深まるテロ首謀者の謎…新聞各紙による「事件分析」を徹底比較

 

テロ支援国への変貌

【読売】も1面トップで、サンドニでの銃撃戦の記事。さらにその下に「仏露、シリア空爆連携」の見出しで、両国の軍事行動の調整が行われることなど、3面は解説記事「スキャナー」で、ロシアの思惑を中心とした国際「政局」記事、6面はベルギーのイスラム系移民集住地区モレンベーク(ブリュッセル)のルポ、7面は国際面の連載「パリ襲撃」(中)、39面はサンドニ銃撃戦についての住民目線のドキュメント。

1面記事のなかで、《読売》は、首謀者と見られるアバウド容疑者について、「『イスラム国』の幹部」と表記する。また、フランスとロシアの空爆連携を伝える記事の中では、イギリスがシリア空爆に参加する意向であること、さらに、前日、ロシア軍は潜水艦から初めて「イスラム国」の拠点に向けて巡航ミサイルを撃ち込んだと、昨日の《東京》のみが載せた情報の後追いも果たしている。

7面記事では、「イスラム国」が軍事的な苦境に立たされ、武器・弾薬、戦闘員の補充も困難になる中でテロを起こし、影響力を再び拡大させる狙いがあるとする。そして原油代金などで2,500億円の資金を得ている、小規模な国家並みの財政力を使い、「わずか2週間ほどで、世界有数のテロ支援国家になった」との興味深い分析を紹介する。

uttiiの眼

《読売》の記事が描き出す全体像の中には、興味深いものがある。事件後のシリアにおける軍事行動という点で、ロシアの「熱心さ」は突出しており、そのことを強調する文脈で、「潜水艦からの巡航ミサイル発射」は後追いする価値のある情報だったのだろう。また7面記事で紹介されている、「イスラム国」の「変貌」はやがてその正体に迫る可能性を秘めた情報だと思われる。少なくとも、こうしたテロ行為の根源の1つは、「イスラム国」が原油を換金することを可能にしているシステムであり、あるいは資金を提供し続けているアラブ富裕層の存在…そのあたりまでは簡単にたどり着けそうではないか。まだ、その先があるのだろうが。

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