深まるテロ首謀者の謎…新聞各紙による「事件分析」を徹底比較

 

肥大化する容疑者像~神出鬼没

【朝日】は1面で、パリ近郊で起こった捜索と銃撃戦についての記事。2面の解説記事「時時刻刻」では、首謀者とされこの日の捜索対象だったと思われるアブデルアミド・アバウドという容疑者の人物像に迫っている。他に関連記事は、9面にフランス観光業への打撃についての経済記事、13面にフランス、イギリス、アメリカ、ロシア各国の対IS共闘の機運についての国際面の記事、38面には銃撃戦のあったサンドニ周辺住民の恐怖についての社会面の記事。

1面記事。今回の捜索は、13日の事件の際に発見された実行犯のものらしき携帯電話からサンドニの拠点が分かり、その場所に対して行われたものだった可能性を示唆。ビジネス街に対する新たなテロ計画も分かり、アバウド容疑者が潜伏している可能性が高いと見て踏み込んだこと等を記す。アバウド容疑者がそこにいたか否かは不明という。

2面はそのアバウド容疑者についてのプロフィール。いくつかのテロ未遂、シリアへの渡航、戦闘員勧誘などでマークされてきた人物だが、厳戒下で潜伏を続け、ISの機関誌でのインタビューでは、「警官は手配写真と私を見比べたが、私だと気付かなかった」(ベルギーでの警察署を狙ったテロ未遂事件の際)と発言。「十字軍の情報収集能力は恐れるに足りない」と豪語している。またYouTubeに公開された映像には、遺体を乗せたトラックの運転席で「運んでいるのは背教者」と笑顔で語るアバウド容疑者の姿も。

uttiiの眼

首謀者と目される人物が、こんな「有名人」だったというのは驚きだ。中東とヨーロッパを自由に移動しても一向に捕まらない理由を《朝日》は「イラクのフセイン政権が養成した秘密工作員の潜伏技術が、元イラク軍人を通じてISに伝授されて」いるという話を、フランス治安機関の元職員の言として紹介している。もっと基礎的な条件として、ベルギーはブリュッセルのモランベーク地区のような「聖域」が存在しているという条件もあるのだろうが、それにしても、そんなことで逮捕を免れることができるのかと疑問に思う。

print
いま読まれてます

  • 深まるテロ首謀者の謎…新聞各紙による「事件分析」を徹底比較
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け