深まるテロ首謀者の謎…新聞各紙による「事件分析」を徹底比較

 

身構えるフランス

【東京】は1面の中央に「テロ主犯潜伏先 制圧」の見出しで比較的短い記事を置き、関連は3面の解説記事「核心」と9面国際面、29社会面のそれぞれ。

1面は基本的な情報だが、自爆死した女性はアバウド容疑者のいとこの可能性があると報じられているという。

3面の解説記事「核心」は、見出しが「指令待つ潜伏戦闘員」。「欧州をはじめ世界各地に過激派組織『イスラム国』(IS)の潜在的な戦闘員がいる」とする。テロ実行の機会を待つ「スリーピングセル(休眠細胞)」と呼ばれるもので、難民に紛れ込んだり偽造パスポートを利用したりして欧州に潜伏しているという。なお、アバウド容疑者については「大物戦闘員」と表現。

9面の国際面は、「仏テロ対策 改憲視野」の記事の他にも、「なぜフランスが狙われる?」に答えるQ&A、ISがロシア機墜落事故で使用した爆弾の写真を公開した件も。

uttiiの眼

9面の記事は、フランスのオランド政権が、「2重国籍の剥奪」「入国拒否」「モスク閉鎖」などの措置によって、テロに身構えようとしていることに対する警鐘になっている。非常事態を3ヵ月延長する法律はまもなく提案され、可決される見込みだというが、非常事態下では令状なしでの家宅捜索や報道規制、紹介の禁止などを命じることができる。さらにオランド大統領は国家に権限を集中させるため、憲法の一部改正も目指すという。911後のアメリカを模倣するかのようだ。

Q&Aでは、フランスの「世俗主義」に触れている。公共の場でヘジャブを付けることを禁止しているのがまさしく世俗主義の表れだが、シャルリー・エブドがムハンマドを描くことを「表現の自由」として認めるなら、ヘジャブ着用を1つの表現としてなぜ認めないのだろうかというシンプルな疑問に突き当たる。世俗主義は政治や公共の世界に宗教を持ち込まない考え方だろうが、世俗主義自体が1つの宗教、「国教」と化してはいないのだろうか。そんな疑問も浮かんでくる。

image by: Hadrian / Shutterstock.com

 

uttiiの電子版ウォッチ』2015/11/19号より一部抜粋

著者/内田誠(ジャーナリスト)
朝日、読売、毎日、東京の各紙朝刊(電子版)を比較し、一面を中心に隠されたラインを読み解きます。月曜日から金曜日までは可能な限り早く、土曜日は夜までにその週のまとめをお届け。これさえ読んでおけば「偏向報道」に惑わされずに済みます。
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