積極投入により売上高は上回るも、利益面では下回る結果となっている
・2021年2月期の業績予想について同社は、期初予想を据え置き、通期でも減収減益を見込む。「組織体制立て直しの1年」と位置付け、「クリエイティブ部門の強化」や「商品開発部門の強化」に注力する方針
・市場の大きなマスマーケットにおいて、1商品50億円~100億円規模を複数展開し、将来的には売上高1,000億円、営業利益300億円の企業を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

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