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【中国退治】米軍艦の南シナ海作戦、各国の反応は?

アメリカが中国を牽制するために実行した米艦「南シナ海派遣」作戦に、世界各国はどのような態度を表明したのでしょうか? 国際関係アナリストの北野幸伯さんがご自身のメルマガで、積極的に米国支持をした国が少ないことを指摘しています。

アメリカ「航行の自由」作戦、各国の反応は?

全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!

北野です。

前回も少し触れましたが、

<南沙>米中の緊張高まる 衝突回避策が焦点…米軍艦派遣 毎日新聞 10月27日(火)12時34分配信

 

【ワシントン和田浩明】中国が主権を主張する南シナ海・南沙(英語名スプラトリー)諸島の人工島から12カイリ(約22キロ)以内の海域に米海軍がイージス駆逐艦を進入させたことで、南シナ海全域の軍事的緊張が一気に高まった。

 

米国は中国の対抗措置を見越して作戦行動に踏み切ったとみられるが、軍艦船の偶発的な接触など双方が予期しない形での危機に突入する可能性がある。

 

オバマ米大統領は9月下旬の米中首脳会談で、習近平・中国国家主席に直接、南シナ海の軍事拠点化を中止するよう要求したが、習氏は「主権の範囲内」と拒否していた。今回の「航行の自由」作戦はいわば米国による「実力行使」であり、当然、現場海域に展開する中国海軍の対抗措置を予想したものだ。

半年前予想したとおり米中の対立は、どんどんヒートアップしています。

今日は、アメリカ「航行の自由」作戦に対する各国の反応をみてみましょう。

日本は、控えめながらも「支持」

まずは、安倍総理の反応

<米艦南沙派遣>安倍首相 米国と連携の姿勢で静観の構え 毎日新聞 10月27日(火)21時58分配信

 

南シナ海・南沙諸島での米中両国の対立について、安倍晋三首相は27日午後(日本時間同日午後)、訪問先のカザフスタンで記者団に「開かれた自由で平和な海を守るため、米国をはじめ国際社会と連携していく」と強調し、米国と連携する姿勢を打ち出した。

 

ただ、政府内では「米中ともに武力行使は望んでいない」との見方が支配的で、当面は静観を保つ構えだ。

 

首相は今回の米軍の行動について「一つ一つにコメントは控えたい」としつつも「国際法にのっとった行動であると理解している」と指摘。

 

中国による岩礁埋め立てに関して「現状を変更し、緊張を高める一方的な行動は国際社会の共通の懸念だ」と強調した。

 まあ、情勢がはっきりわからなかったでしょうから、こんなコメントが無難ですね。

アメリカを支持し、中国の埋め立て批判する。

これから下を見るとわかりますが、アメリカの「航行の自由」作戦。

国際社会からメチャクチャ支持されているわけでもありません。

ですから、アメリカとしては、日本の支持がうれしかったことでしょう。

韓国は、立場を明確にせず

毎日新聞10月27日から。

【ソウル大貫智子】韓国外務省報道官は27日、米軍による「航行の自由」作戦実施について「事実関係を確認中」と述べるにとどめた。

 

メディアや識者からは踏み込んだ立場表明をすべきだとの指摘が出ているが、韓国政府は北朝鮮問題などでの協力が必要として中国を刺激したくないのが本音で、「十分に立場は表明している」と反論している。

米中二股外交」を展開している韓国。

二人の夫(米中)がケンカしているので、どっちについたらいいのか困ってしまう。

日本にとっては、いい「反面教師」ですね。

日本も、数年前「日米中 正三角形論」が流行ったときは、大変でした。

欧州は、興味なし

【ロンドン矢野純一、ベルリン中西啓介】ドイツやフランスなど欧州諸国は27日夕までに、目立った反応を見せていない。独仏両国については、メルケル独首相が29日、オランド仏大統領が11月2日から、それぞれ訪中を予定していることが背景にあるとみられる。

 

中国の習近平国家主席を迎えたばかりの英国も、事情は変わらない。

(同上)

欧州は、南シナ海から「遠い」ので、関心がないのですね。

それより、「中国と仲良くして、【金儲け】したい」。

今の時代でも、やはり「距離」は重要です。

たとえば、日本人。

正直いえば、「ウクライナ問題」に関心ないでしょう?

遠いですから。

しかし、「近い」東欧の人たちにとっては大問題です。

私の大学時代の友達(ポーランド人)は、「ロシア軍がいつ攻めてくるか、怖くて夜眠れない」といってました。

ちなみに、ロシアでも「南沙米中対立問題」は、ほとんど報道されていません

「シリア空爆で、ロシア軍が大活躍している」

というニュースがメインです。

心配な台湾の変化

【台北・鈴木玲子】南沙諸島最大の太平島と東沙諸島を実効支配する台湾では、国防部(国防省)幹部が27日、記者会見で「米国の巡航は通常活動。(台湾)軍は南シナ海の海空域での活動を掌握できている」などと述べるにとどめ、米国と中国の双方に配慮を示した。

 

台湾にとって米国は安全保障を含め事実上最大の後ろ盾。

 

一方で馬政権は2008年の発足後、対中融和路線で中台関係改善を進めてきただけに、中国への刺激も避けたいところで、慎重に情勢を見極めている模様だ。

(同上)

世界一の親日・台湾。

しかし、最近は中国の影響が強まっているのですね。

米中に挟まれた台湾。

反応が、韓国に似ています。

フィリピンは、全面的に支持

 【バンコク岩佐淳士、ジャカルタ平野光芳】フィリピンのアキノ大統領は27日、記者会見で「(米中の)力の均衡を歓迎する」と発言し、作戦支持を鮮明にした。

(同上)

安倍総理以上に、はっきりとアメリカ支持を表明しました。

なぜでしょうか?

米軍艦が周辺を航行したミスチーフ礁はフィリピンの実効支配下にあったが、中国が1995年に建造物を構築して占拠。

 

中国はその後、埋め立て工事をして拠点化を進めている。

 中国が人工島を勝手につくっているところは、もともとフィリピン支配下にあった。

それを、中国が武力を背景に奪ったので、フィリピンは怒っているのですね。

中国が南沙などで支配を拡大したのは、92年に米軍がフィリピンから完全撤退した後だ。

 

フィリピンは、米軍が再び存在感を強めることで中国による覇権拡大が止まることを期待している。

(同上)

これ、日本にとっては、大きな教訓です。

日本では今、「米軍を追い出せばすべてうまくいくようになる!」

「フィリピンモデルで行こう!」」

などと主張する人たちがいます。

フィリピンが米軍を追い出したら、速攻中国軍がやってきてミスチーフ礁とられてしまった

こういう事実を無視して、「米軍を追い出せばすべてうまくいく!」と主張するのは、どうなんでしょうか?

オーストラリアは、アメリカ支持

オーストラリアのペイン国防相も「国際法に基づき自由に航行する権利を支持する」との声明を発表した。

(同上)

首相がかわって心配だったオーストラリア。

しかし、アメリカ支持を明言しています。

フィリピン以外の東南アジア諸国は、アメリカを支持せず

しかし、大半の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国にとって、最大の貿易国である中国との対立は避けたいのが本音だ。

 

中国から多額の経済援助を受けるカンボジアやラオスは「親中派」とされる。

 

タイも昨年のクーデター後、軍事政権に理解を示す中国と親密だ。

 

カンボジアの外交官は「我々はASEANと中国の対話による平和的解決を望んでいる」と語り、米国の介入に否定的な反応を示した。

中国との領有権問題を抱えるベトナムは、フィリピンとの間で両国関係を「戦略的パートナー」に格上げすることで合意し、「対中国シフト」を鮮明化させている。

 

一方でフン・クアン・タイン国防相が「米中両国とも我が国には重要だ」と話すなど、米国支持を明確にもしていない。

 

27日夜現在、今回の作戦にも公式のコメントは出していない。

(同上)

ベトナムも、「中立」なのですね。

まとめ

以上、「航行の自由」作戦に対する各国の反応を見てきました。

まとめると、

アメリカを支持 = 日本、オーストラリア、フィリピン

中立 = 韓国、台湾、(フィリピン以外の)東南アジア諸国

無関心 = 欧州諸国、ロシア

こう見ると、アメリカ支持は、日本、オーストラリア、フィリピンだけ。

なんともさびしいかぎりです。

しかし、アメリカが「中国打倒」を決意したのは、「AIIB事件」があった今年3月。

まだ半年しか経っていません。

それに、「航行の自由」作戦は、大戦略の「一環」です。

中国のような巨大な敵を倒すには、「トータルな戦略」が求められます。

これからも、

情報戦 - 人権問題、サイバーテロ問題などで、中国を「悪魔化」する

情報経済戦 - 中国経済崩壊論を拡散する

経済戦 - 経済制裁の発動、人民元レート自由化圧力

民主化運動支援 - 香港、台湾、チベット、新疆ウイグルなどの反中共勢力を支援する

などなどを通して、徐々に中国を追いつめていくことでしょう。

中国の真の姿は、孫子の教えを守って如才なく野心を隠し、アメリカのアキレス腱を射抜く最善の方法を探しつづける極めて聡明な敵だ。

 

我々は早急に強い行動を取らなければならない。

(ウールジー元CIA長官)

いずれにしても、世界は「米中覇権争奪戦」を軸に回りはじめました。

日本も、そろそろ70年の「平和ボケ」から目覚める時期がきています。

 

※この記事は『ロシア政治経済ジャーナル』2015/10/29号より抜粋しています。

 image by: Wikipedia

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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